14 再会
数日後、エドワードとアウレリウスは再び研究所を訪れた。
陽光の差し込む資料室で、以前資料を渡してくれた女性が静かに古文書を閉じている。
「この前は失礼いたしました。……もしよろしければ、こちらもご覧になりますか?」
差し出された資料は、整った筆跡で見やすくまとめられていた。指先の動きも落ち着いていて、自然と場に調和している。
エドワードは思わず礼を述べて資料を受け取る。女性は柔らかく微笑み、静かに場を辞した。
残されたのは、かすかな余韻だけ。
その余韻が、胸の奥で波紋を広げる。――もっと話してみたい。そんな欲を抱いている自分に、エドワードは気づいてしまった。
◇◇◇
三度目の邂逅は意外に早かった。
法務庁舎の静かな廊下で、彼女が追加資料を抱えて現れたのだ。
「こんにちは。研究所から資料をお届けに参りました。お忙しいでしょうから、ここに置いておきますね」
礼儀正しく微笑む姿に、アウレリウスは「随分と熱心な方だな」と感心していた。
だが、エドワードの心臓は鼓動を抑えきれずにいた。
そして、勇気を出して口を開く。
「……お名前を、お伺いしても?」
「イザベラ、と申します」
その瞬間、彼女が浮かべた微笑みはいつもより深く、確かな印象を残した。
小さな炎が、彼の心に灯ったのだった。




