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骸骨の林田ガイコツ。  作者: 筋肉愛の申し子
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林田ガイコツと朝

林田ガイコツ。

彼は何処にでもいるガイコツであり、男子高校生である。




林田ガイコツは朝7時半に起床すると、重い足取りで洗面所へと向かった。まだ体は寝たがっている。そして、蛇口を捻り、水を出した。眠たい体を他所にらバシャバシャと打つように顔を洗って強引に体を叩き起こした。水を口に含んだ。次は喉を洗う。寝ている間に取り込んでしまった悪い物を外へと追い出すようにして水を吐き出した。

そのまま、林田ガイコツはキッチンへ進んだ。そこでコップ一杯分の水をぐびっと体に流し込む。喉から胸にかけてがひんやりとした。そこから、10分かけて全身のストレッチを行う。ここまでで1つの区切りとなる。


林田ガイコツに胃はない。当然、ほかの臓器もない。けれども、ご飯は食べるし、トイレにも行く。それがどのような原理なのかは当の本人もよくわかってない。


林田ガイコツはご飯かパンかで言うとパン派である。幼少期にクロワッサンを食べて以来、パンの虜になってしまったのだ。林田ガイコツ史における転換期の1つと言えるだろう。因みに、他の転換期との関係性を時系列で表すとするならば、歩行→喋り始める→クロワッサン→第二次性徴と、こんな所だろう。今のところ、林田ガイコツの人生はこれらの転換点にそって語ることができる。


話を本筋へと戻す。

林田ガイコツはパン派である。

そのため、朝はハム4枚をトーストで挟んで食べる。たまに、イチゴジャムをつけて食べたりもする。パンが食べれさえすればそれでいい。

林田ガイコツはパンの耳が好きだ。なんなら、白い部分より好きだ。あの歯ごたえが良い。自分は今、パンを食べているんだと、食感を通じて再認識できるからだ。いや、むしろ、耳を食べるためにパンを食べているのかもしれない。



「パンの耳のどこがうまいんだよ」

なんてことを学校の誰かが言ったときには

「パンの耳のうまさも分からないなんて、まさに愚の骨頂だ」

なんてガイコツジョークを飛ばして、誇らしげな表情を浮かべたこともあった。彼に表情筋はない。


林田ガイコツは常日頃からたわいもないジョークを言っては、他人の反応などお構いなしに自分の脳内にて今さっき言い放ったジョークの採点を行っている。なかなかいいのができたな、だとか、このジョークはもう二度と放たれることはないな、だとか。ただ、基本的にどれも下らないものばかりで、周りから高評価を受けることはまずない。林田ガイコツはこのことにまるで納得いかない様子だ。



林田ガイコツの朝は小忙しい。

7時半に起きているくせに、6時に起きたかのような朝の過ごし方をしているからだ。

今日の時間割りなど気にしている場合じゃない。

制服を振り回しながら身に纏い、体のバランスを崩しながら、靴を履きつつネクタイを締める。

時刻は7時58分。

林田ガイコツは時間に追われながらも家を出る。

始発の電車に乗りたいが為に人目を憚らずにドタバタと駅へ駆けていく。

因みに今日が体育着登校日であるという事を林田ガイコツは知る由もない。




林田ガイコツは何処にでもいるガイコツであり、男子高校生である。

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