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10、リーク先生が怒った!

「……というわけで、僕はエルシーのすべてを受け継ぎました」


 僕は淡々と話し終えた。

 あらかじめどう説明するか考えていたので、つっかえることもなかった。


「………………それを信じろというのかね?」


 学園長のネレスがしらけた様子でいう。


 まあ、それも仕方ないかも。

 逆の立場だったら、僕もにわかには信じられないと思うし。


「その娘が伝説の勇者・エルシー・リウーカで、『魔界の顎』は器を連れてくるための装置だった?」

「はい」


「きみがその転写魔法とやらでエルシーの能力のすべてを受け継いで、ここへ舞い戻ってきた?」

「そのとおりです」


「……誰が信じるのかね?」

「と、いわれましても、信じていただくしかないんですけど」


「ククッ、面白いじゃないか。だったら、おまえはエルシー・リウーカ並に強いんだろう?」


 武術担当のリークがいった。


「残念ながら、まだ完全にというわけではありません。どうしても、僕のこの身体で実際に闘いを経験して、エルシーの能力を馴染ませなきゃいけないみたいです。けど、たぶん、今のままでもかなり強いんじゃないかと思います」


「ユーリ、かなりじゃない。最強だよ」


 エルシーが訂正する。

 けど、僕にはまだ人前で躊躇なく最強という度胸はない。


「ならば証明して見せろ。俺が相手をしてやる」


 リークが立ち上がった。


「おいブラム、そう逸るな。まだろくに質問もしてないじゃないか」

「信じられないままで質問してなんになる? 俺はこいつを覚えていない。ということは弱かった上に才能もなかったということだ。そんな奴が一年あまり修業しただけで、俺と闘って勝てるようになると思うか?」


「そりゃ思わんが……」

「ケイシーの鑑定を信じたのなら、今度は俺の強さを信じろ。俺の武でこいつを鑑定してやる。ユーリとかいったな? 俺に勝てたら、おまえの話を信じてやろう。いや、信じられなくてもそれが事実として認めてやる」


 自分の強さに絶対の自信を抱いている者の言葉は、妙に説得力があるものだ。

 リークの発言に、ここにいる誰もが納得してしまった。


「ということだ。ユーリ、表へ出ろ」


 まるで今から喧嘩をおっぱじめるかのような物言いだった。


「それはいいんですけど……」

「どうした、やっぱり怖いか? 嘘を吐いているなら、今すぐ謝れば許してやるぞ」


 リークはフフンと不敵に笑う。


「いえ、その、ここにいるひとたち以外、誰も入ってこれない場所で闘った方がいいんじゃないかと……」

「なぜだ?」

「その……今、外に出たら生徒たちがいますよね?」

「だからなんだ!」

「リーク先生が負けるところを見られたら、威厳を保てないんじゃないかと……」


「なんだと!!!」


 思ったとおり、リークは激高した。

 けど、本当のことだし……。


「あ、もちろん、ギリギリの勝負だったように見えるよう上手くやりますけど、それでも生徒の前で負けちゃうのは……」


 最後までいい終える前に、


「アハハハハッ、ユーリ、やっぱりきみは最高に面白いよ!」


 エルシーが腹を抱えて笑い出した。


「え? え? 僕、そんなに面白いこといった?」

「ほら、見てごらんよ、このひとたちの顔を!」


 僕は教師たちを見た。


 リークは怒りに震えている。

 他は全員、顔が引きつっていた。

 錬丹術のガーシュインにいたっては、そっと席を離れようとしている。


 そこで僕はあっ、と声をあげた。


「あ、あのっ、別にリーク先生を挑発してるわけでもバカにしてるわけでもありません。ただ、あの、本当に心から先生のためを思って……」


「………………出ろ」

「え?」

「外へ、出ろ」


 リークは窓の外を指さしながら、静かにいった。


 完全にやる気だ。


 本当にそんなつもりなかったのに……。


 ちらっとエルシーを見た。

 まだ笑っている。


……リーク先生には悪いけど、エルシーが楽しそうなのでよしとしよう。


「わかりました。後で恨まないでくださいね」

「………………殺す!」


 リークは教師にあるまじき言葉を口にした。

 けれども、誰もそれを咎めようとはしなかった。

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