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異世界転生×ユニークスキル 超学校で無双する!?  作者: 月神世一


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10/23

ep 10

街道の攻防、初めての殺意と貴婦人の影

ターナ村を発って数日、グレンスの街が近づくにつれ、街道を往来する人や馬車の数も心なしか増えてきたように感じられた。ユウジ、アヤナ、サーベルの三人は、次の野営地をどこにするかなどと話しながら、比較的のんびりとした足取りで緑豊かな丘陵地帯を進んでいた。その平和な空気を切り裂いたのは、前方から微かに聞こえてきた剣戟の音と、助けを求めるような悲鳴だった。

「ん?何か騒がしいな…」サーベルが虎の耳をピクリと動かす。

「この先、カーブになってるから見通しが悪いけど…まさか!」アヤナが顔色を変え、弓を背から手に取る。

三人が急いでカーブを回り込むと、そこには凄惨な光景が広がっていた。数人の屈強な盗賊たちが、豪華な装飾の施された一台の馬車を取り囲み、数人の護衛兵士と激しく斬り結んでいる。兵士たちは善戦しているものの、多勢に無勢か、徐々に追い詰められているように見えた。馬車の窓からは、怯えたような女性の顔が一瞬見え、そして幼い子供の泣き叫ぶ声が響いてくる。

「チッ、盗賊か!面倒なのに出くわしたな!」サーベルが舌打ちする。

アヤナは言葉を発するよりも早く、背中の矢筒から矢を引き抜き、弓を番え、盗賊の一人に狙いを定めていた。有無を言わさぬ鋭さで放たれた矢は、兵士に斬りかかろうとしていた盗賊の肩を正確に射抜いた。

「ギャアアアッ!?」

不意の一撃に盗賊が怯む。

「ユウジ、アヤナ!行くぜぇぇ!」

サーベルは雄叫びを上げ、両手斧を構えて盗賊の群れに突進していく。その動きはまさに猛虎のようだ。

「くっ、新手か!囲め!」盗賊の頭目らしき男が叫ぶ。

「助太刀感謝する!一気に押し返すぞ!」絶望しかけていた護衛兵士たちも、屈強な援軍の登場に士気を取り戻し、反撃に転じる。

アヤナもまた、次々と矢を放ち、盗賊たちの動きを的確に牽制する。その矢は決して命を奪うものではないが、武器を持つ手を狙ったり、足元を射抜いたりと、確実に戦力を削いでいく。

しかし、ユウジだけはその場で立ち尽くしていた。目の前で繰り広げられるのは、モンスターとの戦いとは明らかに質の違う、生身の人間同士の殺し合いだ。血飛沫が舞い、苦悶の表情で人が倒れていく。

(ひぃ…人殺しなんて…俺、したくないよ…怖い…)

手が震え、クロスボウを構えることすらできない。地球での平和な日常が脳裏をよぎり、吐き気すら催してくる。

その時、馬車の中から甲高い子供の悲鳴が聞こえた。

「いやぁぁぁ!助けてぇぇ!」

ハッとして顔を上げると、盗賊の一人が馬車の扉をこじ開けようとしているのが見えた。アヤナとサーベルは他の盗賊と交戦中で、すぐにそちらへは向かえない。

(あの子が…!)

子供の恐怖に満ちた顔が、数日前の、トラックに轢かれそうになった猫の姿と重なった。

(震えてる暇なんか無い!俺がやらなきゃ…戦うんだよ!)

奥歯をギリッと噛み締め、ユウジは震える手でクロスボウを構えた。狙うは、馬車に手をかけている盗賊の背中。引き金を引く指が重い。だが、意を決して力を込めた。

ヒュッ!

放たれたボルトは、狙い通り盗賊の背中に深々と突き刺さった。

「ぐああぁっ!?」

盗賊は短い悲鳴を上げ、前のめりに倒れ伏す。ユウジは、自分が今、初めて人を殺めたという事実に全身が凍りつくのを感じた。だが、感傷に浸っている暇はない。次々と仲間が倒れるのを見て逆上した盗賊たちが、こちらにも殺到しようとしていた。

「うおおおおっ!」

ユウジは恐怖を振り払うように叫びながら、無我夢中でクロスボウのボルトを次々と装填し、撃ち続けた。もはや狙いを定める余裕などなく、ただただ引き金を引くことだけに集中する。その姿は、熟練の戦士とは程遠い、必死の形相だった。

ユウジの思わぬ反撃と、サーベルとアヤナの圧倒的な強さ、そして護衛兵士たちの奮闘により、盗賊たちはみるみるうちに数を減らし、やがて残った数人が蜘蛛の子を散らすように逃げ去っていった。

戦闘が終わり、辺りには血の匂いと、荒い息遣いだけが残った。ユウジはクロスボウを握りしめたまま、その場にへたり込みそうになるのを必死で堪えていた。

静寂の中、馬車の扉がゆっくりと開き、中から絹のドレスをまとった美しい貴婦人が、小さな男の子の手を引いて姿を現した。歳の頃は三十代半ばだろうか、気品のある顔立ちにはまだ恐怖の色が残っていたが、その立ち振る舞いは落ち着きを失っていない。

「まぁ…何と勇敢な方々でしょう。この度は、本当にありがとうございました。あなた方がいらっしゃらなければ、今頃どうなっていたことか…」

貴婦人――エスゼナは、深々と頭を下げた。

「い、いや、俺は…その、ほとんど震えていただけですから…」ユウジは消え入りそうな声で答えるのが精一杯だった。人を殺めたという現実が、重くのしかかってくる。

エスゼナはそんなユウジの様子をじっと見つめ、穏やかに微笑んだ。

「何と謙虚な方でいらっしゃるの。そのお姿、確かに震えていらっしゃったかもしれませんわ。でも、最後にあの凶悪な盗賊に立ち向かわれたのは、あなた様でしたでしょう?私、しっかりと見ておりましたもの」

その言葉に、ユウジは少しだけ救われたような気がした。

「是非とも、このご恩に報いたいと存じます。もしよろしければ、グレンスの街にございます私の屋敷にいらっしゃいませんこと?旅のお疲れも癒せるかと存じますわ」

「え、本当か!?そりゃ助かるぜ!ちょうど今夜の宿を探そうと思ってたところだ!」サーベルが即座に食いつく。

「サーベル!あなたって人はもう…!申し訳ありません、エスゼナ様。この者は少々…いえ、かなりがさつでして」アヤナが慌ててサーベルの頭を小突いた。

エスゼナは楽しそうにクスクスと笑い、「お気になさらないで。これほど頼もしい方々なのですもの、当然ですわ」と言った。

こうして、ユウジたちは思わぬ形で貴族の馬車を助け、その当主であるエスゼナの屋敷に招待されることになった。グレンスの街への道のりは、まだ波乱に満ちているようだったが、少なくとも今夜の宿と食事には困らないだろう。

ユウジは、まだ微かに震える自分の手を見つめながら、この異世界で生きることの厳しさと、それでも守りたいものができたことの重みを、改めて感じていた。

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