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ファンタジー短編

転生したら悪役令嬢だったけど、原作知らないんだけど、私の知識古くない、まぁいいっか

作者: 鴨ロース
掲載日:2025/11/14

頭を空っぽにしてお楽しみ頂ければ幸いです。

11/15 日間ローファンタジー27位ありがとうございます。

目の前で、糸に垂れ下がった5円玉が左右に大きくゆれている。


「貴方はだんだん眠ーくなーる」

バリトンボイスが響き、心地良く眠りに落ちた。

目が覚めたらそこは、中世ヨーロッパのような世界。


そこは、ゲーム「悪役令嬢と聖女の200日戦争」の世界観らしいのだが、私には世代が違うからタイトルすら分からない。


(ふむふむ、聖女の出現で王太子と聖女の婚約が成立。留学先から帰国した公爵令嬢(私)は、仲睦まじい2人の姿を見て闇落ち…。陰謀、策謀、混沌の200日間戦争が始まる、ね)


要するに、私は今から悪役令嬢ナタ・デ・ココを演じるらしい。


原作知識なんて微塵もないが、私なりの悪役令嬢を演じればいいのよね?


悪役ってことは、悪戯やちょっかいをかければいいんでしょ。お茶の子さいさい、おまかせあれ!


学生生活なんて何十年ぶりかしら。二度目の青春、エンジョイしなきゃ損よね!


◇◇◇

【侯爵邸 自室】

まずは姿の確認、と鏡を覗き込んで私は驚いた。

縦巻きロールの金髪碧眼!

陽光をそのまま溶かし込んで撚り合わせたかのような黄金の髪。その豊かな髪は、肩口から見事な螺旋を幾重にも描きながら、背中へと流れている。歩くたびに華麗に揺れる縦巻きは、高い身分を雄弁に物語っていた。


鏡に映る自分の姿に、私は感動した。

(この毛量と侍女のヘアセットスキル…! これなら憧れだったド派手な「名古屋巻き」もいけるかも!)


ワクワクが止まらないのであった。


◇◇◇

【花瓶大作戦】

学園編入2日目。聖女ティラミスは公務で欠席。まだ顔すら見ていない。


なら、まずはベタなあれからいきますか。

多忙で遅刻がちな主不在の聖女の机に、ラナンキュラスが活けられた花瓶を置く。

(ラナンキュラスは、昔の職場の退職祝いの花束に入ってたし、お似合いのチョイスだわ。まずはジャブよ)


次の日。久しぶりに1限目から登校したティラミスとやらを初めて見た。


濡羽色の黒髪。肩にかかる程度で切りそろえられ、頬のあたりからふわりと外側に流れている。…聖子ちゃんカットじゃないの。


朝から聖女らしさ全開の彼女は、机の花瓶に気づいた。

「あら、可憐な花だわ。誰からの贈り物かしら?」

首を傾げ、満面の笑みでこう呟いた。


「どなたか知りませんが、素敵なお花ありがとうございます。今日も1日頑張れます!」


◇◇◇

【手鏡光線大作戦】

…なんであの子、ニコニコしてるんだろう?

気を取り直して次の作戦よ。

(ちなみに、私の盛り盛りヘアで「黒板が見えない」とクレームが入り、席は窓側の最後方になった。どんまい、私)


好都合よ。窓側の席を良いことに、日差しを手鏡に反射させてチカチカさせてやる!


その時、ティラミスは日頃の疲れで寝落ちしそうだった。

(…ん? 眩しい!)

ハッと我に返ったティラミス。光はナタ・デ・ココの席から反射していた。

(ナタ・デ・ココ様が、居眠りを誰にも悟らせずに起こしてくださったんだわ…!)

ティラミスは、ナタ・デ・ココに更なる感謝を捧げた。


◇◇◇

【画鋲で激痛大作戦】

次は上履きに画鋲よ!

「お嬢様、画鋲とは何でございましょう?」

侍女に持ってこさせようとしたが、この世界には「ピン」しかないらしい。


「ピンの頭に笠を被せると抜き差ししやすいでしょ、それが画鋲よ!…ないなら仕方ないわ、木片を円錐に削りましょう。『肥後守ひごのかみ』持ってきて!…って知らないか。小刀かナイフで良いわよ」

しばし木片を削ることに集中。できた! 待っていなさい、ティラミス!


翌日のダンス授業後。小さな円錐の木片を聖女の靴に仕込むことに成功。


履き替えたティラミスは、流石に苦痛に顔を歪めた。…やった!

だが、彼女は聖女活動と学業を両立する「ど根性娘」だった。


「くっ…! この痛み…! でも、なんだか血行が良くなるような…?」

ティラミスは、ふと東洋の健康法『足つぼ』を思い出す。

「これは、血行不良と老廃物の蓄積が痛みを生じさせているのかも…。適度な刺激で健康促進…! まさかナタ・デ・ココ様は、私の疲れを癒すためにこれを…!?」

「(え、そっちにいくの!?)」


明後日の方向に話が飛躍したティラミスの勘違いにより、後日、悪役令嬢原案・聖女監修の地獄の競技「足つぼ100メートル走」が、体育祭の名物になろうとは…。


◇◇◇

【植木鉢落下大作戦】

こうなったらサスペンスの定番よ!

