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第7話 偶然だね



うぐぐ…キ、キツイ…



「ねっ、エイベル!僕が渡した『ペガサスの靴』役立ったでしょ?みんなもそう思わない?」



ペガサスの靴?最先端のファッション靴か何かか?


これで貴方もモテモテ!

羽の生えた種馬のような人生を!


…ゴクリ…ほ、欲しい……



「かっかっか、空を駆けるとはなかなか面白いマジックアイテムじゃったな」

「けっ…あんなのぁ邪道だぜぇ」

「あー、ムステインは上手く使えなかったからってそんなこと言う!」



くそぉ…全然違うじゃねぇか…



「ムステインがと言うよりはエイベル以外は誰も上手く使えんかったがの…量産化に成功したと聞いたが…」

「ふん、あれじゃあ売れねぇ…まぁ履いてる奴がいても負けはしないがなぁ」

「確かに使い所は意外と限られそうだ…俺もまだ五歩程度しかバランスを保ってはいられないしな」



エイベルめ……男は道具に頼り出したらそこで成長は止まっちまうんだよ!


色街のお姉さんが言ってたから間違いない。



「ま、他にもどんどん僕のツテで最新アイテムを仕入れるから…みんなもよろしくね!」



セトの野郎……神官っつうより商人みたいだな。



「商人のような口振りですねセト。ダイアボ教は商売繁盛の神様でしたっけ?」

「もー、サラさんまで変なこと言わないでよ!これはダイアボ教じゃなくてアラム商会とのツテなの!」



ヴァルキリーのサラも俺と同じこと言ってる。

アラム商会ってなんだっけ?



「アラム商会…?あぁ、グゾン教国に本社があるっていう…流通業がメインじゃなかったの?」



うん、今日はサラと気があうな。

つき合っちゃう?



「最近色々やってるみたいですよ。それよりサラさん…模擬戦であのアホが言ってたのってほんと?あっ、エイベルの方はどうなの?ねぇねぇ!」



アホって俺のことか?セトの野郎…覚えておけよ…

それにしても野暮な男だ…

……えーっとメモはどこだったか…



「あ、あれは…」

「あれはアロウズが奇襲のつもりで言っただけだ…それに引っかかったお前が狙われた訳だがな」

「う、ぐぬぬ…」


エイベルがサラとセトを同時に黙らせたとき、コンコンっと扉を叩く音が聞こえてきた。



「みなさん、本日はおつかれさまでした」



そう言ってギルドの護衛用控え室に入ってきたのは…


俺の位置(・・・・)からはよく見えないが、声だけで可愛子ちゃんとわかる稀有な存在…リニスだ!!



ウィークエンドの連中はすぐさま立ち上がり、エイベルなんかは敬礼までしている。なんかもう軍人みたいだな…



「リニアリス様、こちらの席へどうぞ」

「ありがとう、サラ」


サラに促され控え室の奥にある椅子…俺の目の前の位置に座ったリニス。



ついに姿が見えた…



リニスは説明会の時よりは動きやすそうだが大きく背中の空いた淡い水色のドレスに着替え、月よりも美しく輝く髪は花柄のブローチで緩く束ねて左肩から前に流している。


めっちゃ綺麗な背中だ…それにうすっ!!

バストはそれなりにありそうなのに…はぁはぁ…

華奢さが…たまらんばい…



「あれ?リニアリス様、何か用事でもありましたっけ?」


セトが無礼にもリニスに話しかける。


テメェは息止めて黙ってろ!そしてそのまま窒息しろ!

童貞が感染るんだよ!!

あれ…女の場合それだとバージ……それはメリットか?



「いえ…あ、はい、ちょっとサラとおはなしが…」

「我々は出ましょうか?」

「はい。お気遣いありがとうございます、エイベルさん」



え〜気になる〜、とかゴネてるセトを連れて部屋を出て行ったエイベルとその仲間たち。

一礼して扉を閉めるとき、エイベルがコッチを見てたような気がしたけど…まさかね?


