表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/58

16 恋の苦味

 宴のざわめきから離れ、エドワードはひとり静かにバルコニーに立っていた。

 月光は白銀のように降り注ぎ、石畳と彼の肩を冷たく照らし出している。


──イザベラ。


 彼女の名を胸の内で呼ぶと、不意にあの横顔が浮かんだ。

 整った輪郭、落ち着いた物腰、そしてわずかに微笑むときの瞳の輝き。

 思い出すだけで、なぜか心がざわめく。


 ……これは一体、なんなのだろう。


 贈り物をすれば喜ぶだろうか。

 似合う花はどんな色だろう。

 ふとした想像が胸に忍び込み、慌ててかき消そうとする。


 エドワードは拳を強く握りしめた。

 自分はヴァレンシュタイン王国の王弟だ。

 王都では兄王コンスタンティンが、自分の婚約者を選定している最中。

 軽率な感情で動けば、不誠実となり、兄の名を汚すことになる。


 だから――これはただの揺らぎにすぎない。

 胸の奥に閉じ込めておくべき感情だ。


 そう自分に言い聞かせながら、彼は夜空を見上げた。

 月は静かに輝き、風は頬を撫でて過ぎていく。

 決意と迷い、その狭間で、青年の心はひそかに揺れていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