この世は修羅の世よ、修羅道よ。
この世をなんと考える?それは修羅道よ
宮沢賢治は熱心な法華経信者で国柱会という宗教団体に入っていたことで有名ですね。
彼が東京に出奔したのも、信仰にまい進するためだったのです。
しかし、彼は教主に諭されて、
「宮沢君。君は文才があるようだから、どうだね?
それで法華経をわかりやすく説いた法華文学でも書いたらいいんじゃあないかね」
教主からこういわれたのですから賢治の魂は燃え上がりました。
下宿にこもって、壱日に数百枚も童話を、、つまりは
法華文学を書いたと言われていますね。
そんな原稿が大きな旅行鞄にぎっしり詰まったのを弟の宮沢清六氏が見たことがあるそうです。
『これはみんなお前にやるからな』と言われて、
清六氏はずっと大事に保管してきたわけですね。
もし捨てていたら?あの壮大な童話はすべて消え去って
私たちは生前に自費出版された『注文の多い料理店」と、「春と修羅」しか
読めなかったわけですから。空恐ろしいことですよ。
さてそんな彼は、『この世は修羅の世である』と、
はっきり断定しています。
そもそも、仏教の輪廻転生論では、
天界道、人間道、修羅道。地獄道、畜生道、餓鬼道の
六道輪廻を生前の因果によって
ぐるぐると転生を繰り返すとされています。
だからこの世は、「人間道」であって、『修羅道』ではないはずですが?
あえて賢治は修羅を持ち出してきました。
修羅とは何でしょう?
簡単に言えば、力と力のぶつかり合いの世界です。
権力闘争の世界です。
修羅道では、いっとき、たり、とも、そうした戦いが止むときがないのですね。
争闘の世界です。それが修羅道です。
なんかニーチェの『権力への意志』 wille zur macht
の世界観にも相通ずるのではないでしょうか?
確かにどうでしょう?
この現実世界では個人間、地域間、人種間、国家間での争いが絶えることがありませんね。
まさに修羅の世です。
カントが言うような永久平和が来るのでしょうか?
いいえ、争いは決して止むことがないでしょう。
なぜならそれが、ありのままの真実だからです。
この世が修羅の世をやめることはありえません。
それは、人間の本質に根差すからです。
人間とは力を欲し、力を求めるものです。
力を名誉とか、お金とか、絶世の美女とか、食いものとか、豪邸とか、
に置き換えてもいいでしょう。
ひとは求める存在です。
無欲では生きていけませんね?
押し合いへし合い、生存競争に勝ってこそ生きていけるからです。
もしも本当に、無欲になったら死ぬしかありません、
テレビによく出てくるあの、ありがたい人生論を語る、高名なお坊さんも、尼さんも、
欲望だらけだからこそ、ああして、有名人になれたのです。
本当に無欲だったら、無名で、荒れ寺で、喰うや、食わずで
ボロ着てやっと生きているだけでしょうよ。
ですからこの世は修羅の世だというのです
まさしくその通りでしょ?
でもそれでいいのです。
というか欲を否定してはいけません。
欲にまみれてもいけませんが
何事も極端はいけません。
適当に欲を持って生きることも人生を活性化させますし。
無欲の生涯ほどつまらないものも無いでしょう?
「欲を持って生きる」、と言って抵抗があるならば。
「積極的に生きる」と言ったらどうでしょうか?
これならOKでしょ?
せいぜい積極的に生きて、
名声も、お金も、美女も、豪邸も手に入れましょうか。
まあそれらも、やがて来るだろうあなたの死の時には
どれもあの世までは持っていけませんがね。
でもいいじゃありませんか?
この束の間の夢の世でいい夢を見たのだと思えば、、、。
死の瞬間、
人はすべてが夢だったと悟るのです。
あれほど身を粉にして追い掛け回したはずの、
名声も、お金も、豪邸も、美女も、
すべて消え去るからです。
それが人生、
それが修羅の果ての結末です。
でもそれでいいのです。
消極的な、つまりは無欲な人生って。
ある意味、与えられてこの生命に対する冒涜ですよ。
生命は、躍動を、冒険を、出発を、本来求めるものです。
それを浅はかな考えで封印して?
無欲だの、引きこもりだの、無為だのと言っては
これは生命に対して無礼千万ですね。
どこへでも行き、
何でもして、
出来ることは何でもしてみて、
有名になる、地位とお金を手に入れる、
でも死がやがて来て
そのむなしさを身に知る
そのプロセスが、いいのですよ。
それが深い人生の味わいですよ。
何もしないでボロ着て、食うや食わずで
始めから
『お金はむなしい』なんて言ってみたところで、
「何を貧乏人が言うかね」と、
嘲笑われるだけです。
巨万の富を築いてから
『お金なんてむなしいよ』といってこそ、
初めて光る?おことばでしょ?
まあ。とにかく人生は修羅の世であり。
しかも案外短いですよ。
あっという間にもう終わりですよ。
さあ今すぐ、
出かけましょう。
計画を
夢を実行しましょう。
何をもたついているんですか?
いつやるんですか?
やるのは今しかないでしょ?
もうほら、
あなたのすぐ後ろには
暗い夜の闇が迫ってきていますよ。
暗くなったら
どこへ行こうにも、道も見えませんよ、
光あるうちに、光の中を歩むのですよ。
最後に
私の下手な?短歌でも聴いておサトリくださいね?
「この世をば、修羅の世ぞよと見極めて、炎の生を生き切る楽しさ。」 鬼仏庵主人 自詠