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春香の覚悟

第二話となります! 

自分もこういう高校時代を送りたかった……。なんて言ってても意味ないですが(笑) 

高校時代に戻ったつもりで妄想たらたらの小説を書きたいと思います(^▽^)/

面白ければ感待ってまーす!


ダイちゃんが教室を飛び出て早十分。

わたしは図書室の扉の前にいる。

特別棟三階は放課後になると人通りもなく静かな空間になっている。そして図書室も基本的にくる生徒は滅多にいない。

だから、誰かに見られる心配はない……と思う。多分……。

しかし、わたしは扉を開け入るわけではなく、扉の隙間から中の様子を覗きつつ、四つん這いで聞き耳を立てていた。

べ、別にダイちゃんのことが気になったわけじゃないんだからね! 本を借りに来ただけなんだからね! 

わたしは扉の前でツンデレ幼馴染を心の中で演じてしまった。

意外とこれ恥ずかしい……。

ツンデレきょ、巨乳幼馴染は神! ってユウちゃん言ってたし、キモくない、よね……?

って、別にツンデレなんかじゃないんだから! 幼馴染は合ってるけど……。でも、この前からブラのサイズ合わなくなってきたし……。って、なに想像してんの⁉ 変態!

一人ノリツッコみを頭を振り、払拭させた。

あーもう! ……はぁ、何してんだろ、わたし。

今度は意味不明な行動に自分自身が呆れてしまった。

そうこう考えていると、それは唐突に訪れた。


「わ、私ねあの時からずっと篠原くんのことが好きだったの!」


扉の方に顔を再度近づけ覗いた。いや、凝視と言ったほうが正しいくらい目を見開いて中を見た。その時勢いのあまり扉に頭をぶつけてしまった。

ッ⁉ 言った……。言っちゃった……。「好き」って。 ど、どうするの、かな……。 ダイちゃん……。付き合うの、かな? 

頭をぶつけた痛みなど気にならないほど不安がわたしの頭を埋め尽くした。

わたしは聞き始めた時は軽い興味本位だったけど、今は地に着いた足場が途端に崩れ急降下するような感覚を味わった。

そんな感覚になったのは初めてだった。

自慢ではないが、告白というのはわたしにも何度か経験がある。ただわたしは告白される側であって、する側ではなかった。

サッカー部のイケメン先輩、野球部のチャラ男くん、頭の良い真面目くん、その他諸々……。

だけど、わたしはそれをすべて断ってきた。

だってわたしにも――。


好きな人がいるから。


だけど、一度としてその想いをその人にぶつけたことはない。

十年以上一緒にいて、一度としてない。それは多分、同じ気持ちの彼女も……。

だからわたしはすごいと思っていた。

素直に想い人に「好き」って言える覚悟と勇気。わたしには無いものを持ち、それぞれ想いを伝えることが。

それがなにより羨ましくて……妬ましかった。

「好き」のたった二文字。それを伝えるのにどれほどの覚悟を決め、どれほどの勇気を振り絞ったのだろう。

わたしには分からない……。だって伝えた本人しか分からないから。

人それぞれ想いの大きさは違うだろう。

わたしは自分で言うのもなんだが、結構モテている。告白の数も両手の数では収まり切れないほどに。

けど、みんなそれぞれ違う告白の形だった。場所もシチュエーションもバラバラで全部が全部同じ人なんていなかった。

体育館裏に呼び出されて緊張しながらだったり、休日に何人かで遊びに言った時にその場のノリと勢いでだったり、メッセージアプリで軽い感じで言われたり。一人として同じ人はいなかった。

それは自分で考え、自分のタイミングだからだろう。

そしてまた市原さんも自分で考え、自分のタイミングで想いの丈をぶつけた。

軽い気持ちでも真剣な気持ちでも伝えることに意味があるから。

何も出来ないわたしはただ指を咥えて見ているだけ。そんな自分に嫌気が刺し、自分で自分を嫌いになりそうだ……。

ナーバスな気持ちになりつつも、現実を見る他なかった。

ダイちゃんがどんな答えを出そうとわたしがとやかく言える立場ではない。それに止めるように言っても結局決めるのはダイちゃん本人。もし仮に言ったとしてわたしの意見が通らなかったとき、わたしはどういう顔で今後ダイちゃんに接すればいいのか分からない。

結局、わたしが臆病で意気地がないだけだ……。

自分が傷つくのが怖いから今の現状で満足して、自分の気持ちを押し殺してでも今の環境を壊したくない。

変えてしまうことが何よりも怖かった。多分、彼女もそうだ。

だけど、ダイちゃんの答え次第でそれらは大きく変わってしまう。後悔はすると思うけどそれは仕方のないことだと割り切るしかない。んーん、そうしなくちゃいけない……。

だからどんなに結果になろうと、甘んじて受けいれるしかない。

だって……。

想いを告げられなかったわたしが、わたしたちが悪いのだから……。

わたしは自己嫌悪に苛まれて、それからの会話が全く頭に入ってこなかった。

だけど市原さんの予想外の言葉だけは聞こえた。


「だから、ごめんなさい。私はあなたとは付き合えません」


……ん? 付き合わないの? えっ……、なんで……。

驚きと疑問が頭の中を渦巻いた。

ダイちゃんが振られた? はずなのにわたしは喜んでしまった。

そっか……。付き合わないんだ……。よかった……。

途端に緊張感のようなものが切れ廊下の壁に、もたれるように座り込んでしまった。

何故だか自然と口角が上がったのを隠すように両手で口を覆った。

「……じゃあわたしにもチャンス、あるよね?」

そっと吐き出した心の声は静かな空間に少しだけ音を伝え消えていった。

ガラガラっ!

わたしがホッとした気を消すように、勢いよく扉が開いた。

「「あっ」」

座り込んで顔だけ上げると市原さんとばっちり目が合った。

真っ赤な顔をした市原さんはそっと会釈をし、走り去っていった。

その背中を見送り、開いたままの扉の端から頭だけ出して中を見た。

そこには本棚に腰掛け空を見ながら優しい表情をしたダイちゃんがいた。

その顔を見て急激に体温が上がり、鼓動が早くなっているが自分でも分かった。

なにあの顔⁉ カッコよすぎ! なんなの⁉ なんでこんなドキドキするの⁉ 落ち着けわたし! もう~! ダイちゃんのバカ~!

わたしも市原さんと同様に走ってその場を後にした。多分顔を真っ赤にして……。

そして階段を下りながらわたしは心に決めた。


わたしはダイちゃんが好き。だからもう逃げたりしない! 絶対負けないからね!


決意も覚悟も決まった。そう思うと自然と足取りは軽くなった。まるで背負っていた荷が無くなったように。


ちなみにそのあと遅れて部活に参加すると先生にはそこそこの注意を受け、チームメイトからは顔が赤かったことについて揶揄われた。


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