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二度目の春香と小雪の企み

どーも。ぽんずです! 

色々と忙しくさせてもらっていたため更新が遅くなり申し訳ございません(;^ω^)

これからはもう少し早いペースで更新出来たらな、と思う所存であります。

第七話、手に取っていただきありがとうございます! 

感想等あれば、気軽にコメントお願いします! 


 俺のバイト先は母親の知り合い夫婦が経営している飲食店『マトリカリア』。

 マトリカリアとは夏白菊を指し、花言葉は「鎮静」「集う喜び」といった意味がある。

 まさにここのお店にはぴったりの店名だと思う。

 昼は喫茶店のようにサラリーマンの小休憩や主婦たちの井戸端会議の場所として。夜はファミレスのように部活帰りの中高生や家族でご飯を食べに来たりと結構評判の高いお店。

 そこで俺は一年の夏から働かせてもらっている。

 お店自体は家から近く、俺が小学生低学年の時にオープンし、かれこれ十年くらい地元の常連さんに愛されている。

 従業員は店長夫婦、店長の妹さん、俺、優馬、同じ高校の後輩一人、それと大学生の先輩二人。計八人が働いている。

 平日のお昼は店長夫婦と妹さんの三人で。夜は忙しいため店長夫婦と俺たち学生の内二人が出勤し、四人でキッチンとフロアを回している。

 休日はお昼から忙しいときもあるため、

 俺のシフトは火・木曜日の十七時から閉店の二十一時までと土・日曜日の九時から十七時まで。途中一時間の休憩を挟みつつも、時給もそこそこ高いためお小遣い稼ぎには持って来い。

 今日は火曜日でお客さんの来客数が一番少ない曜日なため、二十時を過ぎたあたりから客席の空きが目立つようになり、二十時半にはお客さんはいなくなった。

 残りの三十分で閉店作業を手伝い、二十一時ぴったりに業務を終わらせ帰路についた。




 次の日。

 昨日と同じように、春香がまた起こしに来ていた。

「起きてー! 朝だよ!」

「わーった! 分かったから! 毛布を剥ぐのはやめろ!」

 四月とはいえ、まだ早朝は気温も低く肌寒い。いきなり毛布を奪われると、冷たい外気が鳥肌を奮い立たせる。

「もうちょっと寝かせてくれよな……。ふわぁ」

 昨日は帰って飯食って風呂入って、課題を終わらせていたら時計の針は一時を通り過ぎ、今日になっていた。そのため、六時半過ぎに起こされると、五時間ほどしか寝ていないため授業中に睡魔と戦う羽目になる。

 それを簡潔に伝えると、「へぇー、そうなんだ」の一言。たったそれだけ。

「自分だって授業中寝てる時くせに」と喉元まで出かかったが、言ったところで辞めるわけがないと判断し、腹の中に押し戻した。

 そして俺が何も言わなかったからなのか、調子づいて説教してきやがった。

「それに早起きは三文の徳ってよく言うじゃん」

 それで、わたし間違ってないでしょ、みたいなドヤ顔はやめろ。なんか腹立つ。

「じゃあ、どんな徳があるんだよ」

 それに反抗するように、問いかけた。

 すると、春香は右手の人差し指を頬にあて考え込んだ。

「どんなって言われても……。んー……。あっ! 朝ご飯をいっぱい食べられる!」

 考え着いた結論が飯か。流石、春香だな。天晴れするほどに食い意地が張ってるな。

 ついでにあと二つも聞いてみた。

「んー。あとは、元気になれる!」

 うんうん、やっぱりバカだな。

「もう一個は?」

 聞くことが無駄な気がしたが、とりあえず聞いた。

「あと一つは……。スキナヒトニハヤクアエルカラ……」

 俯きながら言った春香の声は俺の耳には認識出来なかった。

「悪い、小さすぎて聞こえなかった。もう一回言ってくれ」

「もういい! 先に下に行ってるからね!」

 俺の返答が気に食わなかったのか、ムスッとした表情のまま部屋から出て行った。

「なんなんだよ……」

 残された俺は訳が分からず、独り言が宙に舞った。


「いただきます!」

「いただきます」

 これまた昨日のように春香は朝ご飯を家で食べている。違うのは今日のメニューとムスッとしたままの春香だけ。

 朝ご飯という名目なのだが、今日は目玉焼きとベーコンを乗せたトースト。母さんが今日は早めの出勤なため手早く出来るメニューになっている。

 俺は目玉焼きの上に醤油を少量垂らし口に運んだ。

「うめぇ……。やっぱり目玉焼きには醤油だよなー」

「わたしにも醤油ちょーだい!」

 なんということでしょう。先ほどまでのムスッした表情も食い物を口にさえ入れてしまえばあらびっくり。いつも通りのニコニコ顔に、いつの間にか戻っているではありませんか。

 これは匠もびっくりしますねー。

 なんて一人ビフォーアフターで解説していると、春香の皿にあったトーストは綺麗さっぱり消えていた。

「由美さーん、もう一枚ちょーだーい!」

 そして、今日もまたおかわりをするのであった。


 ピンポーン。と家のチャイムが鳴り、俺たちは玄関で靴に履き替えた。

 そして、母さんが弁当箱と一緒にお見送りにきた。ただ、手に持っている弁当箱はひとつだけ。

「うむ。毎日昼飯を――」

「はいこれ、ハルちゃんの分のサンドイッチ。お昼に食べてね」

「わーい! ありがと!」

 弁当は春香に渡された。

「じゃあ由美さん、行って来るねー!」

「行ってらっしゃーい。車に気をつけるのよー」

「はーい」

 春香は弁当をバックに詰め、小雪たちの元へ向かった。

 ………。

 ………………。

 ………………………。

 えっ? 俺のじゃないの?  

 俺は恐る恐る母さんに聞いた。

「……俺の昼飯は?」

 俺の昼飯を作ってもらえない理由を必死に思考を張り巡らせた

 最近母さんを怒らせることはしていないはず……。待てよ……。あのことか? いや、でもあれは――。

「はぁ? あんた聞いてないの?」

 なに言ってんの、こいつ? みたいな顔しないで! 俺なにもしてないよー!  

「……なにを?」

 返ってきた返答は予測しえないものだった。

「今日のあんたのお昼はユキちゃんが作るって、昨日ユキちゃんから電話があったけど」

 小雪が? なんで? 

「なにそれ。知らないんですけど……」

「とりあえず、ごちゃごちゃ言ってないでさっさと学校行きなさい。ほら」

「もうなんでもいいや……」

 俺は深く考えることを放棄し、追い出される形で玄関から締め出された。



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