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心の星  作者: 深織
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「見えるんだよ」湊人side

「どうしてあなたはいつもわかってくれないの!」


「お前だってそうだろう、俺は仕事が忙しいんだ。それにちゃんと家事だって手伝っているだろう」


「違う!私は…」


5歳だった俺はひとつ違いの兄の颯樹と共に両親の喧嘩を隅から見ていた。


子供ながらにこの先の未来をぼんやり察していた。


「もう、離婚しましょう」


「ああ、いいだろう」


両親の離婚後、俺は母に、颯樹は父に引き取られた。


俺は母と一緒に母の地元に引っ越し、二人暮らしをしていた。


俺が小学4年生になったあたりから母の体調が悪くなった。


最初は風邪だったのにそこからだんだん悪化してついに入院。


幸いお金は足りたけど、俺は家で1人になった。


その後の検査で肺がんになっていたことがわかった。


風邪症状の頃にはもうあって手術でも全摘出は難しい状態だそうだ。


子供だった俺には何もできなくてただ1人で絶望しているだけだった。


母が風邪を引いた時にちゃんと病院に連れて行けばよかった。


入院する前に気づけばよかった。


そんな後悔が押し寄せる。


同時に孤独感に包まれた。


俺だって苦しんでもがいて、頑張っているのに、誰も見てくれない。


もう見てくれる人は、いない。


それは小学生の俺には重すぎた。


ある時、俺は久しぶりに昔住んでいた家の近くに来た。


その家には今も父と颯樹が住んでいた。


外から見るだけ見てその足で俺は近くの公園に立ち寄った。


そこは景色が良くてまだ両親が別れる前はよく颯樹と来ていたお気に入りの場所。


けれど今の俺にはもう何も感じなかった。


柵にもたれてぼんやり眺めながら思わず呟く。


「俺がいなければよかったのかな」


「なにしてるの?」


そのとき後ろから女の子の明るい声が聞こえた。


俺は答える気力がなくて無視したがその子は気にせず話しかけてくる。


「景色見てるの?ここ綺麗だよね」


気がつけばその子は俺の隣まで来ていた。


俺は驚いた。


その子は灯だった。


昔は颯樹と灯と3人でよく遊んでいた。


灯は当然成長していたけど、どこかに面影を残していた。


灯は俺の顔を覗き込んでは手を伸ばした。


その手は俺の頬を優しくなぞる。


そこで俺は自分が泣いていることに気づいた。


「ねえ、君は昼にも星は見えると思う?」


灯は俺に聞いてきた。


「…見えないんじゃない?」


俺は小さく答える。


「星はね、見えるんだよ!お母さんが昔言ってた。空を見上げて目を閉じたら心の中で照らしてくれるの。目には見えないけどずっと星は私のことを見ててくれてるの」


灯は言った通り空を見上げて目を瞑っている。


「ほら、やってみて!見えるから」


俺は灯に倣う。


すると、見えないはずの星が光った気がした。


「もし辛くなったら思い出してよ。私、お星様にお願いしておくから。助けてあげてって」


思わず俺は灯の方を向く。


すると彼女はこっちを見て優しく微笑んでいた。


「…ありがとう」




今考えれば非科学的で現実にはないことだけど、俺は灯の言葉に何度も救われた。


母が亡くなってこの街に戻ってきてからも。

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