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第6話 嚙みつけ!

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何百、何千の冒険者により踏み固められた土の地面。

その表面に広がる細かな砂利の上に立つと、妙に小気味好いザラついた感触が靴底を通して伝わってきた。



「さて…悪い意味で甲乙つけ難い試合が続いたが…テメェらまでそんな結果になるんじゃねぇだろうな?」


模擬戦会場の中央で向かい合うジャングルとウィークエンド。その中間に位置したギルマスが、皮肉とも脅しとも取れる内容を口にする。



ギルマスのおっさん…近くで戦いを見て血が滾ってるんじゃない?



「ギルマス…顔がギャングの親玉みたいになってんぜ」


公正なジャッジをしてもらうため、ギルマスに向かって冷静になるよう親切なアドバイスを送る俺。


「顔だけじゃないネ!」

「俺様が全員ブチ殺してやっから黙って見とけや!」

「ちなみにコレは勝ってもいいのでござるか?」


だが血の気の多さでは負けてない連中が言いたい放題だ。まったく…



「ぐぬ…減らず口だけはA級だな…テメェら辺境伯の前で不甲斐ない試合したらタダじゃおかんぞ」


俺がアピールしたいのはギャングの親玉より迫力がある辺境伯じゃなくてリニスだけどね。



「ダイィン!俺たちを殺すだとぉ?またボコしてやっからぁ覚悟しろぉ!」


アッチの狂犬まで噛み付いてきやがった。


「ムステイン!あん時の借り…倍にして返す!!」

「ニィ!あんな変な喋り方の男に負けるなヨ!」


俺の知らないところでも貸し借りはあるらしい。

あとイジィ…お前がそれ言うか?


「なぁにぃ〜!?こ…」

「双方やめろ!!ここでは口ではなく力と技で競え!!」


このままではラチがあかないと思ったのか、ギルマスが強引に模擬戦を開始させようとする。



「いいか、分かってると思うが武器、魔法の類は何でもアリだ!だが可能な限り回復魔法が有効な範囲のダメージに収めろ!ただし死んでも文句はナシだ!!あとはその場のノリだ!冒険者らしくな!」


ノリでやったら殺し合いになりそうなんですが…

しかも実力的には一方的な虐殺も…



「あと俺の判定は絶対だ!いいな!?始めろ!!」



誰の返答も待たずにグダグダの体で始まった模擬戦。



ギルマスが少し離れた位置に下がると、ジャングルとウィークエンドのメンバーがそれぞれ思い思いの構えをとる。


ウィークエンドは余裕綽々といった泰然とした態度。

こちらの出方に合わせても十分対応できる自信があるって感じだ。



一方的に虐殺されないためにも…まずは奇襲だ!



「エイベル!!」

「…なんだ?手加減なら」

「サラがお前とやり直したいってよ!!!」



俺は先ほどまで自分が話していた相手…ヴァルキリーのサラを指差す。



「えっ…ちょ、ちょっと!!馬鹿アロウズ!!わたしそんな…エイベル…わたしは…」


急に名前を呼ばれたサラが慌てたように俺とエイベルを交互に見やりながら狼狽えた声を出す…


皆の注目がサラに向いたとみるや、俺の背後から飛び出し小型のナイフを投擲するイジィ。


そのナイフは一直線にエイベル…ではなく、


「へっ?!」


思わずサラの方向を向いていた神官セトに向かう。


だがそのナイフがセトに刺さる間一髪前、側にいたエイベルが長剣で弾き落とす。


その時にはもうソールとダインがウィークエンド陣営に向かって走りだしている。


「いざ!!」


開始時にエイベルまで二十歩ほどあったところ、ソールはすでに残り五歩の距離。足の遅いダインはそれに遅れることゴリラ2頭分。



ソールが居合の要領で刀を一閃…


金属同士がぶつかり合う甲高く乾いた音が模擬戦場に響き渡る。


1つはもちろんソールの刀、もう一方はエイベルの手前に割り込んできたムステインの長剣。


「ほぅ、拙者の居合いを…剣舞殿か…おもしろい!」

「人斬り〜、テメェのことはぁ少し気になっていたんだぁ…失望させんなぁよぉ?」


どうやらソールとムステインは互いを相手取る事に決めたようだ。


その間にもイジィは次々と飛び道具をセトとエイベルに向かって投げつける。


小型ナイフ以外にも時折、鉄針と呼ばれるごく細い鋭い釘のような武器を混ぜることで相手のリズムを崩そうとしている。


その横からダインがエイベルに攻撃を仕掛ける。


「オラオラオラァ!!!」


常人なら持ちあげるのも困難な大斧をブンブン振り回すダイン。


エイベルはそれを冷静に避けたり剣で受け流している。イジィからの攻撃も同時に捌きながら…



ちっ…相変わらずの化け物ぶりだな…



俺はその間に水魔法の水弾アクアバレットを小刻みに放ってワイクリフに魔法を使わせないように牽制している。


老エルフのワイクリフは防壁魔法で俺の魔法を防ぐだけで積極的に戦いに参加しようとはしていない。



ハンデのつもりか…それならそれで好都合だぜ!!



