「よろしくね」
高校生になってから3ヶ月が経った。
だいぶ高校生活にも慣れてきたようで雰囲気がだんだん緩んで来ている。
今朝も学校に来たはいいが、なんのやる気も出なくて、私はホームルームも上の空で聞いていた。
「…じゃあ、今日はもう一つ。うちのクラスに転校生が来た。仲良くしてやれ」
扉をガラガラ引く音に反応して、目線がそっちの動く。
現れた人に私は驚いた。
その人は公園で話しかけてきた、綺麗な人だった。
「初めまして、宵野湊人です。よろしくお願いします」
前に立ち挨拶する彼をまじまじと見つめる。
その時、彼と目が合った。
少し驚いた顔をしたあと、微笑んだ。
(み、なと…)
私は声には出さずに口の中でつぶやいた。
似合う名前だと思った。
「宵野の席は窓側の1番後ろだ、仲良くしてやれよ」
湊人が私の隣を通る。
私は俯いて湊人が横を過ぎるのを待った。
しかし我慢できなくて少し顔を上げるとちょうど目の前に湊人がいた。
「よろしくね」
柔らかく微笑んで小声で湊人が呟く。
「…よろしく」
私はその後もぼんやりしながら授業を受け、昼休みになった。
教室の後ろの方で騒がしい声が聞こえる。
「ねえねえ、宵野くん、私麻帆!麻帆って呼んで!」
「あー、ずるい!私は雪乃!よろしくねー」
麻帆と雪乃はいわゆる肉食系というのか、イケメン好き。
早速湊人に近づこうとしている。
私はなんとなくそっちを眺める。
「ねえ、部活何やってたの?」
「中学のときはバスケやってた」
「えー、すごい、うまそう!!」
「…あーありがとう」
湊人は少し居心地が悪そうだ。
その後も好きな食べ物から何から2人は質問していた。
その時、助けを求めるように視線を動かした湊人と視線が交わった。
咄嗟に目を逸らした。
湊人が微笑んで立ち上がる。
麻帆と雪乃なんてお構いなしに。
2人の視線が痛い。
「ねえ、名前は?」
「…風間灯」
目を逸らしたまま答える。
「よろしくね、ほのか」
突然の呼び捨てに私は思わず湊人の方を向いた。
「俺のことは湊人でいいから」
驚いたまま、コクンと頷いた。
「…みなと、くん」
湊人が満足したように笑った。
「ほのか?どうしたの?」
「えっ」
無意識のうちに見入ってしまっていたらしい。
湊人の笑顔に惹かれる自分に気づいた。




