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沈黙が、地下の会合室に満ちている。
外界の喧騒とは切り離されたこの空間は、帝都の裏側そのものだった。
「中央の取り締まりがキツくなって、正直、肩身が狭いんだけどさ、ドレーク。」
最初に口を開いたロビンは、椅子に深く腰掛けたまま、天井を仰ぐ。
軽い調子の言葉とは裏腹に、声には苛立ちが混じっていた。
「ロビン、テメェは散々稼いだだろうが。今さら何を文句言ってやがる。」
ディーヴィは足を組み、肘を膝に乗せて前傾姿勢になる。
その目は獲物を睨む狼のように鋭い。
「はあ? それ、本気で言ってる?ドレークが一度派手にヘマをやらかしたツケが、全部こっちに回ってきてるって理解してる?」
ロビンの声が一段低くなる。
「俺が一度失敗したくらいでチマチマ言いやがって。
何度お前の尻拭いをしてきたと思ってるんだ。」
空気が張り詰める。
その間に、カルミネがくすりと笑い、軽く手を打った。
「まぁまぁ。内輪揉めはご法度よ。そこら辺でやめときなさいな。」
艶のある声が場を和らげるが、完全には緊張を解けない。
「そうそう。」
シークが眼鏡の位置を直しながら、淡々と口を挟む。
その時、今まで沈黙を保っていたヴァンパが、ゆっくりと顔を上げた。
「……ロビン、すまない。」
低く、重い声だった。
「今回の件は、私の責任だ。ドレークにも無茶を言った。」
ディーヴィは鼻で笑う。
「いいや。ヘマをやらかしたのは事実だ。」
だが、その言葉とは裏腹に、室内の空気はさらに沈んでいく。
ロビンは一瞬だけ視線を落とし、深く息を吐いた。
「……分かってるよ。だからこそ、次は同じ失敗を許容できないって話だろ。」
カルミネが再び手を叩く。
「ほら、ちゃんと話せば分かるじゃない。それで? 次はどうするの、ヴァンパ?」
全員の視線が、一斉に彼へと集まる。
ヴァンパは包帯の巻かれた頭に手を添え、静かに告げた。
「私たちの計画に、不穏分子は残せない。」
淡々とした声。
だが、その一言には、冷たい決意が宿っていた。
「カルミネ。引き続き、元老院の老害どもを丁重にもてなせ。連中には、自分たちがまだ支配者だと思わせておく必要がある。」
カルミネは妖艶に微笑み、唇を舐める。
「ええ、任せて。骨抜きにするのは得意分野だもの。」
「ドレーク。」
ヴァンパの視線が、鋭くディーヴィを射抜く。
「例の奴隷を探せ。見つけ次第、殺せ。」
「私の傷が癒え次第、計画を次段に進めよう。」
その言葉は、宣言だった。
ディーヴィの口元が、獣のように歪む。
「……了解だ。」
ロビンの瞳には、すでに計算の光が浮かんでいる。
「了ー解。ウチの子達も張り切ってるよ。」
カルミネは楽しげに肩を揺らし、笑みを深める。
「ふふ……素敵。ようやく、本番ってわけね。」
シークは小さく息を吐き、眼鏡の奥で目を細めた。
「……楽しみだねぇ。」
ヴァンパは再び黙り込み、蒼黒の炎の残滓が、かすかに彼の周囲を揺らした。
帝都は、まだ気づいていない。
自分たちの足元で、すでに崩壊の準備が整えられていることを。
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