10 オクタヴィアの反応
王宮の華やかな回廊を抜け、オクタヴィアは自室に戻るや否や、侍女から届いたばかりの包みを受け取った。
アウレリウスからの手紙と……美しい付け襟。
封を切った瞬間、彼女の空色の瞳がきらりと光った。
「まあ……!」
繊細なレース編みの糸に散りばめられた小さな宝石、先端に揺れる一際大きな空色の宝石――鏡の前に立ったオクタヴィアはさっそく首にかけ、角度を変えながらうっとりと見つめた。
そこに予め呼びつけておいた兄王コンスタンティンがやってきた。
「お兄様! ご覧ください、この付け襟!」
オクタヴィアは胸を張って、手紙と一緒に付け襟を掲げてみせる。
コンスタンティンはちらりと一瞥し、「……良かったな」とだけ言って肩をすくめた。
妹のこの浮かれっぷりは、もはや止めるだけ無駄だと悟っている顔である。
さらに正妃殿下(コンスタンティンの妃)も呼ばれてきた。彼女は微笑を含んだ上品な声で、
「まあ……お可愛らしい。ふふ……」
と笑みをこぼし、オクタヴィアの首元を整えながら「本当に殿下にとてもお似合いですわ」と褒めそやした。
◇◇◇
その夜、オクタヴィアはさっそく執務机に向かい、情熱的な筆致で手紙を書き始めた。
――贈り物の美しさへの感謝。
――アルトフェンの空気はどうかという質問。
――次は何を贈ってくれるのかという半ば脅迫めいた期待。
書き上げた手紙を封してから、あれも書きたいこれも書きたいと次々に思いついてしまい、結局三通になってしまった。
翌朝には使者によってアルトフェンへ向けて発送され、三通の重みは、アウレリウスを心底びびらせることになるのだった。




