表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/31

ー4ー



「この町から逃げてリリーを守ってくれるか。」


オスカー様の言葉が、まだ頭の奥で残響している。

貴族が奴隷に娘を託すなど、本来なら考えられることじゃない。けれど――自分は頷いた。


リリー様は泣き叫んだ。「父様と母様を置いていけるはずがない」と何度も言って、必死に自分の腕を叩いた。


それでも、屋敷の上空に黒い影が現れ、外壁が崩れ落ち、ヴァルカンがその姿を現したとき――もう、選択肢なんて残されていなかった。


全速力で馬を走らせる。リリー様は自分の背にしがみつき、震えていた。


「問題ありません。大丈夫です。」そう言ってみせたが、それが嘘だということくらい、自分が一番わかっていた。怖かった。追いつかれる気がして、息をするたびに心臓が凍るようだった。


そんな中、風を切る音がした。振り返る暇もなかった。


「っぐ……!」


肩に何かが突き刺さった瞬間、世界が暗転した。

焼けた鉄を流し込まれたような熱さ。いや、違う。


痛みだ。


とてつもない激痛が、肩から胸へと広がっていく。


「ぐっ……あ……っ……!」


声が漏れた。喉の奥から絞り出されるような声。視界が霞んでいく。

手綱を握る手が震え、感覚がなくなる。


馬の背で体が揺れ、足が外れる。

視界が傾いだ。その瞬間、落ちると悟った。


「……っ!」


背中から地面に叩きつけられ、肺の中の空気が一気に抜けた。地面の冷たさと、血と土の匂い。目の前が白く明滅する。


けれど、痛みは終わらなかった。むしろ――そこからが本番だった。


毒が神経を這い回り、内側から骨を焼く。体の中に火を放たれたようだった。何もかもが熱く、痛く、動かない。


「く……そ……」


自分の声が、自分のものとは思えなかった。


「クロノッ! クロノ、お願い目を開けてッ!」


リリー様の声が聞こえる。けれど遠い。水の底から響いてくるみたいに、ぼやけていた。


……もう、だめかもしれない。守るって、誓ったばかりなのに――

そのときだった。

 

《Limits exceeded. Toxic reaction has reached dangerous levels.》


《Rapid Relief Execution.》


《Survival instinct confirmed.》


《 --Skill [毒喰らい], activate》

 

視界が崩れ落ちる。

意識が、深く沈んでいった。

読んで下さりありがとうございます。


面白かった、続きを読みたいと思ってくださった方、是非フォロー、ブックマークをお願いします。


作者の決意の火に燃料が投下されます。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