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プロローグ
「人間は『文字』を使うんですって!先輩、知ってました?」
悪魔が送る。
「ああ、うん。そうらしいね」
天使が応える。人間で言うところの『無表情』で。
「他に『文字』を使う生き物っているんでしょうか」
また悪魔が送った。
「さあね。どこかにいるんじゃない」
天使はなおも『無表情』のままだ。天使のつれない対応には慣れた様子で悪魔は交信を続ける。
「自分もいつか人間になって『文字』を使ってみたいなあ。『文字』を使って何かを伝え合うのってどんな感じなんでしょうか」
悪魔は夢を膨らませながらきらきらと瞬いている。天使は「どんな感じなんだろうねー」と興味がなさそうだ。
なおも悪魔は送る。
「先輩は退職したら何になりたいですか?」
「別に。なんでもいい」
「そうですか。自分は人間になりたいです」
「えー、人間なんてやだよ。寿命そこそこあるくせにいろいろ面倒くさそう。無難に植物か微生物がいいな」
「なんでもよくないじゃん」
「いや、なんでもいい」
なおもきらきらと瞬いたまま、悪魔は「そうですか」と返すと、「じゃあまた明日!」と巣へ吸い込まれていった。
天使は応えずに『無表情』のまま自分の巣へと吸い込まれていった。




