【ダンスパーティー】
「棗さんってなに考えてるか分かりませんよね」
ボソッと呟く犬井。 かすかに気付いた棗は すぐに聞き返した。
「何」
でも相変わらず足を止めない棗。
周りは『まともに聞いてはくれない』と思い、“いえ、なんでも無いです”と返事をする。
何回も心を読んで経験した棗にとっては、今回のもいつも通りと思ったから、足を止めなかった。
でもそうはいかなかった。 いつも通り読心術で犬井を見ていた棗に違和感を感じさせた。
普通は出てくる次の言葉。 今回のは一文字もなかった。
「最初は 地位の対決だったの......覚えてますか」
最初に顔を合わせたのは 学級の地位を掛けた対決。 棗にとってはどうでもいいこと。 だが犬井にとってはかなり重要だったのだ。
それは全てにおいて上でありたかったから。 魔法に頼る人がまず嫌いだったから。 だから魔力をあまり解放しないんだ。
言葉に出さず、頭の中でしまいこんだ。 棗に読まれているのに気付いていたからだ。
そうも思わず知った棗は 足を止めてしまった。
足を止めない犬井は スッと棗を抜く。......と同時に
「俺 貴方にはまだ負けてないんで」
そう言って、「マキに惚れてるの 自分だけじゃないの知ってんだろ」を頭にしまい込む。
背伸びをしても見えないほど遠くに行った犬井。 思いがけない2言を聞いた棗。
握り拳をポケットの中で ギシギシとし始める。 自分を責める考え、犬井を見下す言葉。そして......
『マキに惚れてるの 自分だけじゃないの知ってんだろ』
エグいくらい身体を貫く感じたことのない痛み。 気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い。
キモチワルイ。
「変なコト考えさせんな、マキ」
人混みで掻き消されてから ゆっくりと距離を縮めた。
広場を30分かけて一周したパレード台は 爆発とともに消える手品式のフィナーレとなる。
やっと追いついた男子。 誰よりもはしゃぐマキは気付かず、瞬きでさえ避けて見つめる。
「マキ 食らいついたねぇ」
ニコっと微笑み女子に言う。 「ずっとあの調子で......」、カンナが答えた。
棗が追いついた頃に フィナーレを迎えた。
『第2部後夜祭もお楽しみ下さい!!』
先頭に立つ人が叫んだあと、いかにも手品師のような者が指をパチン。 鳴らす。
その瞬間
ドォオオオッッッッッッッッッンンンンンッ!!!!!!!!!!!!
赤い炎が一斉に燃え上がりパレード台が消える。 安全性も考えた結果、数秒で炎は消えた。
また共にマキの視線の先も変わる。 「素直過ぎるでしょ」とツッコミを入れる紗奈。
「......はい。 んじゃあとは私の楽しみがなくなったというコトで......」
なんとか帰ろうとしたマキを今度は紗奈が
「あたし達の楽しみにも付き合ってもらわないと......ねぇ?」
おっしゃる通りです。
今までの馬鹿でかい声量は跡形もなく消え、雰囲気のある空間へと早変わりした。
残り2時間のダンスパーティー。 ラストダンスまでの1時間55分。
やっと訪れた礼服行事だ。 友情が生まれれば、恋心だって生まれる。 それが社会でしょ
「みんな踊り出すんだ。 誘い、来るかもよぉ?」
誰よりもチャンスを掴もうとする紗奈は、本気モード。
マジで周りの人は受け付けない紗奈。 棗と犬井だっているんだぞ......
紗奈には眼中にもないみたいだ。




