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12 研究所訪問

 法務庁から紹介状を受け取った翌朝、エドワードたちは侯国でも屈指の研究施設――アルトフェン学術研究所を訪れることになった。


 研究所は市の北端、緩やかな丘の上に建ち、白い石造りの本館を中心にいくつもの小型の実験棟が散らばっていた。遠目にも近代的で、王国の古めかしい学問所とはまったく異なる雰囲気が漂っている。


 エドワードたちは馬車で門前に到着した。門を守る警備兵が紹介状を確認すると、即座に敬礼して門を開いた。


「やはり……侯国の制度は進んでいますね。王国であれば、ここまで迅速にはいかない」

 アウレリウスが小声で感想を漏らすと、後ろで控えていたクレメンスが微笑んだ。

「この国は規模が小さいぶん、変革も早いのです。貿易で育った国ですから、外からの知識を吸収することに躊躇がありません」


 エドワードは頷きながら、広い敷地内を見渡した。侯国の建物はどれも簡素だが洗練されており、機能美を感じさせた。


◇◇◇


 玄関ホールで待っていたのは、研究所長であるグラーツ博士だった。五十代半ばの、背の高い落ち着いた人物である。


「ようこそ、アルトフェン学術研究所へ。王国よりのお客様を迎えるのは、私の光栄です」

 流暢な王国語で博士が挨拶し、エドワードたちも丁寧に一礼を返した。


「本日ご紹介するのは、主に法学・統計学・経済学の分野での最新研究です。侯国の制度改革は、これらの知見に大きく依拠していますので」


 博士は手際よく予定を説明し、館内の案内役として若い研究員を呼び寄せた。


◇◇◇


 エドワード一行には、王弟専属近衛騎士団のギルベルト団長と副団長カールが同行していた。彼らは館内の出入り口や廊下の警備と連携し、視線の届かない場所を作らぬよう、無言で配置を変えていく。


 一方で、研究員たちは物怖じすることなく、にこやかに来客を迎えた。侯国の人々特有の陽気さが、居心地の良さを作り出していた。

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