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【ドS野郎......】

犬井に甘えてしまった。 もうこれ以上は私にだって勇気はなくなる。

棗に......言えるわけない。


なのに......


「......そうおもわねぇだろ」


そう小さく呟く棗は、マキの体に羽織る様に抱きついて来た。

そんなのは少しだって考えなかったため、動けない。 気がついた時には、自分のおかれている状況が理解出来た。 その時にはもう......真っ赤。


「......っ⁉ なにやってんだ⁉」


どうにか逃れようと腕を抜ける。 だが......出れない。

どうしたものか 力が入り過ぎていて抵抗すら無意味だったのだ。 何を考えてるんだ、どうしたんだ。


「......口調......戻ってんぞ、バーカ」


そうとだけまた小さく呟いてから スッと離れた。 おかしいことに棗の表情には 少しも乱れがなかった。 ......変わりがなかった。


「......なんかあったのかよ」

沈黙だけは逃れたい。 なんでもいいから話さないと......。 ダメージが計り知れない。


「......何で そう思うの?」

静かに吹く風と共に ゆっくり聞いて来た棗。 微妙に口調も変わっていた。


「気持ち悪いぞ、お前」


「......はっきり言いすぎだろ」

フゥッと息を吐き、棗は言う。


さっきのは普通に「寒そうだったから少しだけ 甘えさせようかな」 とか思っていたらしい。

だからって 「背中から抱きつくのはおかしいだろ」 と言うと、「せっかくの自分のジャケットを他人に借したくねぇんだよ」と 結構こいつらしい回答が戻って来た。


......タダの思い違いか......。


一気に肩の重みがなくなった。 嬉しいのか、違うのか......複雑な気分。

そこからは ちょっとした会話で沈黙は逃れ、無事 カンナ達を迎え入れることが出来た。






休憩時間を挟んでの最後のダンス。 お相手は......棗さんで~す......


さっきのこともあり、マキの中では自然にはしていられなかった。 でもあまりにも 相手は自然。

自分だけが焦っているのは見せたくない。 そう思い 我慢した。


棗とは 曲の間から始まった。 今長い曲のサビに来た というタイミングのため、残りは少ない。


お互い手を出し、一回転。 初めとは見違えるほど上達したマキは、自信を持ってリード。

さすがに 大河、犬井より経験はないだろうと勝手に思ったからだ。


でもこれはお決まりの状況。


「......変に動くな。 めんどくさい」


経験......見たことすらないステップ。 お構いなしに連発。 ついていけるはずが......ない。


「っちょ⁉ なんなんだ、お前⁉」

連続の思い違い。 もう我慢出来なくなったマキは 大爆発。 目を丸くし、棗の足の動きだけを見つめる。 ステップは何回も同じことを繰り返している一端普通なもの。 だが、それがわからない。


「気遣ってあいつらはヤンなかったんだろ。 これが俺らにとっての当たり前。 死ぬ気であっても お前はついてこい。魔法無しだかんな」


......こんのドS野郎......!!!!


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