小雪とデート・序
さぼり癖のあるぽんずです。てへぺろ。
最期の更新から約二か月も経ち、私自身内容を忘れかけていました( ´∀` )
と、まあこれからもいつ更新するか分からないですが、それでも読んでくれると幸いです。
「到着っと。にしてもあちぃな」
四月の中旬だというのに気温は十七度とそれなりに高く、歩いてきたせいもあってか服の中が蒸して余計熱く感じた。
スマホで時間を確認すると十時五十一分。約束の時間の約十分前。出来る男は十分前行動は当たり前だからな。
家を出てから一番近い駅まで歩いて約十分ほど。ちょうど家と学校の間にある小さな駅。
最寄り駅は都会みたく駅のなかに商業施設やアミューズメントパークがあるような大きな建物ではなく、単に移動手段にのみ利用されている錆びれた駅だ。
平屋建てで外装も塗装がはがれつつあり、内装も駅員が常駐するカウンターと一台のみ置かれている券売機、数個の椅子が並んでいるやや広めの待合室があるだけの静かな空間。時代の流れに取り残された面構えだが、未だ現役で昔ながらの味と言えば味のような古い駅。
駅の中に入るとひんやりとした空気が汗ばんでいた肌を冷ましてくれた。待合室の方を覗くとすでにポツンと椅子に座って一人文庫本を片手に活字の世界にのめり込んでいる小雪がいた。俺以上に出来る女だった。なぜか悔しい。
「わるい、待ったか?」
そっと声を掛けると、本から視線を外した。
「いえ、私もさっき来たばかりですので」
本をバックに仕舞ったのを見て、俺も隣に腰掛けた。
小雪は太ももほどの白のノースリーブワンピースに紺のデニム、そして黒のローヒールのパンプスといったカジュアルかつシンプルで大人びた服装だ。肩からすっと伸びている白い肌はキメ細かくまさに純白といえるほどに綺麗で見とれてしまった。
いつもはブレザーで隠れている白い腕にドキッとした。
これはあれだ! 小雪がデ、デートとか言うのと相まって不覚にもちょっとだけドキッとしただけでキュンとかはしてないんだからね!
「どうかしました?」
見惚れていた言い訳を考えていた俺を不思議に思ったのか小雪が聞いてきた。
「あっ、いや白の服が似合うなと思って……」
見惚れていたのがバレたのかと思い、服の感想を口走っていた。
「ふふっ、ちなみにそれはどういうことですか?」
こちらを試すように小悪魔めいた笑みで再度聞いてきた。
「それはあれだ……綺麗で小雪に似合ってる……」
俺は小雪とは反対向きに顔を逸らし正直に感想を述べた。
それに満足したのか、俺の耳元まで顔を近づけ甘美な声で囁いた。
「デート、だからいつもより気合入れちゃいました」
声だけでも甘いのにデートいう単語をアピールして意識させるだけでなく、近づいた時にふわっとフローラルな香りが脳を蕩けさせるほどに耽美で、顔を覆ってしまいたいほど真っ赤になっているのが自分でも分かるほど熱かった。
「では行きましょうか。切符は買っておきましたので」
椅子から立ち上がり顔を覆っている俺の前に立ち、あらかじめ買っておいたであろう切符二枚をカバンから出し、一枚を俺に差し出した。
なんなの……そのスマートでカワイイ出し方。男としての自信がなくなりそうだ。
俺たちが乗る電車は十一時三分発。
都会の日曜の昼前なら駅のホームに人がごった返しているだろうが、田舎はそんなことにはまったくならない。現に辺りを見回してみると俺たちと老夫婦が一組、サラリーマンらしき中年男性が一人とほんとに閑散としている。
電車が到着するときのメロディーと駅員のアナウンスがホームに響いた。
その数十秒後に三両ほどの電車に俺たちは乗り、目的地に向かった。
ガタンゴトンと規則的に揺られること数分。俺は先ほどの羞恥を忘れるように田んぼが広がる景色を眺めていた。いわば賢者タイムなるものだと思ってくれ。
すると隣に座っている小雪に肩をポンポンと叩かれた。
「まずどこのお店から回りましょうか」
スマホに目を落としつつ、話しかけてきた。
「んんっ。そうだなー、じゃあとりあえず腹ごしらえってことで何か食えるとこ行きたいな。なんの店があるんだ?」
「ファミレスからファストフード店、それに麺類から回転ずしなどあらゆる年代に対応したお店が色々あるみたいですね」
ま、そりゃそうだろうな。大きな商業施設ともなれば小さい子供から年配者まで万人向けのお店が軒を連ねているだろう。
「小雪はその中で食べたいものはあるか?」
「そうですね……オムライスなどどうでしょう。創作オムライスのお店らしくケチャップやデミグラスソースといった定番のソースだけでなく、クリームソースや明太子マヨネーズなど種類が豊富みたいで、写真からも美味しさが伝わってきます」
「いいな。じゃあまずはそこに行くか」
