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町の外壁が見えた瞬間、膝が崩れ落ちそうになった。


それでも気力を振り絞り、門番に追い払われるようにして町へ足を踏み入れる。通りを駆け抜け、息を切らせながら屋敷の扉を叩いた。

 

「……私が以前、何と言ったか覚えているか、奴隷。」

 

オスカー様の書斎へ向かう途中、廊下で執事のひとりとすれ違う――その瞬間、足を払われ、床に倒れ込んだ。


「も、申し訳……ございません。今……!」


「私に近寄るなと、言ったはずだろう。奴隷風情が……同じ空間にいるだけで吐き気がする。」


体勢を立て直す間もなく、蹴りが腹部に叩き込まれる。


「そんな薄汚い格好で、屋敷をうろつくな。目障りだ。」

 

「その足をどけろ、ラルネイ。」

 

張り詰めた空気を裂くように、オスカー様の声が響いた。


「オ、オスカー様……っ。申し訳ございません。この奴隷が無礼を働きましたので……応分の処置を……」


沈黙。


オスカー様は目を伏せ、ほんの数秒、深く思案するように息を止めた。そして静かに、しかし抗えぬ決断として言い放つ。

「ラルネイ。貴様は……クビだ。」


「な、なぜです!? 奴隷が蔑まれることなど、この屋敷の誰もが承知しているはずだ! 手を出した程度で解雇とは……っ!」


「……あまり私の手を煩わせないでくれ、ラルネイ。」

 

ラルネイは息を呑み、悔しげに唇を噛み締めながらも頭を垂れる。


「……納得が、いきません……。失礼します……」


怒気と怯えの入り混じった顔で、廊下の奥へと姿を消していった。

 

「……傷が酷いな。何があった。」

 

オスカー様が手を差し伸べると、その掌に淡く青い魔力の光が宿り迷いなく、その手を自分の胸元へと当てた。

蒼光が全身に広がり、焼けるようだった首の痛みが消えていく。

ひび割れた肋骨、裂けた皮膚、重く沈むような疲労――すべてが、静かに、確かに癒えていく。


「……話せ。何があった。」

 

その一言を合図に、胸の奥で堰き止められていた記憶が、奔流となってあふれ出した。


魔物の死体の山。猛る虎の獣人。底知れぬ異様な力。そして、奴に「ヴァルカン」と名を呼びかけた、獅子の獣人――。


すべてを語り終えたとき、オスカー様は静かに目を閉じた。長い沈黙が、部屋に落ちる。


「クロノ ...一つ頼みがある。」


読んで下さりありがとうございます。


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