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ー40ー


ドレークは、苛立っていた。


ボルボがコリンを置いて、単身で報告に戻ってきた時からだ。


「……どいつもこいつも。」


歯噛みする。

バカ真面目が過ぎる部下と、肝心な時に楽観へ寄る馬鹿。


なぜ連れ帰らなかった。なぜ、置いてきた。


爆発音が街を揺らし、ドレークは即座に外へ飛び出した。


次の瞬間、視界を塞ぐ異様な光景に舌打ちする。


「……なんだ、これは。」


濃い。異常なまでに濃い霧が、通り一帯を完全に覆っている。

帝都ではあり得ない密度だ。自然現象のはずがない。


「しゃらくせぇッ!!」


踏み込み、拳を振り抜く。


「武技ッ《灼骨》!!」


魔力を纏った拳から炎が弾け、前方一帯を薙ぎ払う。熱風が霧を焼き、吹き飛ばすはずだった。


だが。

霧は、揺れただけで消えない。


「……チッ。魔法か。」


嫌な感触だ。単なる視界妨害じゃねぇ。

ドレークは即座に判断を切り替える。


「ボルボッ! コリンの所に案内しろ!」


「は、はい!」


ボルボが駆け出す。ドレークも迷わず後を追った。

霧の中を突っ切り、数分。


抜けた先に広がっていたのは


「……開発地区?」


立ち並ぶ元住宅街の広場。打ち捨てられた建材、組みかけの骨組み。地区再開発により、住民が立ち退いた一角だ。


「おかしい……。」


こんな場所まで走った覚えはない。ボルボも同じらしく、戸惑いを隠せていない。


やられたな。


その瞬間、中央に立つ人影が目に入った。


黒髪。黒目。年若い、細身の体躯。


「……ああ。」


ヴァンパから聞いていた通りの見た目だ。


間違いねぇ。


「この場所なら……多少暴れても問題ねぇな。」


獰猛な笑みが浮かぶ。


地面を蹴り、壁を蹴り、空中へ跳ね上がる。

一気呵成。相手に考える時間は与えない。


チンタラやってるから、反撃される隙が生まれるんだ。


「武技《空牙》。」


両手を合わせ、三角を作る。圧縮した空気と魔力を一点に収束。


狙いは、黒髪のガキ。

放たれた衝撃は、空間そのものを削り取る。

地面が抉れ、瓦礫が吹き飛び、広場中央の噴水から水柱が吹き上がった。


ドレークは屋根の上に着地し、削り取られた中心を見下ろす。


「……消えた?」


いや、違う。


真正面から完璧に、受け切りやがった。


クソッ。

喉の奥が鳴る。

このガキ。

聞いていた以上に、骨が折れる。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



結晶壁(クリスタル・ベール)


熱を帯びた結晶の膜が砕け散り、衝撃を完全に相殺する。


結晶片を尻尾のように操り、広場の中心から屋根の上のドレークを見上げる。


《鑑定》。


名前:ディーヴィ・ドレーク種族:人間職業:モンクレベル:85


■ 基本能力値


HP:14235

MP:6542

ATK:4720

DEF:9620

INT:2660

MGR:3150

AGL:4750


■ アクティブスキル


《体術》Lv5 《魔拳》Lv5《拳技》Lv5


■ パッシブスキル


《身体強化》Lv5 《硬化》Lv5《直感》Lv4 《体力増強》Lv3


■ grant skill


《奪取》


バルザック並。


真正面から戦えば、勝負にすらならない。

だからこそ、この場所を戦場に選んだ。


王都フォリングには、人が集う噴水広場が幾つも存在する。待ち合わせ、憩い、交流の場。

だが、ここは違う。


周囲の住居は老朽化により全て立ち退き済み。住民は既に、国の用意した新居へ移っている。


つまりここで、どれだけ暴れようが、壊そうが。


被害は出ない。


街中では使えなかった毒も、ここなら遠慮なくばら撒ける。


「……。」


事前に準備しておいた結晶壁を展開。


広場に通じる全ての出入り口を、分厚い結晶で塞ぐ。

同時に、噴水の水流も堰き止める。


操れる液体は、多い方がいい。


上空に待機させていた影鴉を数匹、ドレークへ向けて解き放つ。


炸裂する毒の槍(グラーシーザ)


毒の礫が四方へ弾け飛ぶ。

だが、ドレークは当然のように回避する。


「当たってくれれば、話が早いんですけどね。」


「毒だろ?」


ドレークの口元が歪む。


「話は全部、聞いてる。」


貴様を殺す手間ならいくらでも、かけてやる。



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