誰だよばらした奴は!
ある日のブラックアース。
俺は先日、利香から聞いたグラマンこと実明さんの様子が気になって、少し団長に相談してみることにした。
千隼さんに相談しようかとも思ったけど、ここはギルド一番の年長者の団長に聞くのが良いと判断した。
「うーん、実は僕も最近様子がおかしいなあとはおもってたんだけどね」
まあ、俺が気付くくらいだから、団長ならとっくに気付いているか。
「でも、実明ちゃんが気にしている内容が、ストーカー関連の話だったのは知らなかったよ」
それは俺も本人から聞いたわけじゃなく、ほとんど利香から聞いた話なんだよな。
なので団長がその理由を知らなかったとしても、それは仕方ない。
仕方ないんだけど、団長達にも相談してないのか実明さんは・・・。
「もしかして実明ちゃん、ストーカーにあってるんじゃないの?」
俺と団長の会話に入って来たのは明海さんだ。
実は最初は、宿の会議場で話をしてたんだけど、チャットが面倒になったのでスカイポに切り替えてたんだ。
「いや、それにしては、ゲーム内のアバターが可愛いと、絡まれたりしませんか?とか、ゲーム内の問題に見えたんですけどね」
「でも実明ちゃんのキャラってグラマンでしょ?あれにストーカーが付くとは思えないよー」
明海さんの意見はもっともだ。
俺もあの強烈なキャラクターをストーキングする物好きがいるとは思えない。
だとすると、やっぱりリアルの話なの?
わけわかんねーな。
「やっぱ、シャインちゃんに聞いてみた方がいいかもね」
団長のその一言で、千隼さんこと桐菜さんに聞いてみることに。
本当なら、姉貴や燈色にも意見を求めたいところだが、あいつらはグラマンが実明さんだってこと知らないからな。
実明さん本人が、あの二人に明かしてない以上、俺が勝手に言うわけにはいかない。
「やっほー・・・って、どうしたの?みんな勢ぞろいで」
スカイポに呼ばれてきた桐菜さんは、俺や団長たちが集まってるのを見てちょっと驚いていた。
「ごめんね桐菜ちゃん急に呼び出して。実はちょっと聞きたいことがあってね」
「聞きたい事?」
「うん。実はグラマンのことなんだけど・・」
そう言って、団長は桐菜さんにこれまでの経緯を説明し始めた。
「ああ、やっぱみんな気付いてたよね・・・」
「と言う事は、桐菜さん何か知ってるの?」
「ごめん、私も詳細は知らないんだ。むしろ今、真司君から聞いた話で何を悩んでいるのかをわかったくらいなの。ごめんね・・・」
桐菜さんにも相談してないのか実明さんは・・・。
こんなに誰にも相談できない様な事なのか?ちょっと心配になってきた。
「団長、これちょっと心配じゃないですか?」
「そうだね。んー、今度ちょっと、直接実明ちゃんに聞いてみることにするよ」
「うん、団長が聞くのが一番良いと私も思う」
団長と桐菜さんの意見に、俺と明海さんも全面同意した。
俺たちが口出しして良いのかどうか不安だが、ゲーム内で聞いてるって事は、恐らくブラックアースでの問題だろうと思う。
だったら、俺達でも手助けできることがきっとあるだろう。
とりあえずこの件は、しばらく団長にお任せしたいと思う。
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とある休日。
俺は今、隣町行きの電車に乗っていた。
理由は聞いて驚くなよ?
なんと、黒乃水言さんとのプチオフ会へと向かってるんだ。
火雷利香も一緒に。
なんでこんな事になってるかというと、2日前のブラックアースでのことだ。
その日俺がゲームにログインして、ソロでレベル上げに勤しんでいると、黒乃さんからメッセージが届いた。
「ちょっと話せないか?」
こんな感じの短いメッセージだったと思う。
最近黒乃さんからちょくちょく呼び出しを受けてたんで、一体なんだろう?とは内心思ってたんだよね。
このまえ呼ばれた時は、俺とエリナの付き合ったきっかけについて話す羽目になったし・・・。
あれは精神的にきつかった。
なんせ実の姉と付き合う事になったきっかけを、そうとは知らない人に話さないといけないんだからな。
「悪いな急に呼び出して」
この人がそう言うと、本当にそう思ってるんだろうなと思ってしまう。
「いえいえ、黒乃さんと話せるならどこへでも行きますよ」
「そう言ってくれると嬉しいな」
その後しばらく世間話などした後、いよいよ本題に入ってきた。
「実はな、ずっと聞きたかった事があってだな・・・」
まあ、そうあんだろうな。
というか、この前から本題に入ろうとするところで、毎回黒乃さんに用事が入ってしまい、結局用件を聞けずじまいだったんだ。
それにしても、俺を何度も呼び出してまで話したい事ってなんだ?
