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骸骨の林田ガイコツ。  作者: 筋肉愛の申し子
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林田ガイコツは電車の中

あぁ、いつもの彼か。今にも出発しそうな始発電車に駆け込んで来たのは制服を身に纏う骸骨だった。この光景にも見慣れてしまったとはいえ、今日はやけに肩で息をしている様子だった。骸骨だから肺はないのでは?などという戸惑いはここ1ヶ月でとっくに消え失せてしまった。


彼がこの始発電車に乗るようになったのは大体一ヶ月くらい前のことだ。その前からもちょくちょく8時12分発のこの始発電車に乗る事はあったが、それはその時その時の状況に身を任せての事だろう。おそらく計画的にこの始発に乗るようになったのは一ヶ月程前からだ。そこまで大きな駅でもないが、二つの路線が通っており、ここを起点に乗り換える人も多い訳で、ラッシュ時だと電車内はかなりぎゅうぎゅうになる。それにうんざりしたんだろう。斯く言う私もそうだった。


今から働きに出るというのに、そんな(せわ)しない日の朝に、わざわざ満員電車などというのにお世話になりたくはない。誰かの足を踏むのも、誰かに足を踏まれるのも、もう御免だった。それに始発を利用する訳は空いてるからではない。利用者が多ければ、始発の車内であったとしても、あっという間に人で満ちる。空いているからではない。ならば、なぜ始発なのか。始発の最大の利点は座れることにある。満員電車と言っても大抵はドア付近が以上に混んでいるだけで、座ることさえできれば、あの忌々しい混雑ともおさらばできる。座ることによって、自分の絶対的なスペースを確保できるわけだ。そのために、確実に座るために、私は始発に乗る。


おそらく骸骨の彼は、ここから二駅ほど先にある高校の生徒なのだろう。この時間帯は、そこの生徒たちも多くこの電車を利用する。ギリギリまで寝ていたであろう髪型をしている子や電車内でも英単語帳に神経を注いでる子など様々だ。そんな光景が、私の淡い青春時代と重なる。

ん?

今日は少し特殊だ。顔馴染みのある高校生達は全員ジャージ姿なのだ。骸骨の彼とは違う高校だったのか?似たような制服だった気がしたが……。

なんとなく視線を彼へと向けると、彼の呼吸はさっきとはまた違った荒ぶり方をしていた。彼の目は泳いでる様にも見える。彼に目は無いが。恐らく今日は体力測定か何かが彼らの学校であるのだろう。


私は今朝、そんな骸骨な彼の青春のまさにその瞬間を目撃したのだ。



彼は何処にでもいるガイコツであり、男子高校生である。


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