「ふぅ…どうやらここまではうまくいきましたね」

「はい。ですが…アロウズがここまで来れるかどうか…来れたとしても…負けた後なのでどのツラ下げて、とか思ってるかもしれませんよ?」



ぐぬぬ…サラのやつ余計なことを言いやがって…

もう忘れてるかもしれなかったのに!


「そんなこと…とても凄かったです!あのオリジナル魔法も…」



結果として仕留めたのはゴリラ一頭だったけどね…しかも味方の。

ってか味方のゴリラって嫌な響きだな…


ジャングルのリーダーにしてゴリラの友達!!


…何故だろう?

裸で腰巻き一丁にならなきゃいけない気がしてきた…



「あの男は…とてつもない格好つけですので」

「サラはアロウズさんと仲好さそうでしたね」

「そう…でしょうか?でも冒険者同士はみんなこんな感じですよ?」

「それって素敵なことよ?わたしなんて友達全然いないもの…みーんなわたしの肩書き見て…おべっか使うか距離を置くかのどっちか!」

「それは…高貴な身分ですので…」

「その高貴な…高位貴族の子なんかは会っていきなり『幸せにするから結婚しよう』とか言ったりするのよ!?信じられる?どうせ王家と繋がりを強めたいだけなのに!」



それは本当に一目惚れした可能性も…まぁいっか。

身の程知らずなスケベもいるだろうし、変な虫はつかない方がいい。



「ねぇサラ、アロウズさんとはどうやって知り合ったの?アロウズさんとエイベルさんの関係も知ってる?ジャングルにいた銀髪のとっても綺麗な女性もお友達なの?」

「リ、リニアリスさま…そんな一度に聞かれても…」


まるで平民の女学生のようなお喋りをしてくるリニスに詰め寄られてタジタジのサラ。


「えっと、ゴホン…わたしとアロウズが…いや…アロウズとエイベルの関係から話した方が分かりやすいですね」


サラのやつ余計なこと喋るなよ…

というか俺、どうしよう…



「アロウズと出会ったのは12の時…わたしが冒険者になる前のことです。エイベルは当時16歳…彼はある事情によってその1年前から冒険者になっていました。そして偶然…いえ、婚約者だった彼を追ってウラカに来たとき…再開したエイベルとコンビを組んでいたのがアロウズでした」

「元婚約者のエイベルさんを追って…」

「お恥ずかしい限りです…まだ子供だったんですね」

「いいえ。悲しいけどロマンティックだわ」

「そ、その話しはいずれまた…話しを戻しますね……えっと、ただコンビといっても2人の関係は師匠筋に当たるある冒険者の兄弟弟子、といった方が正確だったかもしれません」


師匠なんて呼ばれるような貫禄のある人じゃなかったけどな。


「アロウズさんってその時いくつだったのかしら?」

「えーっと確か私たちの中間だったはず…14歳だったかしら…」

「うわぁ、見てみたかったなぁ〜、年下のアロウズさんやサラ。同じ年のエイベルさんも」

「ははは…そんな可愛い子じゃなかったですよ…あ、そういえばその時皆で撮った写真が…」


そう言ってサラは立ち上がってスタスタと俺の方に歩いてきた。


や、やばっ……



彼女は控え室にある個人用ロッカーの扉をガチャンと開く。



「…や、やぁサラ…偶然だね?西街地区に美味しい飯屋が出来たって…」

「き、きゃああああああ〜〜〜〜!!」



ロッカーの中から親しげに挨拶した俺と目が合うと、少女のような悲鳴をあげたサラ。

本当に美味しいところなんだけどね…



「サラ…え?なんで?え?!アロウズ…さん!?」


リニスも目をパチクリさせてこちらを凝視している。

ビックリしてる顔もキュートだ!!


