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心の星  作者: 深織
5/9

「好き…?」

夏休みが明けて、早くも9月になった。


湊人が転校してきてからもう2ヶ月が経った。


最近、湊人の様子がおかしい、気がする。


比較的控えめで大人っぽい性格の彼が一度前に一緒に帰ってからよく誘ってくる。


それも、うまい具合に颯樹が来る日を狙って。


もちろん来ない日もだけど。


それのせいで颯樹が微妙に拗ねてしまったから、フォローが大変だ。


前より、笑顔を見る時間が多い気がするけど、同時にふと遠くを見て寂しそうな目をしている。


だが、違和感を感じているのは私だけみたいで、凛凪に聞いても、


「え、いつもと一緒じゃない?」


と言われただけだ。


(絶対違うのに…)





そして、9月中旬、八ヶ岳で宿泊の校外学習が始まった。


この後、文化祭や体育祭が続くから、クラスの親交をさらに深めるためとか。


当然、班に分かれて色々する。


私の班は私、凛凪、湊人と瀬尾碧くんっていうクラスの明るい系の男子の4人。


湊人が私と凛凪のところに入ってきてから、それにくっつくようにして碧が入ってきた。


意外と碧と湊人は仲がいいらしい。


まあ、仲がいいというより、碧が湊人に絡んでいるだけなのかもしれないけど。


そして、お決まりのカレー作り。


調理担当2人と火の担当1人と雑務1人っていう構成らしい。


「なあなあ、どれやるー?」


「じゃあ、私、調理がいい」


正直火は面倒だし、雑務ができるようなタイプじゃない。


「じゃあ、灯は調理決定ね。他の人どうする?希望なければ私も調…」


「俺調理係やる」


凛凪が話しているところに被せるようにして湊人が言った。


「え、湊人って料理できんの?」


「碧、お前失礼だな」


「えー、意外!」


私以外の2人は驚きとイジリの間みたいな会話をしている。


一方私は混乱していた。


この間から帰りを誘ってきたり、今も私が調理に決まってから立候補した。


他にも、私にだけ扱いが違うようなことを感じる時がある。


そうすると、どうしても考えしまう。


(湊人は私が好き…?)


そんなうちに、話は進んでいた。


「灯、聞いてる?」


「え、なんだっけ?」


「もう、ちゃんと聞いててよ〜。俺が火で、凛凪ちゃんが雑務で湊人と灯ちゃんが調理になった」


「あ、わかった、了解」


そう言いつつも私は横目で湊人を見た。


すると湊人がこっちを見ていて、バッチリ目が合う。


湊人は薄く微笑んで大事そうに私を見ていた。


思わず逸らしてしまった。


(そんな目で見てたら、誤解するよ?)




そんなこんなで、調理スタート。


基本的に調理って言っても私達の役目はもっぱら野菜を切るだけだから、大したことはない。


たまに料理をするから私は手際良く切っていった。


横では湊人も同様に慣れた様子で進めていた。


「料理、よくするの?」


作業しながら聞く。


「まあ、…ちょっと前まではよく」


少し言い淀んだのが気になったが、それ以降は黙々と切る作業を進めた。


「あー終わったー」


「だな、あとは碧、よろしく」


「そうこなくっちゃ」


全て食材を切り終えた私たちは碧にバトンタッチして、暇になった。


「あっちの方、行ってみる?」


そう言って湊人が指差したのはここから5分くらいのところにあるちょっとした広場。


ここより少し高いところにあるから眺めがいいらしい。


私は戸惑ったが、断る理由もないので、行くことにした。


少し歩くと広場が見えてきた。


「きれい…」


柵に寄りかかって景色を眺める。


普段の都心にはないのどかな感じが私を穏やかにした。


すると隣に湊人も並んできたが特に話すわけでもなく、無言でしばらく眺めていた。


「ねえ、ほのかは昼の間も星は見れると思う?」


気づけば景色ではなく空を眺めていた湊人が私に聞いた。


「昼に星?見られないんじゃない?」


「そっか…」


湊人は私の答えを聞いて、残念そうな顔をしていた。


「どうしてそんなこと?」


「いや、なんでもない」


そのとき。


私のスマホが電話の着信を知らせた。


画面を見ると「さつき」の文字。


「さつき…?どうしたんだろ」


私が電話に出ようとすると、その手を掴まれた。


湊人に。


私は掴まれた手の温度が高くなっていくのを感じた。


「出ないで」


「え…?」


「出てほしくない」


「あ、うん」


私は訳がわからなくなって、とりあえず頷いた。


いつのまにか着信は切れていた。




そのあと、カレーは無事作り終えて、そうこうしている間に消灯時間が近づいた。


私は凛凪と2人部屋で、当然、消灯時間になってもすぐ寝るつもりはない。


もちろん、凛凪もそのようで、持ってきた袋菓子を皿に出しているところだった。


突然、凛凪が振り返る。


「そいえばさ!今日瀬尾くんがカレー煮てる間、灯と湊人くんでどっか消えてたよね??何、デート?」


凛凪はニヤニヤしてこっちを見ていた。


「別にデートじゃないけど、広場の方いってた」


「2人で?」


「うん」


「えーやば」


ここで凛凪に聞いてみるのもひとつの手かもしれない。


「でさ、そのことで、凛凪に聞きたいことあるんだけどさ」


「なになに〜」


「その時にね、さつきから電話がかかってきて、出ようとしたんだけど、そしたら…。湊人くんに『出てほしくない』って止められた」


「え、湊人くんに?」


「うん。それってどういう意味だと思う?」


「…それ!絶対灯のこと好きだよ!うん、絶対」


「やっぱり、そう思う?」


「うん!しかし、湊人くんも意外と積極的だなぁ。やるじゃん」


「はぁ」


「で、灯は湊人くんのこと好きなの?」


「わかんない。けど、気がつくと目線の先にいる、気がする」


「それさ、灯も好きなんじゃない?」


「私も…好き?」


顔に熱が集まってくるのを感じる。


案の定、凛凪には


「顔赤いっ!」


とからかわれた。




校外学習の残りの日の記憶はほぼない。


私が湊人のことを好きかもしれないと思ったら、意識してしまったが、湊人は変わらず色々誘ってくる。


そのせいで緊張とドキドキの連続でろくに活動できなかった。


でも、そのおかげで、私は自分の気持ちをはっきり自覚した。

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