其の十二,アメニギシクニニギシアマツヒダカヒコホノニニギ―天邇岐志国邇岐志天津日高日子番能邇邇芸―
「私は、美しいものしか受け入れない」
『天孫降臨』とは、読んで字のごとくアマテラスの孫ニニギが地上の高千穂(すばらしい場所)に降り立つことを指します。これも有名なので、わかる人にはわかりますね。
お察しの通り、彼は名前が長いです。おそらく、古事記神話の中では最も長い名前の持ち主なのではないでしょうか。
「アメニギシクニニギシ」が“天地が賑わう”で、「アマツヒダカ」=天つ神。「ヒコ」が男性をさし、「ホノニニギ」が“稲穂が豊かに実ること”という意味です。
名前は一見立派ですが、やはり血は争えない。父親同様、かなり甘やかされている描写が目立ちます。
〈ニニギ〉
アマテラスの自慢の孫。パパであるオシホミミが天降りの準備の途中でのんきなことにこさえていた。
本来オシホミミが地上を統治しにいくところを、「息子に任せる」とか言いやがった。急に重役を押しつけられたので、代わりに天降ってやることにする。
天の八叉(天降りの道が八方に分かれる分岐点)で天地をまばゆく照らすほど発行している不審な天狗(=サルタビコ)を見かけ、例のごとくびびる。自慢の孫のエマージェンシーに向け、アマテラスがウズメを派遣したところ、天狗がめっちゃいい人だということが判明。志願してきたので、SPとして起用してやることにする。
日向の高千穂に降り立つと、新たなSP二名に迎えられるという破格のVIP待遇を見せつける。
とんでもなくだだっ広い家を建てた後、笠沙の岬(鹿児島県)でめっちゃ美人(=コノハナノサクヤビメ)を見かけたので求婚すると、「お父さんに尋ねてからね」と焦らされる。娘さんを下さいと将来のパパ(=オオヤマツミ)に使いを送ったところ、意中のヒメともれなく付いてきた姉のイワナガヒメをゲットする。しかしこのイワナガヒメがごつかった。
ここで、急に人間臭くなったニニギが「ブスはいらねえ!」と天孫らしからぬゲスの所業でイワナガヒメを送り返すと、オオヤマツミは「よくも侮辱しやがったな!」と怒り狂う。仕返しにニニギ含む子々孫々(天皇家)の寿命を短くしてやった。
その後、サクヤビメが一夜にしてスピード懐妊。ニニギは舅に寿命を削られたことが響いているのか、そのサクヤビメに向かって「どうせ他の男との子だろ」と八つ当たりがましい一言。古事記の世界において神さまなどぽんぽん生まれて当たり前なのに、いやに人間臭い小物っぷりを発揮。
これにブチ切れたサクヤビメが、産屋にこもって火を点けて、火中出産によってお腹の子が正統な子であることを証明するという、狂気の沙汰に出る。生まれた三人の子供は火の気に当たったせいか、全員の名前に火が点いている。
ヒメのこの行動にびびったのか、ニニギの記述は「どうせ他の男との子だろ」で終わる。
「天降り」という言葉が頻繁に出てきますが、これは官僚らの“天下り”の原義となります。“天から降る”ということですね。
*年末年始は休ませていただきます。今後、更新が遅いと感じた場合は、詳細を活動報告の方に載せておきたいと思いますので、お手数ですがよろしくお願いいたします。