其の三,ツクヨミ―月読―
出番はないけど見守ってるぜ。
この神は三貴子の中では最も謎に満ちています。非常に記述が少ないばかりか、台詞も一つも用意されていません。
イザナキがミソギ(シャワータイム)で右の御目を洗った時に二番目に現れた神で、アマテラスの弟――性別の記述は定かではありませんが、おそらく男神でしょう――に当たります。
イザナキから夜の食国と呼ばれる夜の世界の統治を任され、それきりです。スサノオのような外見的な描写らも一切ありません。
ただし、実は『日本書記』の方でちょこっと登場していたりします。それでも台詞は一つしかありませんが。
『日本書記』のツクヨミは、初め姉アマテラスと仲よく天上界を治めていました。
彼はある時、アマテラスから「地上にいるウケモチ―保食―という神について調べてきなさい」という仰せを受けて、その神のもとに出向きます。
その神にご馳走を振る舞われるツクヨミなのですが、そのご馳走というのが、ウケモチが戻したショッキングなものでした。
怒り狂ったツクヨミは「穢らわしい!」と罵倒しながらウケモチを斬り殺してしまいます。
このことをアマテラスに報告すると、怒り狂ったアマテラスは「あなたの顔など見たくない!」と言って、この頃からツクヨミと一日一夜を隔てて暮らすようになりました。
〈ツクヨミ〉
夜の神。多分男。姉にアマテラス、弟にスサノオがいる。
姉や弟の活躍を陰で見守る謙虚さを持つ。ただし、『日本書記』では多くの官人や知識人の陰謀によって、狂暴な人格を植えつけられた。
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