「あら、パンジーの元気がありませんわね。お水をあげて、お日様に当てましょう。とりあえず、ここに…」


3階の窓から、ティラミスの聖子ちゃんカットが見えてきた。

(後もう少し…って、首が辛すぎる! 盛り盛りの髪が重くて邪魔で、狙いを定めるどころじゃない!)

「もういいわ、南無三!」


手を滑らせた(というテイで落とした)。もう下を見る気力もない。

その刹那、校庭から「ギャーー!」という野太い悲鳴が響き渡った。


なんと、植木鉢は聖女誘拐を目論んでいた不審者の頭頂部に見事直撃。懐から計画書が発見され、即逮捕。

「殿下! ナタ・デ・ココ様は、私が不審者に尾行されているのに気づき、一計を案じてくださったのですね!」

またしても、ティラミスは目を輝かせて感謝していた。


◇◇◇

【印度の狂虎大作戦】

なぜ、成すことすべて裏目に出て好感度が上がるのよ!

なら大博打よ!

「私は虎だ!私は虎だ!」

強く自己暗示をかけ、気分はすっかり印度の狂虎。

私は邸宅から訓練用のサーベル(刃引き)を持ち出し、二人のデート現場に馬車で向かった。


ティラミスと王太子プリン・ドゥ・トーギが、ブティック前でキャッキャウフフしている!

「見つけたわ!」

馬車から飛び降り、サーベルを咥え、ブティック前で襲撃すべく走り出した!


…が、一歩手前で、マッチョな王太子が立ち塞がった。

「ナタ・デ・ココ嬢、あんがとさんよ。だが、茶番はここまでだ。お陰で警備体制の穴に気がつけたぜ。今から緊急会議だ、城に戻るぞ!」

「殿下、ナタ・デ・ココ様は突飛に見えても、必ず私の為を思って…」

(…話が通じない!)


◇◇◇

【プリン・ドゥ・トーギは見た!】

ある土砂降りの日。

「ちょっと、馬車を停めなさい!」

ナタ・デ・ココは、木箱で震える数匹の子犬を見つけた。

「あなたたち、私は飼えないけど、この傘を差し上げるわ。雨風を凌ぎ、良いご主人様を見つけてね」

子犬に傘をさし、その場を去るナタ・デ・ココ。

その姿を、プリン・ドゥ・トーギがバッチリ見ていた。

「ナタ・デ・ココの嬢ちゃん…!あんた、いい奴だな! ただのヤバい奴じゃなくてよかったよ!」

彼はティラミスの人を見る目に感心しつつ、「お前ら、王宮ウチに来るか?」と子犬をゲットしご満悦だった。


◇◇◇

【最終決戦 お茶会㊙大作戦】

最後はこれしかない。私は最終決戦を決意した。


――たわしコロッケに、すべてをかける!


プリン・ドゥ・トーギとティラミスの二人を、私主催のお茶会に招待した。

まずは公爵令嬢の威信にかけ、最上級のおもてなしで歓談する。


そして…。

「(本当にあれを…?)」と泣きそうな侍女に、私は「たわしコロッケ」を供するよう命じた。


二人がフォークとナイフで切り分けようとすると、カリッと揚がった衣のみが剥がれ落ち…陶磁の白皿の中央に、アンマッチな卵円形の「茶色い繊維の固まり」が鎮座した。


「………冗談はよせ」

「甘いものです、殿下! ナタ・デ・ココ様が意味のないことをするはずがありません。隠された意図を読み解け、ということでは?」

ティラミスは、もはやこの行動にも裏があると確信していた。


「(鑑定スキル)…【たわし】という清掃用具みたいだな」

「まあ! これだけインパクトある紹介なら絶対忘れませんね!」

「シュロの繊維は、棒状でも丸めても使えるか…。民需に活用できるか検討させよう」

(なんでそっちに話が進むのよ!)


「ナタ・デ・ココ様、本日はありがとうございました。お茶もお菓子も、最後の『たわし』のプレゼンも素晴らしかったです。これからも私の親友として、アドバイザーとして、仲良くしてくださいませ!」

ティラミスは、最高のスマイルでカーテシーを行った。


◇◇◇

【現実への帰還】


「はっ! なんだったのよ! なぜ、断罪されないの!?」


私には、悪役令嬢は絶対無理ー!!!


意識がブラックアウトしていく。

………。


そして、気がついたら再び令和の日本だった。


「なんだ…夢か。なんだかんだ楽しい夢だったなぁ」

「ティラミスとプリン・ドゥ・トーギ、末永く仲良くね。サヨナラ!サヨナラ!」


良い子のみんなは絶対に真似しないでね。

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