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38 戦時下

ヴァレンシュタイン王国 王宮 玉座の間


「ウルバヌスを呼べ」


 コンスタンティンの低い声が玉座の間に響いた直後、執務官たちが一斉に動いた。

 騎士団員が駆け出し、通信塔が一斉に点灯する。王国が誇る“影”の長、トーマス・ウルバヌス猊下への緊急招集である。


 ほどなくして、黒衣の一団が玉座の間へと入ってきた。

 先頭の男――白髪に金の瞳、深紅の法衣に身を包んだウルバヌス猊下は、他の誰とも似ていない威圧感を放っていた。


 彼は玉座に一礼し、コンスタンティンの視線をまっすぐ受け止める。


「……王女殿下が、拉致されました」


 執務官が状況を報告すると、ウルバヌスはわずかに目を細めた。


「知っていたのか」

「我々もつい先ほど」

「侯国だけではなく、我が王国にも揺さぶりをかけようとしている可能性が高い」


 コンスタンティンが低く言う。

「ウルバヌス。お前の手を貸せ」


 ウルバヌスは玉座の間の中央に歩み出ると、ゆっくりと手を広げた。


「承知した。……これまでは水面下でいくつか芽を摘んできたが、もはや隠密の段階ではない。ここからは影を大々的に展開しよう」

「侯国・王国・辺境の三方面に網を広げ、帝国の意図を掴む。城下の警戒を厳重にし、密偵どもを一匹残らず炙り出せ。各地の通信塔に命ずる、戦時体制に切り替えろ」


 彼の声は冷たく澄み渡り、玉座の間の空気を一変させた。

 コンスタンティンは満足げに頷き、低く言い放つ。


「帝国に告げろ。我が王国に牙を剥いた代償を払わせてやる、と」


 ウルバヌスが再び一礼し、影のようにその場を去った瞬間から、王都全体が戦時の色に染まっていくのが誰の目にも明らかだった。

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