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プールサイドの人魚姫  作者: 星野 ゆか
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ある夏の

この小説はケータイ小説サイト「魔法のiらんど」で執筆していたものです。


「魔法のiらんど」でも同じ作品をお読みいただけます。





__あ。ヤバい。








下校途中、プールセットごと教室に忘れて来た事を思い出した。






あー。面倒臭‥‥‥。






幸い、さほど遠くまでは行っていなかった為、すぐに学校へと引き返す。




教室に着き、自分の机の横に引っかかっていたプールセットを回収。






これで良し。






教室を出ようとした時、吹部の子達が入って来た。






「望美っ‼︎どしたの?こんな時間に居るなんて珍しい」






その中の1人、親友の夢乃がそう言った。




あたしは帰宅部だから、いつも帰りのホームルームが終わって直ぐに帰ってしまう。




彼女が驚くのも無理は無い。




そのまま制服に着替え始めた夢乃と一緒に帰る約束をして、先に昇降口へ。




待っている間、念の為プールセットの中身を確認しておく。





何か忘れてたら大変だしね。





すると、帽子が無いことに気付く。




タオルで隠れてて気付かなかったけど、プールの方にでも落として来たのかな?




体育は6時間目だったから、それ以外の場所に心当たりは無い。











最終下校時刻10分前を知らせる放送が入ると同時に、夢乃が来た。






「ごめんっ‼︎ちょっと忘れ物した‼︎」






先に門の所で待っていて貰い、プールの方へ走る。




渡り廊下から体育館に入り、裏の出口からプールの入り口に出る。




途中には何も落ちていなかったから、プールサイドか更衣室だろう。




更衣室に行く途中、フェンス越しにプールサイドを見るけど、何も落ちていなかった。




此処に無かったら、もう諦めるしか‥‥‥。







そう思いながら扉を開け、中に入る。





使っていたロッカーを確認すると、白い帽子を発見。名前も、ちゃんとあたしのものだった。




胸を撫で下ろし、帽子をスカートのポケットに入れ、更衣室を後にする。






プールを通り過ぎようとした時。










とぷんっ。ぱしゃぱしゃ。ざぶん。










微かだったけど、そんな音が聞こえた。










__え?こんな時間に‥‥‥‥人?















腕時計を見ると、もう17時25分。












まだ日差しはあるものの、最終下校時刻まであと5分。これを過ぎると、もう入り口の門が閉まってしまう。




この学校に水泳部は無いから、今の時間プールに人が居るなんておかしい。










プールに目を向けると、女の子が水で遊んでいた。















ぱしゃん。ぱしゃ、とぷん。















おそらく腰位はあるだろう、透き通るような銀髪。







薄く金色がかった瞳に、端整な顔立ち。







遠目でも、彼女が美人なのは一目瞭然だった。
















綺麗‥‥‥。















思わず溜息を吐いてしまう程に。


























あたしはしばらく、その光景に見入っていた。





‥‥‥‥と言うか、動けなかったと言った方が正しいかもしれない。












彼女が綺麗なのは勿論だけど、理由はもう1つ。













耳だ。













彼女の耳は人間のそれとは違い、魚のヒレみたいな形をしていた。








それを見れば、彼女が人間では無い別の存在だと分かる。




気付いた瞬間、あたしはこの学校に伝わる七不思議を思い出した。











「プールサイドの‥‥‥人魚姫‥‥‥‥」











思わず口に出てしまった。






小さな声で呟いたにも関わらず、彼女はふと顔を上げ、あたしに向かって微笑んだ。













わぁぁぁぁ‥‥‥‥。












女のあたしが見てもドキドキしてしまう位、綺麗な笑顔だった。












その時、「望美ぃ〜‼︎後2分〜っ‼︎」と門の方から夢乃の叫び声が聞こえた。







やっば‼︎‥‥‥‥早く戻らないと‼︎







そう思ってプールの方を見ると、一瞬目を離した隙にその子はもう居なくなっていて。




確認する間もなく、あたしは門の方へ全力疾走した。
























「藤田ぁ、後5秒遅かったら居残りだったぞ」





門の前にいた生活指導の先生にそう言われ、「超焦ったんだかんね?」と夢乃にも怒られてしまった。




あたしは息を整えるのに精一杯で、返事が出来ずに頷く事しか出来なかったけど。





危なかった。





さっきのあたしは、今までに無い位速かったと思う。




多分、50m5秒位のタイムが出ててもおかしく無かった。




絶対絶命の時の人間の力って凄い。






「ねぇねぇっっ‼︎さっき、凄いの見ちゃった‼︎」





校門で先生と別れた後、あたしは我慢出来ずにさっきの事を話す。





まだ胸がドキドキしてる。







「嘘だぁ。だってアレ、迷信でしょ?」




「本当だってばぁ‼︎」







オカルトじみた事を全く信じない夢乃は、あたしの話を信じてくれない。




あたしもオカルトは苦手だけど、だって見たんだもん。






「それにしてもさぁ、『プールサイドの人魚姫』‥‥‥だっけ?アレって、片思いしてる人と結ばれるって伝説あるの知ってる?」




「そうなの!?」

















『プールサイドの人魚姫』






あたしの通う学校に代々伝わる七不思議の1つ。




海が近い事から生まれた迷信とも言われている。




時刻は午後4時〜6時の間。




プールの授業がある6月〜9月頃に見かける事が多く、銀髪と魚のヒレの様な形の耳が特徴。




人魚姫に会うと必ず、「貴女も私に相談しに来たの?」と聞かれる。




諸説有るが、人魚姫にお願い事をされたり、契約(何の?)をしたりする事もあるらしい。




片思いの相手と結ばれるという説もある。




恋愛中の人にしか見えない。










でも、あたしは______。




4年前に書き始めたもので、あえて文章形態もそのままにしております。


少々堅苦しいとは思いますが、お付き合いいただければと思います。




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