ちょっと前に、黒乃さんからブラックアウトギルドへの加入を打診された話は断ってるんで、それ関係じゃないとは思うんだけど。
「えっと、気を悪くしないでもらいたいんだが・・・」
「?」
「いや、なんというか、風の噂と言うか何と言うか・・・」
いつもはっきりと物を言う黒乃さんが、何やら言い淀んでいる。
え?そんなに言い難い話なの?
「あの、言い難かったら別に無理しなくても・・・」
黒乃さんを気遣ったというより、なんか俺が聞きたくなくなってきた。
だって絶対良い話じゃないぞこれ!
こんな言い難そうにしてる黒乃さん見た事ねーよ。
「いや待ってくれ!話す!ちゃんと話すから!」
そこまで決意しないと言えない話かよ!
ますます聞きたくなくなってきた・・・。
「あの、君とエリナ君なんだが、実はその・・・姉弟ってのは本当なのか?」
一瞬何を聞かれたのかわからなかったわあ。
「え?あの、その、その話どこで?」
「えっと、風の噂で・・・」
なんだよ「風の噂」って・・・。
こんなもん誰かが喋らなきゃ伝わらないだろうが!
誰だよばらした奴は!
そこで俺は色々考えた。
姉貴が言う可能性。これは無いな。そもそも本人が隠したがっている。
じゃあ燈色。そもそも黒乃さんと接点がない。
じゃあ利久。燈色以上に接点が(ry
そうなると残りはただ一人。
火雷利香しか可能性は残されていない。
利香は、ゲーム内で黒乃さんと非常に仲が良い。
なんかのはずみで喋ってしまった可能性はあるな・・・。
これは後で利香に聞いてみなければ!
と、それよりも今は目の前の黒乃さんだ。
うーん、どうしよう。誤魔化しても良いことないよなたぶん。
姉貴には悪いが、正直に事情を話すしかないだろう。
「実はですね・・・」
俺は、俺と姉貴がオンラインゲームで付き合ってる事情を、包み隠さず黒乃さんに話した。
もちろん、俺と姉貴がオフ会で揉めた話はしてないよ。
「なるほど、レッドリングね・・・」
俺の話を聞いた黒乃さんは納得してくれたようだった。
まあ、オフ会でのあんな話、作り話にしては出来過ぎてるから、信じるしかないよな。
「いや、すまなかった。ずーっと気になっててね。やっとすっきりしたよ」
黒乃さんは、昔からの胸のつかえががやっと取れたような、気分爽快な感じでそう言っていた。
おかげで俺の方は、もやっとしまくりだけどな!
黒乃さんの用事も終わった俺は、早速利香のスカイポにコールした。
「なんですか?」
「利香、お前黒乃さんに姉貴と俺の事話さなかったか?なんか、黒乃さん、俺と姉貴が姉弟さって事、何故か知ってたんだよ」
「えー!なんですすかそれ!私何も言ってませんよ!」
と、えらくご立腹されたので、俺はここ最近、ずっと黒乃さんから呼び出しを受けていたことを話した。
「先輩が黒乃さんに最初に呼ばれたのって、先月ですよね?」
「うんそう」
「私が、先輩とエリナさんが、そ、その、つ、付き合ってる!って知ったのは、先週ですよ!」
「あ・・・」
あー!そういやそうだ!
黒乃さんに最初に呼ばれたのは確かに先月だ。
あの時も、すげえ何か聞きたそうにしてたのを覚えてる。
で、利香にこの事を話したのが先週だから、時間軸的に利香が黒乃さんに話した可能性ってのは0だろう。
「すまん!」
俺は疑ったことを平謝りした。
「別にいいですけどね。それよりも、なんで黒乃さん知ってたんでしょうね」
そう、それがすげえ気になる。
さっきも言ったが、利香意外だと可能性は0%に近いんだよ。
そして唯一可能性のあった利香も違っていた。
じゃあなんで黒乃さんは、俺とエリナが姉弟だって知ったの?
「本人に聞いてみましょう!」
「え?」
「ラインしてみます」
こいつ、黒乃さんと仲良いなあ~とは思ってたけど、まさかラインの交換までしていたとは。
いや、それは今別にどうでもいい。
それよりも、黒乃さんがどういうルートでそれを知ったかのほうが大事だ。
俺は別に、エリナが姉貴とバレた所でなんともないんだけど、一体どこから情報が漏れたのかを知らないと、なんか気持ち悪い。
「先輩」
「あ、なんかわかった?」
「日曜日時間空いてますか?」
「は?えっと、日曜?いや空いてるけど・・・」
一体何の話なんだ?
「実はですね、その事で直接話したいから、プチオフ会しないかって黒乃さんから」
「ええ!」
そういうわけで、俺と利香と黒乃さんのオフ会開催が決定しました。