俺は異空間と繋がっていると言われる冒険者必須アイテムのマジックバッグから水筒を取り出し、そこから空中に水をばら撒きながら詠唱をはじめる。


「水狼よ、ケツに嚙みつけ!!…水操弾マニ・アクアバレット!!」


宙に撒かれた水が4つの塊に分かれ…鋭い弧を描いてウィークエンドの連中に襲いかかる。


「ほっ!オリジナルか!?」


ワイクリフが驚いた表情で言う。


水操弾マニ・アクアバレットは俺のオリジナル魔法にして切り札の1つ。


自分の意思で軌道を操れる水弾を複数放つ攻撃魔法。


ただこれをやるには事前に自らの魔力を練り込んでおいた水が必要だ。

そして操る精度も完璧とは言い難いし、魔力の消耗も激しい。


しかし乱戦でも複数敵を同時に攻撃できるのはかなりのメリットだ。単純な範囲攻撃では味方も巻き添えにしちまうのでこうはいかない。



歪ながら鋭い三角錐のような形をした水塊がウィークエンドの4人全員に降りかかる。



ワイクリフに向かった水弾は防御魔法で弾かれてしまう。

まぁ…コイツはしょうがない…



ムステインとソールは2人ともが凶暴な笑顔と…恐るべき剣速でもって互いを斬り合っていた。


「むっ?」


先に水弾に気づいたのはソール…

その視線で感づいたのかムステインが背後に大きく飛びのき上から迫った水弾を避ける。


ソールの馬鹿…いや、アイツの事だから…


「アロウズ!!一対一を邪魔するでないでござる!!」


ムステインに避けられた水弾はそのまま地面を抉り消滅してしまう。


アホサムライの悪い癖が出ちまってる…

まぁいい、本命はこっち…



残り2発の水弾を2つともエイベルに狙いを定める。

守られてるだけのセトは無視だ。



イジィの飛び道具とダインの大斧と水弾2発の同時攻撃!!これで決まりだ!!うわははは!死ねぇ!



ぐはぁ、とか、うがぁ、とかいうエイベルの悲鳴を想像してニヤリとしたとき…


エイベルがセトの襟首を掴んで、空中・・を駆け上がった。


「飛んだ…って、んな馬鹿な…」


ニ発の水弾はエイベルのいた空間を通りすぎるかと思いきや……突然相手がいなくなったせいで攻撃を空振り前のめりになったダインに……ぶち当たった…


「ぐぼぉぎゃああぁぁぁ!!」


水弾を受け汚い悲鳴をあげて倒れるダイン。


自分で言うのも恥ずかしいが、なかなかの威力だな!



なんちゃって…いやマジですまん……

頑丈だから死ぬ事はないだろうが…



セトを持ち上げたまま空中を四、五歩ほど駆け上がりダインを飛び越えてイジィと俺の近くに降り立ったエイベル。


俺は慌ててマジックバッグからショートソードを取り出して構える。


「イジィ援護を…」

「もうタマ切れネ…」


前半に景気良く投げまくった結果か…


エイベルは目にも止まらぬ素早さで剣をイジィの喉元に突きつける。


「そ…」


ギルマスが何かを言う前にショートソードでエイベルに斬りかかる俺。


「ふっ」


そんな一息と共にエイベルの姿が消えた…

その瞬間、足首に激痛が走り急速に視界が傾いていく。


俺は空を見上げる格好で地面で転がり、それを見下ろすエイベルがこちらに手の平を向けている。


どうやら足払いで転がされたようだ。


「猛き火の精霊よ…」


エイベルの手に魔力が集まって赤い光を帯びはじめる。



クソが…やっぱりこうなっちまうのか…



「止めなさい!!」

「そこまでだ!!エイベル!!」



ギルマスが制止する前にリニスの声が聞こえたような…



詠唱を中断したエイベルは、何も言わずクルリと踵を返して自陣営に戻っていく。


ちくしょう…

こんなカッコ悪い姿見せた後に…どのツラ下げてリニスに会えばいいんだよ…




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