その後も、小雪はスマホで館内に何があるかチェックしていて、目ぼしい店を見つけては「ここに行ってみましょう!」と子供のようにはしゃぎながら提案してきた。
あれから電車に揺られること二十分程度で目的の隣町についたのだが、やはり日曜の昼頃なため学生や子供連れの家族が駅のホームで電車を待っていた。
その人たちを通り過ぎ、改札を出た。
目的地まで駅から歩いて五分程度の場所にあるみたいだ。
俺たちは道中にあるお店や建物を見つけては、他愛もない話で目的地まで歩いた。
目的地であるショッピングモール『ドリームタウン』。
訳して夢の街。安直かつ覚えやすい名前だ。
夢の街ということなら、さしもの東京ネズミーランドが夢の国と呼ばれるのであれば、ドリームタウンはネズミーランドの支配下となるわけか。うん、ぜったい違うな。
くだらないことを考えつつ自動ドアをくぐると、俺が予想していたより人が多かった。
それはそうか。日曜日のお昼ともなれば家族連れで買い物をしたり、友達と遊びに来たりするのは当然のことだ。それに例に倣うように俺たちも来ているわけなのだから。
「意外と多いですね」
隣の小雪さんがポツリと呟いた。まさに同意見だな。
だが来て早々に尻込みしているようでは中々進まない。
「オムライスの店はどこにあるんだ?」
「一階の奥にあるみたいです」
「ん。じゃあ行くか」
一階は主に食品関係のお店が並び、レジには主婦の列がちらほらできていた。
それを横目に俺たち歩きだした。
進んで行くと、祭りの出店のようなたい焼き屋や饅頭屋などの甘い匂いがする食べ物が売られており余計に空腹感が増して、腹の音が鳴った。
それを小雪に聞かれてしまい軽く笑われてしまった。
そうこうして歩いていると、目的の店についた。
店の前にはディスプレイで数多くオムライスの食品サンプルが並んでいた。
「創作オムライス専門店『卵の皿』か。店名だけ聞くと適当につけたみたいだな」
「もう失礼ですよ。覚えやすくていいじゃないですか」
「まっ、そうだな。んじゃ入るか」
店内は満席に近いほどに埋まっていたが、ラッキーなことに一卓だけ空いていたので俺たちはそこに向かい合うように腰掛け、二つあるメニュー表の一つを小雪に差し出した。
メニュー表はやはり専門店なだけあってオムライスのみ。電車の中で聞いていたようにソースのバリエーションが多く初見では選ぶのに迷いそうだな。
その中で俺が選んだのは明太子とマヨネーズのオムライス。美味いものどうしの組み合わせにはずれなどないのだ。そう決め、メニュー表を戻した。
「決まったかー?」
「クリームソースも美味しそう……いえ、チーズも外せませんね……。あぁでも明太子とマヨネーズも食べてみたい。しかし王道のケチャップも……」
メニューに穴が開くほどにらっめこしている小雪がなんだか微笑ましかった。
「むっ、そんなに見ないで下さい」
気付いたのか、ムッとした表情で頬を軽く膨らました顔は、学校などで見せるいつもの頼りがいのある小雪とは違い、今は年相応の女の子らしさが窺えた。いつも誰かのために一生懸命になる小雪もいいのだが、こうやって周りに知られていない部分を俺や近しい人にしか見せない姿がなんだか嬉しく思える。
「いやなんでもない。で、何と何で迷ってるんだ?」
「そうですね……。このクリームソースとほうれん草のオムライスとたっぷりチーズのオムライスの二つで迷っているところです」
メニュー表をこちらに向け、さっき言っていた二つを指さした。
「じゃあ、俺がクリームソースにすっから、小雪はチーズの方を頼めよ。そんで半分ずつ分けたら両方の味が食えるだろ」
シェアを提案すると、小雪は申し訳なさそうに目線を下に落とした。それはまるで晴れていた空に徐々に近づく通り雨のごとく怪しげな雲のようだった
「しかしダイくんはそれでいいのですか? 決めていたのがあるなら――」
「いんや、俺は初めからクリームソースの方を頼むつもりだったから問題ねぇよ」
遮るように言葉を被せ、急かすように呼び出しボタンを押した。
やはり小雪は小雪だった。自分のことより相手の気持ちを慮ってしまうのは小雪らしくもあり褒められるべき長所なのだが、俺に対してぐらいは多少のわがままも言って欲しいもんだな。
まあ、そこは追々解決していくことにしよう。
「すみません。気を遣わせてしまったみたいで……」
「ん? なにがだ? 俺は食べたいもの選んだだけど」
「ふふっ、そうでしたね」
そう言ってメニュー表を戻す顔は、怪しげな雲が流れ、陽の光が差し込んだような笑みだった。
俺はそんな風に笑った顔を見ていたい。
ただそれだけの理由さえあれば、どんなことでもやってあげたい。
明太子の方はまた今度にすればいい。
それより今は小雪を楽しませてあげたい、その気持ちだけが強くなっているのを自分の中で感じた。
感想待ってまーす。




