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ー42ー

お疲れ様です。だいぶ間が空いてしまって申し訳ないです。かっこいい銭湯描写って本当に難しい( ˘•ω•˘ )



エクサンドル・ヴァンパ。

ギルドでその名を出せば、嫌でも噂が耳に入る。


元帝都審問院第二席。十年前、第一席と元老院の帝国貴族数名を殺害し逃亡。捕縛に動いた帝国騎士一中隊を壊滅させ、そのまま消息不明。


まさに化け物。


ユニークスキル《ダブル》。

自身の能力を半減した分身体を生み出す。


正直、馬鹿げてる。

バルザックと肩を並べる超越者が生み出す分身体はAランク冒険者に匹敵する。


冗談じゃねぇぞ。


それだけでも厄介だってのに、帝国審問院で厳重保管されていた悪魔の魔導具まで盗んでる。

保持者にスキルを与える魔導具・カトラリー。


「俺は正面切って戦うのに向いてないんだよ……。」


敵は三人。分身体も本体と同じスキルを扱える。

数で押し切られないためには、こっちから崩すしかない。


「ロック!」


獣人族は万物に宿る精霊様に力を借りて奇跡を行使する。

半端者の俺でも、これだけの才があったから冒険者になれた。

フードの男のナイフから蒼黒の炎が放たれる。


「ロック。」


石ころを巨大化させ、足場にして空中へと跳ね上がる。


「……クソッタレ。」


蹴りを受けた右腕が痺れる。


「カー!」


先程から命を散らしながら男達に食らいついている鴉達がいなければ、とっくに撤退している。


向かってくる男達を睨む。


「チェックだ。」


地面から岩石が突き上がり、二人の足を貫く。


残り一人。


額から流れた血を拭う。


(足止め頼むぞ……無茶すんな。)


