【肝試し大会でーす!!】
そう言えば 集まったあとから ここを移動していない。
さっき言われたはずなんだけどな...... みんなで回ろうって......
思い切って じゃれあっている犬井に問いかける。
「みんなで回るんじゃないの?」
「え?」と 何を言っているんだ? とでも言っているような顔で 答えた。
「回るよ? 今は待ってるんだ、龍雅先輩をね」
......マジ?
まだよかったマキの表情が 一気に暗く......。 その理由を聞かない犬井らは 気をつかっているのか......?
どうしようもねぇな!! とやけになったマキは、先程までは凄く嫌がった紗奈の虫を勝手に引きちぎり 口に頬張る。
思わず「うまぁっ!!?」と叫ぶと、「でしょぉ!!?」と 叫び返す紗奈。
静かな森の中で、耐えない大はしゃぎをする男の声と、がむしゃらに口に物を頬張る女の声で、森がざわめいたあと......
「......うるせぇよ」
一気に 沈黙を起こす声。 そう、それは......
「やっと来た、龍雅先輩!!」
一斉に棗の方に目を動かす動作は、まるで目の前に有名人が現れたみたいなものだった。
それにもかかわらず棗は、野菜、甘いものが嫌いな 好物がなさそうなのに、ガツガツとリンゴを口に送らせていた。
なぜリンゴ? と言いたくなったが、そんな言う勇気など私にはないので......
「......回るんじゃねぇのか?」
あんたのセリフか、それ。
「まぁ......そうなんすけど......」
「そうなんですけど......何?」
つい食い気味にいったマキ、答えはすぐにかえってきた。
「だって いちようここも 組織の土地じゃん? ここだけ何もやらないとか......かわいそうじゃない?」
......そう言われればそうだ。 とみんな頷いた。 やるだけやってみる? とかそういう話を持ち出したのは紗奈。 探すだけ悔いはない!! と言い張っていたから、森の中を探すことにした。
しばらく歩いていても、騒ぎは全くしなかった。 だが皆思った不思議なことが一つだけできた。
なぜかこの森だけが 暗いのだ。 もうとっくに真夜中という感じだった。
周りを見渡したまま 足を動かすマキ達。 そうするといきなりウパーが叫びだした
「......あっちに人がいっぱいいるよぉ!!」
「まさかぁ!!?」とみんなが疑った。 絶対いるもん!! とウパーが聞かないため、その場所へ近づいてみた。
そうすると......
「きゃー 棗さんだわー!!」
キーン!! と響く女子の声。 こんな所に人が!!? と驚き、急いで目をそちらに向ける。
そこには驚くことに客の行列が。 10mは余裕で超えるその行列に、マキ達は 声が出せなくなった。
なんの行列だろうと気になった紗奈は、先頭の係員に向けて叫んだ。
「これ なんの行列ですかー?」
あえて選んだこの暗い森の中。 答えは一つしかない。 そう思った。
「肝試し大会でーす!!」
そう、肝試し。 しかもここは 組織の人間の魔法だけじゃないらしい。 この前 棗と来たあの森だ。 ここには......本物の幽霊が集まる。
もちろん最後には、安全のため 霊媒師の能力者を配置しているらしい。
「ご参加になりますかー?」 と大きな声を向けた係員。 答えたのは
「はいはーい!! やりまぁーす!!」
かなり乗り気の紗奈だけだった。
あとに続く他の声。
「あ、じゃあ俺もー」
「ヘェ~ 楽しそうじゃん!!」
「やりたい、やりたーい!!」
の、犬井、大河 ウパーの声。 それらにつられてマキも
「......うん。 出来るんならやりたいなー......」
と、賛成の声。 だが一人だけ......賛成をしない人間が。