そういえば、そんなギルドだったんだよ
とある金曜日。
俺達自由同盟とBMAは、コボルト要塞へと来ていた。
目的は一つ、コボルト要塞を奪取し、制限時間一杯まで守り抜く事だ。
先日、最近連戦連敗が続いている事から、何かギルドのモチベーションを上げれるような案は無いかと考えていると、火雷利香から「コボルト要塞を攻めてみたらどうですか?」と言われたんだ。
俺は今更コボルト要塞かあ、と、最初はあまり乗り気では無かったんだけど、今の俺達に必要なのは「目に見える結果だろう」という結論になった。
もちろんこれは、ギルド内での話し合いの結果だ。
話し合いはスムーズには行かなかった。
賛成派→俺・千隼さん・ライデン
反対派→エリナ・燈色
どっちでも派→団長・アッキーさん
団長と明海さんは、決まれば参加するし反対ならそれに従うスタンス。まあこれは、最初から予想できた。
予想外だったのはエリナと燈色だった。
「えっと、なんで師匠と燈色は反対なわけ?俺たちの実力を試すには良い場所だと思うんだけど・・・」
俺は若干動揺しながら姉貴にと燈色に質問してみた。積極的にやる理由は無いかもだけど、積極的に反対する理由も無い気がするんだよな。
エリナ「これまでずっと、中堅のトップギルドである「お兄ちゃん大好き!」と戦って来たのに、レベル落としてコボルトに行く利点を感じられないもの」
燈色「高いレベルで戦ってこそ、得られる物も多いと思う」
これが二人の意見だった。
ダーク「でもさ?ずっとそれを続けてた結果、モチベーションの低下に繋がってるわけじゃん?」
エリナ「これでやる気を無くすんだったらそれまでだって事じゃ無いの?最終的にはやる気のある人だけですれば良いんだし」
ダーク「いや、それはちょっと横暴だろう」
こんな感じで、スムーズじゃない、と言うよりは、軽く揉めてた気がする。
この状況を打破したのが火雷利久だった。
ライデン「あのさ、いつまでこんな下らない話し合いしてんだよ。さっさとコボルト要塞戦について作戦立てようぜ」
エリナ「あんた、今の話聞いて無かったの?参加するかしないかを話し合ってんのよ!」
里奈が軽くキレ気味に利久に答える。
ホントこいつは何を聞いてたんだろうか?
ライデン「はあ?そりゃ皆は要塞戦に参加できるから良いだろうけど、俺は一度も参加出来て無いんだぜ?」
ダーク「そりゃ、お前のレベルが低いからだろうが」
ライデン「そう言う事じゃねーんだよ!要塞戦始めるって決めた時はあんなにテンションアゲアゲだったくせに、ちょっと勝てなかっただけで落ち込む気がしれねーつってんの!」
エリナ「ちょっととは何よ!何も知らないのに生意気言ってんじゃないわよ!」
自由同盟のチャット欄に里奈のチャットが表示される。
そしてシーンとなる自由同盟のギルドチャット。
やばい、ちょっと雲行きが怪しくなってきた。
俺がそんな事を焦りながら考えているのを知ってか知らずか、利久はさらに発言していた。
ライデン「はあ?じゃあ楽しくも無いのになんで要塞戦なんかやってんの?意味わかんねー」
一瞬こいつまた揉めるようなことを何言ってんだ!と思ったが、次の瞬間には利久のこの言葉に「はっ」とさせられた。
考えてみれば、俺達自由同盟の理念は、とにかくゲームを楽しむ事だったはず。
それがいつの間にか、要塞戦に関しては勝つことが全てになってた気がする。
たぶんこの利久の言葉に姉貴も燈色も色々と考えさせられる所があったんだろう。さっきから全く発言しなくなっている。
ダーク「ライデン」
ライデン「なんだよ?」
ダーク「お前、たまに良いこと言うな。ごくたまにだけどなw」
ライデン「はあ!?俺はいつも気の利いたセリフしか言わねーだろうが!」
俺はライデンに「はいはい」と、適当に返事をしながら、みんなに提案した。
ダーク「なあ、ライデンの言う通り、ここんところ、勝つことにばかりこだわってた気がするわ。ここは初心に戻って自由同盟らしく参加するってのはどう?もちろん楽しむことが目的なので、強制は無しでね」
考えてみれば、参加したい人だけ要塞戦に参加って事でスタートしてたのに、最初に参加意思を表明した人は、必ず参加みたいな認識になってた気もする。
