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57 引越し

 王都に戻り、数か月。

 ようやくオクタヴィアの新離宮が完成し、開宮の儀が執り行われた。


 離宮は赤茶のレンガを基調に、差し色の青が随所に光る、落ち着きのある美しい建物だった。華の離宮の荘厳さに慣れていたアウレリウスは、どこか温かみを感じさせる新離宮の雰囲気に小さく驚きを覚える。


 庭園で開かれた立食のパーティーには王族や重臣が集い、エドワードがぼそりと言った。

「姉上って……愛が重たいタイプだったんだな」

エドワードがじっとアウレリウスの鳶色、赤みのある濃い茶色の瞳を覗き込んできたので、アウレリウスはうっかり咳き込み、視線を逸らした。


 そして久しぶりに再会したコンスタンティン王は、静かに「よく戻った」とだけ言った。

──が、その言葉の奥に「オクタヴィアを泣かせたら殺す」という無言の威圧が含まれているように感じられ、アウレリウスは思わず背筋を伸ばす。


◇◇◇


 開宮の儀が終わると、いよいよアウレリウスも新離宮に移り住むことになった。

 エドワードは従来通り緑の離宮を住まいとし、両親であるリリエンタール伯爵夫妻もそのまま残る。母は今後もエドワードのしつけ係として離宮に留まるのである。


 新離宮の使用人選びは戦争のせいで少し遅れていたが、オクタヴィアが自らすべてを決めると言って譲らない。アウレリウスにできるのは、自分の荷物をまとめることだけだ。


◇◇◇


 入宮の日。馬車に揺られながら、新しい住まいへ向かうアウレリウス。

 馬車の窓から離宮の門が見え、既に数名の使用人が並んで待機しているのが目に入った。


 その顔ぶれを見て、アウレリウスは息を呑む。


 クラウス。マルタ。オットー。


 侯国での日々を共にした、あの三人がいた。


「……嘘だろ!? 侯国から……移住してきたのか!?」


 クラウスは一礼し、マルタは満面の笑みを浮かべ、オットーはなぜか歌いながら手を振っている。


 アウレリウスの胸に、戦争を乗り越えて再び集った仲間たちへの感情が溢れた。

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