23 竜騎兵団
旧ローゼンタール邸の広間。
エドワードとアウレリウスが席に着くと、ギルベルトに案内されて竜騎兵団のジークリート団長と副団長エミールが現れた。
二人は膝をつき、深く頭を垂れる。
ジークリートは陽光を受けて光る竜騎兵団の紋章を胸に、堂々たる姿勢で言葉を発した。
「王弟殿下。リューネブルク侯国竜騎兵団長、ジークリート・フォン・ヴァイセンベルクにございます。
このたびは、殿下に間者の接触を許したこと、我が騎士団の不覚。心よりお詫び申し上げます」
低く響く声には、誇り高き騎士らしい威厳と誠実さがあった。
エミールもまた、柔らかな物腰で言葉を継ぐ。
「今後は護衛体制を再編し、殿下の御身に二度と危険が及ばぬよう、この命にかえてもお守りいたします」
エドワードは静かに二人を見つめた。
竜騎兵団の名は王国にも響いている。初めて会う団長と副団長がここまで丁重に頭を下げる姿は、彼の胸に重みを残した。
「顔を上げてください。……あなた方の名は聞いています。信頼できる騎士団だと」
彼の声は静かだったが、言葉の端々に覚悟がにじんでいた。
「過ぎたことは責めません。ただ、この国の誇りにかけて、二度と同じことが起こらぬようお願いいたします」
ジークリートは深く一礼し、力強く答えた。
「御意。竜騎兵団の名にかけて、必ず」
その言葉に宿る決意は、広間の空気を一変させた。
しかし同時に、嵐の前の静けさのような緊張もまた、誰もが感じ取っていた。




