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11 法務庁舎の小さな仕事部屋

 法務庁舎三階、西側の突き当たりに、王弟エドワードと侍従アウレリウスの部屋が用意された。窓が一つと四つの机と椅子――簡素な造りだが、守りは鉄壁だった。


 廊下には王弟専属近衛騎士団が立ち並び、出入りの者を一人残らず確認する。飲食物はすべてオットーが調理し、茶器や湯に至るまでフランツが管理。法務庁舎の一角そのものが、彼らの支配下に置かれていた。


「殿下、お部屋は質素で恐れ入りますが、こちらが最も守りやすいのです」

 案内役のマティアスが深々と頭を下げる。


 アウレリウスは思わず小声で漏らした。

「……ここまでやるのか」


「当然です」

 マティアスはきっぱりと返す。

「旧ローゼンタール邸の使用人は侯国と王国双方の審査を経た者ばかり。ここにいる騎士団も最精鋭。殿下に万が一があってはなりません」


 エドワードは苦笑しながら頷いた。

「守られすぎているくらいだね」


◇◇◇


 マティアスが分厚い書類を机に置く。

「殿下方には、この商業法改正の経緯を整理していただきます。王国との比較に不可欠です」


 エドワードは流れるように要点を掴み、アウレリウスは周囲の言動を観察しながら制度の背景を探る。


「内部資料をここまで開示して……本当にいいのですか?」

 アウレリウスの問いに、マティアスは真摯に答えた。


「王国に持ち帰って役立てていただければ、それは我らにとっても利益です。開放は、制度で守られてこそ可能なのです」


 二人は顔を見合わせた。

――この国を象徴する言葉だった。

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