表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/58

29 夕食会

旧ローゼンタール邸・大食堂


 侯国らしく陽気な音楽が流れ、テーブルにはリューネブルク侯国の豊かな海と大地の恵みが並んでいた。ワインの香りが漂い、ロウソクの灯りが優雅に揺れる。


 場を引っ張るのは、やはり社交慣れしたクレメンス。


「殿下は、侯国の料理はいかがです?」

「えぇ、とても気に入りましたわ。王国とは香辛料の使い方が違うのね。……エド、少しは外交の勉強になっているかしら?」

「え、あ、はい……姉上」


 毒舌まじりの軽口にエドワードは笑い、アウレリウスはといえば、相変わらず少しタジタジしている。ワインを口にしても、余裕を装いきれない顔が赤い。


◇◇◇


 夕食会が終わり、夜も更けた。エドワード、アウレリウス、クレメンスのいつもの三人は、サロンに移ってワインを傾ける。暖炉の火が静かに揺れていた。


 エドワードがぽつりと口を開いた。


「アウルはさ……姉上のこと、政略上の婚約者としか見ていないのかと思っていたけど。今日のあれは……ちゃんと慕っていたんだね」


「し……慕って……!?」

アウレリウスが真っ赤になってむせる。


 クレメンスは涼しい顔でグラスを回しながら言った。

「あの詩的な口説き文句には、私でさえときめいてしまいましたよ」


「え!? いや、え!?」


 エドワードもクスクス笑いながら続ける。

「よくあんな言葉出てきたよね。最初から準備していたわけじゃないんだろ?」


 アウレリウスは耳まで赤くして視線を逸らした。

「……初めは、『お会いできて光栄です』だけ言うつもりだったんだ。……でも跪いて、手を取ったら……なんか口から勝手に出てて」


 エドワードは思わずワインを吹き出しそうになった。

「とっさにあんなの出るの……?」


 フランツが壁際でワインを飲みながら、ぽやんとした口調で言った。

「学のある人って……こわいですぅ」


 クレメンスは唇に指を当てて「しっ」と制し、アウレリウスは頭を抱えてワインをあおった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