ー17ー
投稿出来たのでセーフ。_( ˙꒳˙ )_
帝都への道がようやく開けた。
その前に、確かめておかないといけない事がある。
――マリオン領。ロストーネの町。
夜闇に紛れ、誰にも告げず、自分はひとり駆けていた。
わずかな希望が、胸の奥で燻っていた。もしかすれば、無事かもしれないと。
だが――それは、甘い願いだった。
かつて町があった場所は、まるで地図から抹消されたかのような惨状だった。
建物は根こそぎ消え、地面ごと引き裂かれていた。
その中心には、巨大な鉱石の剣山がいくつも突き刺さるようにそびえ立っている。地面から突き出したそれは、不自然なまでに鋭く、そして禍々しい。
「……っ……」
焼け焦げた空気に鼻を突かれた。人の……いや、“それ”だったものの匂いが混じっている。
瓦礫の影には、異形の影が蠢いていた。
鉱石でできた獣と近隣の魔物たち。
光を反射する硬質の身体を持ち、どれもが異様な形をしている。魔物でもない、何か“違う”存在。
そして彼らは、遊んでいた。
町の住人だったであろう骸を、踏みつけ、転がし、爪で裂き、咥えて振り回している。
まるで、それがただの玩具であるかのように。
吐き気を覚えながら、自分は《隠密》のスキルを展開した。
息を殺し、気配を霧散させ、静かに瓦礫の影をすり抜ける。
目指すは、あの二人――オスカー様と、シエラ様の姿。
けれど、いくら探しても、見つからなかった。
無惨な骸はそこかしこにあった。だが、そのどれもが二人のものではない。
それが希望なのか、あるいは最も残酷な可能性の前触れなのかは、わからなかった。
(……どちらにせよ、今は戻らなければ)
まだ気づかれてはいない。けれど、長居は危険だ。
情報を、リリー様に届けなければならない。
この惨状を、伝えなければ。
静かに踵を返し、自分はロストーネを後にした。
黒く、鋭い鉱石の山が背後に遠ざかっていくのを感じながら。
夜が明ければ、自分達はもう次の一歩を踏み出さねばならない。
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宿の窓から差し込む淡い朝光が、静かに床を照らしていた。
まだ誰も動き出さない静けさの中、自分はベッドの縁に腰掛け、瞼を閉じて息を整える。
隣では、リリー様が穏やかな寝息を立てている。
昨日の戦いと混乱を経て、ようやく得られた安らかな眠り――それが、今の自分にとって何よりも嬉しかった。
だが、心はもう次を見据えていた。
リリー様が進む道には、これからも幾多の困難が待ち受けている。
そのすべてに立ち向かうためには、自分がもっと強くならねばならない。
女神の涙を喰らったことで得た膨大な力。
それは可能性にすぎず、ただ数字として眠っているだけだ。
意味を持たせるには、使い方を選ばなければならない。
意識を集中させ、《鑑定》を起動する。
目の前に、自分のステータスが浮かび上がった。
名前:クロノ 種族:人間 職業:奴隷 レベル:15
■ 基本能力値
HP:193
MP:107
ATK:39
DEF:54
INT:46
MGR:36
AGL:37
■ アクティブスキル
《瞬歩》Lv.2
《隠密》Lv.2
《鑑定》Lv.1
《魔力感知》Lv.1
《幻影魔法》Lv.1 ←★New!
■ パッシブスキル
《毒耐性》Lv.4
《睡眠耐性》Lv.1
《麻痺耐性》Lv.1
《体術》Lv.2
■ ユニークスキル
《毒喰らい》
■ 種族スキル
《吸収・生産・放出》《魔力操作》《物体操作》《液状操作》《気体操作》
《スキップ》 ←★New!
■ point:73,000pt
一つは――敵の目を欺く《幻影魔法》。
戦闘で命を分けるのは、力ではなく“目”を奪う一瞬。
もう一つは――魔法の詠唱を端折る《スキップ》。
魔法の発動を極限まで短縮し、速さで先手を取るために。
約半分のポイントを費やして得た、たった二つの力。
だが、自分にはそれで十分だと思えた。
力は持つことが目的ではない。
リリー様を守るために、今すぐ必要なものだけを選ぶ。
その覚悟が、力を真の意味で「自分のもの」にするのだから。
窓の外で鳥が鳴く。
そろそろ、リリー様も目覚める頃だ。
その時、胸の奥で決意が静かに息づいていた。
(――必ず守る。何があっても。)
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作者の決意の火に燃料が投下されます。