そもそも楽しくゲームをプレイする事が身上なのに、これで揉めてたら本末転倒になってしまう。
千隼「あ、それいいね!やっぱ楽しくゲームしないとね。すっかり私も忘れてたかもw」
すぐに俺に同調してくれたのは千隼さんだ。
この人も俺と同じで、自分の意見は持ってるけど、別に無理に通そうとは思わない人なので、同調してくれるとは思ってたけどな。
あと燈色も争い事は好きじゃないので、反対はしないと思う。
団長と明海さんは最初から「どっちでもいいよ~」なスタンスなので無問題だろう。
となると、残りは里奈だけだ。
こいつは良い意味でも悪い意味でもこだわりが強い。
だからこそ、INT特化なんていう特殊なステータスだって使いこなせるんだろうけどな。
エリナ「はあ、仕方ないわね。でもまあ、こんなくだらない事で争っても何の得にもならないのは認めるわ。コボルト要塞の案で行きましょう」
おっしゃ!色々あったけど、なんとかまとまりそうだ。
姉貴はギルド幹部でも何でも無いけど、ギルドでも古株のうちの一人だからな。
なので、姉貴が折れてくれたのはマジで助かる。
団長「ははっ。じゃあ意見もまとまったみたいだね。じゃあ今度の金曜日にコボルト要塞戦に参加したい人だけ参加って事で。参加したい人は手を挙げて―――」
みんな「ノ」
そして、やるからにはもちろん勝とうと言う事で、グラマン率いるBMAとも会議を重ね、そして、コボルト要塞戦の日を迎えたわけだ。
あ、もちろん利香にも俺は言っといたよ。あと、兄貴のおかげで上手くまとまったこともな。
そしたら、「あ、そう。良かったね」と、そっけない返事が返って来たんだが、スカイポで連絡したので、兄貴が褒められて、声が上ずっていたのが丸わかりだった件は、とりあえず黙っていることにした。
それとコボルト要塞戦には見学に来るそうだ。
「兄貴は出ないぞ?」
と、一応言ったんだが、
「べ、別にお兄ちゃんを見に行くわけじゃないし!」
って怒鳴られた。
ツンデレ乙。
さて、BMAとの会議の結果、今回のコボルト要塞戦は、スキルアップが目的では無く、あくまでもギルドに蔓延する勝てないが故の閉塞感なんかを打破する事が目的だ。
なので、あくまでも勝ちにこだわり、1時間丸々参加するのではなく、残り30分になった所で一気にクリスタルを奪取、その後すぐに門防衛を開始する事になった。
以前ブラックアウトがやったみたいに、一人一人のレベルとスキルが高かったら、門防衛に人数をかけて、その間にクリスタルを奪取と言う作戦も取れたんだが、俺らじゃそれは無理なので、とりあえずみんなでクリスタルを奪取する事に。
なので今は、30分が経過するのを待っている所だ。
30分が経過して、どこかのギルドがクリスタルを奪取した瞬間布告して、いっきにクリスタルを目指す。
途中利香から「なんで自由同盟が居ないのよ!」等と文句のメッセージも届いたりしたが、とりあえず参加するメンバー数も十分集まってくれた。
やっぱみんな、なんか気分を一新したかったんだろうなあ。
里奈「一番最初にコボルト要塞に参加した時は散々だったのよねえ・・・。」
真司「ああ、そういえばそうだったなあ。反省会とかやってた気がする」
燈色「やりましたね、反省会」
里奈「まあ、反省する部分も無いほどひどかったけどねw」
燈色「確かに。何をやれば良いのかさえわかりませんでした」
なんか思い出して来たなあ。
3人で俺の部屋で反省会してたら、利久が乗り込んできてお泊まり会に俺も混ぜろとか言って来たんだった。
あの頃に比べたら、俺たちもかなり進歩してるはず。
コボルト要塞は結局一度も奪取できなかったし、今回は良い機会だと思う。
そんな事を考えていた時だった。
団長「そろそろ時間だからねー。次、どこかがクリスタルゲットしたらすぐに布告しちゃうから。そしたら全員すぐにコボルト要塞に飛ぶようにね」
みんなそれぞれ私語をやめ、その時を待った。そして・・・。
「セブンナイトがコボルト要塞のクリスタルを獲得しました」
団長「よーし!みんな飛ぶよ!」
団長の声で、俺たちはコボルト要塞へとジャンプした。




