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53 戦場の余韻

 戦場の塵煙がまだ立ちこめるなか、侯国の臨時作戦本部には王国・侯国連合軍の主だった者たちが集まっていた。


 エドワードは深い椅子に座り、アウレリウスとギルベルト、ジークフリート、エミール、そしてバルタザール事務次官らが立ち並ぶ。ヨハン率いる白き契約の会の代表も席に着き、その表情は険しい。


「帝国軍は退却しましたが……これは終わりではありません」

 バルタザールの低い声が、重苦しい空気をさらに沈ませる。


 ヨハンが立ち上がり、深いローブの袖を払った。

「我々の調査と、この者たち(帝国兵捕虜)からの証言が一致しております。ヴァルハラ帝国は以前からこの侯国を足がかりにし、王国に戦を仕掛ける計画を練っていました」


 エドワードの眉がぴくりと動く。


「侯国を掌握し、友好条約を形骸化させたのち、王国への侵攻。そして……王国が誇る魔術遺産を奪うことが、帝国の最大の目的だったと見られます」


 会議室に重苦しいざわめきが走った。


◇◇◇


 そのころ、帝国の一室。


「くそっ……! くそっ! くそぉぉぉおおお!」

 黒いマントが激しく揺れ、最高級の机には拳で叩きつけられた亀裂が走る。

 総督の怒声に、壁際の従者たちはただ震えていた。


 それを白けた表情で見ていたのは、イザベラをはじめとする間者たちだ。


「というわけで、帝国軍は退却。侯国・王国連合軍が完全勝利。我々は完全敗北」

 イザベラは肩をすくめる。


「はいはい。ここまで大掛かりにやって無理なら、これ以上は徒労だわ」


「おのれ……王国のゴミどもがっ!」


「聞いてないわね。撤収よ」


 彼女たちは驚くほど潔く、総督に背を向けた。

 叫び続ける声を背に、間者たちの姿はすでに影のように掻き消えていた。


◇◇◇


 作戦本部。


 ヨハンは地図の上に手をかざし、いくつかの地点を指で示した。

「帝国は国境沿いに兵站を構築しており、侯国を奪えなかった今、別の手段に出るでしょう。攪乱、破壊工作、あるいは魔術を絡めた暗躍……」


 エドワードは低く息を吐いた。

「つまり、この勝利で気を緩める暇はない、ということですね」


 アウレリウスもまた、険しいまなざしで黙って頷いた。

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