「ちょ…サラ、ヤバい!誰か来たら…」

「いま悲鳴みたいな声が聞こえたけど?」


扉の前で控えていたであろうヴァルキリーの1人が中を確認してくる。


俺はロッカーの扉を内側からガチャンと締めて間一髪で姿を隠す。


「サラ?姫様も大丈夫でしょうか?」


よし、気づかれてはないようだ。。


いまだ呆然とした表情のサラに変わってリニスが機転を利かした。


「あ、あはは…サラに護身術のお手本を見せてもらってたの…い、今のは暴漢に襲われる役で…」

「そ、そうでしたか…」


その時サラがスッと目を細めてから、体を同僚に向け口を開いた。


「えぇ大丈夫よ、ニッキー。騒いでごめんなさいね」

「サラ…なんか怖い顔してるけど…姫様相手に無理したらダメですよ…」

「ふふ、姫様には当然…ただ女の敵が、例えば人のロッカーに潜んで立ち聞きしてるような変態がいたら…」

「ロッカー…?…え?敵?変態?」

「二度とタテなくなるように…滅するわ!!」



ひぃいいいいい!!!

ヤバい…タテなく?滅する?



「そう…?何かよく分かんないけど頑張って…」



そう言ってニッキーと言う名のヴァルキリーの一員は扉を閉めた。



行かないでニッキー…せめてサラを連れて…



「アロウズ…釈明の機会を10秒あげるわ…10、9」


すぐさまロッカーから飛び出した俺は至極もっともな釈明をはじめる。


「8」

「あの、サラ?しし、仕方なかったんだ…後から入るには困難かと…」

「7」

「だから詳細説明のあとすぐに来て……隠れるとしたら…お前のロッカーなら誰も開けないと…」

「…0!!」

「6から下は…グボッ、ブヘッ…うがぁああ…ち、ちぎれ…」


サラの見事なジャブ、ボディブローで体勢を崩された後、アッパー気味に入ってきた右手が俺を…タタせる事が男の存在意義であるモノを…びろーんと引っ張って引き千切りにかかる!


「女の…最初の数字はラッキー7なの」


いや、まったく意味分からん…た、たすけて…


「サラ…サラ!お願い、許してあげて!」


リニス…君のために…タタせたかっ……



リニスの言葉でようやく俺のモノを離したサラ。

俺はそのままドサッと音を立てて床に倒れるのであった。






…5分後



「きゃああ、小ちゃいサラ可愛い!この頃は髪の毛長かったのね!」

「えぇ、髪はヴァルキリーに入ったときにバッサリと」

「エイベルさんはあんまり変わってないわね…今より若くしたって感じで。でもイケメンだわ!サラが追うのもわかるわ!」

「リ、リニアリスさま!そ、その話しはご勘弁を…」



女2人で写真を見ながらキャピキャピトークが繰り広げられた横で……


「うぐぅ…い、いたい…」


俺は正座していた。


「ねぇ…もしかしてこのア、アフロヘアと言うのかしら…これって」

「そうです…小さいアフロがアロウズ。大きいアフロが2人のししょ…」



しかも片面が三角状に波打つ板の上に…そして膝の上には控え室にあった辞書やら剣やら重たい物がどっさりと…


もちろんこうなる前にシコタマ説教もされてる。



「…あのサラ」

「五月蝿いですね。重石が足りないのかしら?」



ニッコリしながら控え室にあった大きなテーブルに手をかけるサラ。


「それはマジでやめて…反省してます……」

「サラ、そろそろいいでしょう?時間も限られてることですし…」

「ふぅ…仕方ないですね」



遥か東方から伝わったと言われる…サラがそう言ってた…拷問からようやく解放された俺。


なんでそんなもんがここにあるのかは謎だが。



「アロウズさん…大丈夫ですか?」

「リニス…はは、喋るのは久しぶりだね。模擬戦では負けて…格好悪いとこ見せちゃったから恥ずかしいぜ」

「いえ…模擬戦は全然……どちらかというと…今の方が…」




遂に果たしたリニスとの再開…だが…



模擬戦後より状況悪くなってんじゃねーか!!




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