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【悪運】

「犬井」


奥へいった先には ちゃんと犬井達がいた。 だが一人だけ態度がおかしい。


「......大河......?」


誰もが目を移したその先には ガクガクと震える大河が、木の根っこの方でうずくまっていた。


まるで つい先程までの棗のように......。 あ、でも 棗の方がヒドイか


「コイツったらさぁ~、勢いでもつけて賛成したらしいんだけど、こうゆうの大の苦手らしくよ」


まさかの 棗と同じ。 まぁ、こいつはそれなりに最初から頑張ろうとしたわけね。


「お、おい 棗!! お前 怖くなかったのかよぉぅ!!」


情けないひょろっとした声で、棗に問いかける。

それに対して棗は、偽りもないかのように すぐに答えた。


「......怖くねぇよ、こんなもん!」


嘘つけ。


「嘘着くなぁ!! 矛盾君!!」と、思い切り棗の背中を叩いたウパー。

大声で言われた棗は「うるせぇな!!」と キャラに似合わず、大きく声を張り言った。


「でさ、コイツ かなりビビったらしいから、今から保健室に行くんだわ、俺ら。 だから お前ら3人?で 回って来なよ。 時間が経てば呼ぶからさ」


しっし と手首を払う犬井。 かなり青くなるマキの表情すらも 関係なしに。

さすがにもう耐えてられなくなった 。


おかしいことに 1年前は もう全っ然 マキに近づこうともしなかった棗が、気持ち悪い程いきなり 急接近して来ているのだ。 まぁ......、それが 本心だとも限らないが


「......行くぞ」


無表情で「行くぞ」と呟かれたマキ。 そんな積極的にならんでおくれ!! と相手に伝わるように頭の中で思い切り叫ぶ。 ......が、やはり無理


「......はぃ」

なんと返事していいか分からなくなったマキは、とりあえず言っておいた返事でしのぐ。 これからの時間が心配だ...... もうこれしか言えない



あれから すぐにあの不気味な森を抜け、人口の少ない物陰に隠れる棗。

このまま ある程度の時間までこいつとウパーといなければならない。


それは それで困る。......だが、このままここに 立ち止まっているのもまた困る。


「......表に出ません?」と声をかけるタイミングを熱心に計算するマキだが、なかなかない。 スキがなさすぎるのが棗。 絶対 この男と戦いたくないな。


「......はぁ」

肩に乗っかるウパーが ため息をつく。 やはりこの空気には耐えられないのが子供。

なんかもう これじゃ 喧嘩した夫婦みたいで気持ち悪いぜ。


ウパーのため!! 自分のため!! ......あと多分 棗のために、思い切って言ってみた。

「どこかいく?」と。


言った瞬間。


「どこかいく?」


マキが言ったはずの言葉が、誰かと重なる。 しかもそれはウパーのようなソプラノ声じゃない。 完璧に低い。


なんとも 悪運。 棗とはもってしまった。


お互いにいっきに顔を赤める。 こーんな恥ずかしいことが起きるなんて......誰も 幸運を願っていなかったのか!!?


「その青い奴が うるさいから行くだけだぞ!」

思い切り照れ臭そうに 声を張る。


それお聞いたウパーは 「矛盾君 いいこと言うねぇ~」とはしゃぎ始める。

こんなことあるんだ。 初めてだ、この男と意見が一致したのは。


クスっと笑ったマキは、「よっしゃ 行こぅ!!」と大きく声を出し 物陰を3人で出て行った。


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