其の四.五,関連人物まとめ
これまでに紹介した神々に関わる人たちについてかんたんにまとめました。
彼らのことを知ることで、古事記という物語をより深く楽しんでもらえるかと思います。
●ヒノカグツチ―火之迦具土―
イザナキとイザナミの間に生まれた火の神。燃える火の神であったため、彼を生むにあたってイザナミは秘密の花園を焼かれてわずらいます。のちにイザナミはそれが原因で亡くなり、イザナキは妻を出雲(島根県)と伯伎(鳥取県)の境にそびえる比婆山に葬ります。
この直後、イザナキは怒りに任せて生まれて間もないカグツチの首を斬り落とし、その血や亡きがらからは多くの神が生まれます。
●オオゲツヒメ―大気津比売―
食物をつかさどる女神。料理が得意らしく、高天原から追放されて腹ぺこのスサノオのために腕によりをかけます。しかし怪しんだスサノオが彼女のなすところをこっそり覗いたところ、なんと鼻や口や尻の穴からいろいろな食物を取り出していたではありませんか。
怒り狂ったスサノオはヒメを殺害。するとそのヒメの身体からは蚕と五穀(稲の種・粟・小豆・麦・大豆)が生まれます。スサノオは地上に降りるついでに、天上から五穀を任されます。
ところで、其の三を見た方はすでにお気づきかもしれませんが、この殺されたオオゲツヒメは日本書記に出てきたウケモチにあたります。こちらでも蚕と五穀が生じ、アマテラスが地上に広めています。
●アシナヅチ―足名椎―とテナヅチ―手名椎―
アシナヅチが翁で、テナヅチが媼ですね。お二方の名前の由来は足をなで、手をなでかわいがる意ともいわれています。
二人の間には元々八人の娘がいましたが、毎年のようにヲロチに食べられ、残すのは末のクシナダヒメのみとなっていました。
また、アシナヅチはスサノオがヲロチ退治ののちに建てた須賀(島根県雲南市)の宮殿の長官に任命され、稲田の宮主須賀の八耳という名を授かります。
●クシナダヒメ―櫛名田比売―
アシナヅチとテナヅチの末の娘。スサノオは彼女に求婚し、ヲロチ退治に備えてクシナダヒメを櫛に変え、自らのミズラ(当時の髪を左右に分け耳の上で束ねた成人男子の髪型)にさし隠します。
ヲロチ退治を終えたスサノオは彼女を元の姿に戻すと、二人は新居の須賀の宮殿にて晴れて夫婦生活を送るのです。この時にスサノオが歌った、八雲立つ……から始まる有名な歌がありますよね。
●ヤマタノヲロチ―八俣のをろち―
ヲロチの元々の意味は、得体のしれない不気味なものだそうです。
その見た目はかなり強烈です。その目はよく熟れた酸漿のようで、一つの身体に頭が八つ、尾が八つあります。胴体には苔が蒸し、ヒノキや杉が生えています。その長さは八つの谷、八つの山あいを渡るほどで、腹はただれ真っ赤な血が流れているようです。それぞれに意味がありそうですね。
スサノオはヲロチ対策に強い酒を使いヲロチが酔いつぶれたところで各々の首を斬り落としていきましたが、何より驚いたのはスサノオの意外な頭脳っぷりでしたね。英雄には知恵が不可欠だということを思いしらされます。
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