嫌な奴の顔が脳裏をよぎる。


「誰だと思ってる。俺はウルスラ・ガーネットだぞ。」


拳を受け流し、爪を畳み込もうとするが躱される。


男の体が沈み、次の瞬間、蹴りが腹部を捉える。


「クハッ……!」


さっき倒したはずの個体。

さらに強度を落とした分身体か。


屋根から放り出された瞬間、待ち構えていたかのように炎が迫る。


間に合わない。


毛が総毛立つ。


眩い閃光。

爆ぜる衝撃。


視界が白く塗り潰される。

聞き慣れた足音。荒い息遣い。


「全く危ねぇ所だったな。抜け出すのが遅れてマジすまん。」


「ッタク……来るのが遅せぇんだよ。」


匂いで分かる。コイツだ。

なら、もう大丈夫だ。

全身から力が抜け、意識が闇に沈んだ。




ーーーーーーーーーーーーーーーーー




「バルザック・ドラバイト。直ちにこの場から退散しろ。そうすれば穏便に済ませてやろう。」


「心配するならテメェの心配だろうが。…この前、誰に痛めつけられたか忘れたか?」


「街中でお前が力を解放できないのは承知している。前回のように止める者も、今はいないだろう。」


周囲の男の数が増える。


バルザックを無視し、轟音の響く奥へ抜けようと走る分身体。


次の瞬間、上半身と下半身が、ずれ落ちた。


「通さねぇよ、馬鹿野郎。」


背中に担いでいた布包みが地面に落ちる。


布が解け、姿を現すのは不格好な巨大斧。


バルザックの体よりわずかに大きいそれは、様々な竜の部位を用いて鍛造されたとされる愛用の大斧。


無骨な大斧(レルブリェータ)』。


細い持ち手にはバンテージが巻かれ、刃の縁からは鱗のような突起が幾重にも突き出ている。


「……全く忌々しい。何度、私の邪魔をすれば気が済む。」


「そりゃあ何度でも、だ。お前が嫌だって根を上げるまでな!」


地を踏み砕き、斧を振り上げる。

ヴァンパへ叩き込む一撃。

だが、わずかに軌道がずれる。


「チッ……スキルで無理やり捻じ曲げやがるか。」


「顔くらい見せてみろや!」


バルザックは大きく息を吸い込み、斧に雷を纏わせる。


「武技《烈断ツィアライサン》!」


雷光が奔る。

だが迫る斬撃は、蒼黒炎によって正面から相殺される。


衝撃が屋根瓦を吹き飛ばし、周囲の空気を震わせる。


「……ドレークには悪いが、撤退だ。」


「逃がしてもらえると思ったのか?」


追撃に移ろうと斧を構えた瞬間。

上空から蒼黒炎が雨のように降り注ぐ。


「ッ!」


屋根へ跳び、直撃を回避。


「今のは少しやばかったな。お仲間到着ってわけか。」


「我々はここで退散させてもらおう。」


そう言って着地したワイバーンの背へ、ヴァンパが軽やかに乗る。

翼が打ち鳴らされ、風圧が吹き荒れる。


「……ハッ、キツイな。」


バルザックは吐き捨てるように呟き、斧へ再び布を巻き直して背負い上空を見上げる。






ーーーーーーーーーーーーーーーーー



拳が一つ。


肉が裂ける。


拳が二つ。


血が弾け、石畳を染める。


だが肉は再生する。

血は、魔力でいくらでも生成し直せる。


魔力が尽きない限り、自分は死なない。


だが。


ドレークの拳が叩き込まれるたび、体内の魔力が削り取られていく。


残量は、二割を切っていた。


感覚共有(センス・リンク)を切断する。


意識の奥で繋がっていた鴉たちの感覚が、一斉に途絶える。


「……本当にお前、人間かよ。」


ディーヴィ・ドレークが荒く息を吐く。

額から汗が滴り落ちる。

何度、毒槍を突き刺したと思っている。


肌に傷一つ付けられなくとも奴の体内には、確実に毒が巡っている。


吹き飛ばされた脚を再生し、蹴りを返す。


言葉はいらない。


この場に留める、ほんの僅かな時間。

それさえ稼げればいい。


リリー様が悲しむ姿はもう見たくない。


この痛みも。

この苦しみも。


その理由だけで、耐えられる。


(準備が整いました。)


上空から二段蹴り。


同時に地面から、結晶の柱を叩き上げる。


上下からの衝撃が、ドレークの体を空中へとかち上げた。


「こんな攻撃で...ッツ!」


……本当に、嫌になる。


その直感(スキル)


成形。

鋭利化。


空間を埋め尽くす数の鋭利なる毒の槍(パルチザン)


だが次の瞬間。


「【龍炎】。」


炎が、嵐のように吹き荒れた。


毒槍が、一瞬で焼き払われる。


ディーヴィ・ドレーク。


お前は、選択を誤った。


自分の強さを過信せず、この場から退くことを選んでいれば。


きっと、逃げられた。


だが。


その選択肢お前は最初から捨てていた。


だから。


こうして逃げ場を失う。


「深淵より邂逅せよ。全ての祖たる混沌たる母よ。」


「詠唱なんてさせねぇよ!!」


ドレークの拳から放たれた魔力の連撃が、幻影を撃ち抜く。


石畳が砕け、空気が爆ぜる。


「沈め。裂け。喰らい尽くせ。」


拳が、影を貫く。


「万物を呑み込む渦となれ。」


だが、そこに自分はいない。


幾重にも重ねた幻惑が、広場を埋め尽くしている。


揺らめく分身体。


歪む気配。


本物の位置は、既に誰にも分からない。


「...大ノ槍 カリブディス。」


その瞬間。


世界が、軋んだ。


地面を覆っていた水。


空気中に漂っていた水滴。


そして幻影によって隠されていた空を埋め尽くす液体。


それらすべてが、意思を持ったかのように動き出す。


渦。


瓦礫を巻き込み、石畳を引き剥がしながら、巨大な水の渦がドレークを中心に取り囲むように形成される。


「ア゛ァ゛ァ゛ァ゛!!」


ドレークの咆哮。


「武技!【羅刹】ッ!!」


爆発的に高まる魔力密度。

筋肉が膨張し、血管が浮き上がる。

身体能力の極限強化。


だが。


遅い。


この技は、すでに完成している。


瓦礫を蹴り、ドレークが空中へ跳ぶ。


拳を突き出し、そのまま渦へ突入する。


次の瞬間。

水の牢獄が閉じた。


濁流。

経皮毒を溶かし込んだ水流。

そして、その中を泳ぐ無数の魚影。


鋭い牙が肉を裂き、毒が傷口へ染み込む。


何層にも分けた水壁が、逃げ場を封じる。


もがく。


殴る。


蹴る。


魔力を爆発させる。

だが、渦は止まらない。


やがて。

ドレークの魔力反応が、途切れた。


終わりだ。


操作していた水を回収していく。


広場を埋めていた濁流が引き、石畳が露わになる。


その中央。


ひとつの肉塊が転がっていた。


「……あぁ、クソ。」


かすれた声。


「俺の半分も生きてねぇガキに……やられるとはな。」


「まだ息があるとは驚きです。」


頭が割れそうに痛む。

魔力を使い過ぎた。


「自分も限界です。ろくな介錯はできませんが。」


ドレークの瞳が、こちらを睨む。

焦点の合わない目で。


「……俺の仲間が……必ずお前を殺す。」


血を吐きながら、笑う。


「必ずだ。お前……ロクな死に方しねぇぞ。」


「そうですか。」


視線を落とす。


死に体の言葉に、興味はない。




読んで下さりありがとうございます。


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作者の決意の火に燃料が投下されます。


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