母が妹
5分程度で読めるとても短いお話です。どうぞ気軽に読んでください!
物心ついたときから、私は兄と共に二人暮らしだった。経済的に困難な状況で、生計を立てる唯一の方法は盗みを働くことだった。私たちの住む家は、桁橋の下にある小さなダンボールだ。快適とは言えないが私たちにとっては唯一無二の家だった。私は小さいころの記憶がほとんどない。親の存在に関する唯一の手がかりは、私が大切にしていたペンダントだ。その背面には「ASAHI」と彫られていた。おそらく私の名前なのだろう。
ある日、いつも通りに盗みを働いていたところ店員に見つかってしまった。兄は店員に捕まってしまったのだが、私は全力で逃げ出した。どこまでも逃げた。必死に逃げた。逃げることしか考えていなかった。気がついたら、知らない街に迷い込んでいた。お腹がすいてきて、もう歩く力すら残っていなかった。夜が訪れ、街には灯りが灯り始めた。体温が徐々に下がってきた。私はペンダントをぎゅっと握りしめた。そうすると、ペンダントは割れ、中から小さな紙切れが現れた。それを見て、私は全てを思い出した。
昔、私は研究所で実験を行っていたのだ。その実験は人を若返らせるもので、私は同じ研究所の男性と結婚し、子供を身ごもったた。その子供の名前は「朝日」だった。実験も進み、ついには人体実験の段階まできた。その被験者は私自身だった。息子の名前が刻まれたペンダントを握りしめ、実験に挑んだ。しかし、その実験は失敗に終わり、研究所は爆発した。私は記憶を失い、体は2歳のものと同じになってしまった。それ以降の記憶は全くない。しかし、これだけは確かだ。私が兄だと思っていたものは実は私の息子だったのだ。
少し休息を取り、気力を取り戻した後、私はさまよいながら元の街に戻った。そして、橋の下に戻ると、兄がそこで待っていた。店員は事情を聞いて兄を逃がしたそうだ。私は兄に真実を打ち明けた。兄はそれ素直に受け入れてた。今の生活が一変するわけではないが、二人は新しい世界へと駆け出せるような気がした。
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