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27 火種は

 法務庁の作戦室。侯国の地図の上に、赤い印が次々と置かれていった。


 ジークフリート団長が低い声で報告する。

「敵国ヴァルハラ帝国は、この港湾都市を狙っています。奴らが奪ったのはただの契約書ではない。港の物資搬入経路、守備隊の配備図……侵攻に使える情報ばかりだ」


 エミールが扇子を開きながら続ける。

「戦争の火種を撒くためですわねぇ。侯国と王国の仲を裂き、港を奪い、そのまま帝国が進軍する……おそらく、そこまで計画済みですわ」


 バルタザール事務次官の声はさらに低く重かった。

「つまり、これは小規模な破壊工作ではない。戦争の序章だ」


 作戦室の空気が、一層重く沈んだ。


◇◇◇


 そこに、走ってきた伝令が震える声で言った。


「し、失礼いたします! ヴァレンシュタイン王国王女殿下……オクタヴィア殿下が、視察のため侯国にご来訪なさるとのことです!!」


 作戦室に一瞬、沈黙が落ちた。


 エドワードは思わず立ち上がり、信じられないものを見る目で伝令を見た。

「この状況で……姉上が?」


 アウレリウスは頭を抱えた。

「無理だ……無茶だ……いや、絶対やめていただきたい……」


 エミールは口元を押さえ、肩を震わせながら小声で笑った。

「まぁ、あの殿下ですもの。きっと……何か考えがあるんでしょうねぇ」


 ジークフリートが真顔で言った。

「護衛の手配を最大限に強化しろ。姫君が帝国の矢面に立つことなど、絶対にあってはならん」


 エドワードは椅子に崩れ落ち、低く呻いた。

「……姉上、ふざけないでくれ」


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