第三者の密室
春_________
俺、安城虹太は中学生になった。
別に俺は、天才的な才能があるわけでもなく、普通の少年だ。別に青春がどうのこうの言う訳ではないが、
いずれ青春の場となるであろう、この西桜山中学校に入学した。まぁ、別に私立の金持ちとかがいるわけでもない、一般的な市立中学だ。
だが、周辺の3つの小学校の生徒たちがほぼ必ずこの中学に来るのに、今年の新入生はわずか70人しかいない。
この桜山町が、とても小さい町であることが原因なんだろうか。
さらに、もう一つこの学校から真東に位置し、学校の構造や位置関係などがほぼ同じである、東桜山中学校というのもあるのがもう一つ
の原因である。
そんな生徒数が圧倒的に少ないこの学校で、一体どんなことが起きるのか。
実際、そんなことが起きる期待はしてはいないが。
校舎内は対して広くないため、あっさり教室へたどり着いた。
俺の教室は、二階の一番端に位置する一年一組教室だ。一年教室が何故二階にあるのか疑問だが、そこはスルーしておく。
教室の扉には、席順の表が貼ってあった。俺の席は窓際の一番後ろだ。前の席は偶然にも、小学校からの友人である沢口宗平だった。
「やぁ、コータ。」
奴が手を振りながら小走り気味にやってきた。
「よう。偶然だな、宗平。」
「まさか、中学に入っても君と同じクラスだとはね。」
修平は、席順の表をちらりと横目に見ながら言った。
俺には半分呆れているようにも見えるが。
「なんだ?俺と同じクラスが嫌だったか。」
「そんな訳ないよ。むしろ、良いことだよ。」
呆れかけているように見えたが、いつの間にかいつものにこやかな顔に戻っていた。
「だって、いきなり面識のない人たちと関わるのは結構辛いからね。まあ、ほとんどの一年生は北川小の生徒だから面識がない人のほうが
少ないけど。」
「確かにな。」
そんな、他愛のない会話をしつつも俺たちは席に着いた。
教室を見渡すと、同じ北川小の生徒たちが他校の生徒と話しているのが、ちらほらと見えた。
「いやぁ、いかにも春って感じだね。」
「そうだな、まあ俺たちはまた小学校と同じような生活を送るんだろうけどな。」
俺たちは小学校の時、何の変哲もない普通の暮らしを送っていた。
普通に遊び、普通に学校へ行き。
それと同じように、周りの青春ムードを多少噛じってみつつ、
ここを卒業するのだろうと思っていた。
宗平からこのことを聞くまでは。
「残念ながら、中学となるとそうもいかないんだよ。これが」
宗平はポケットに手を突っ込み、何かを出そうとしている。
「ここ、見てみな。」
ポケットからは生徒にあらかじめ配られていた、生徒手帳が出てきた。
そして、宗平は『校則一覧』のページを開き、俺に見せてきた。
「校則第十条、生徒は必ず部活動に参加し、他生徒との関係や交流を深めること・・・・」
「そう、ここに入学したからには必ず、何らかの部に籍を置かなくてはならない。つまり、小学校のようにそうのうのうとしていられな
いんだよ。コータ。」
あぁ、そうだった。姉からも話を聞いていたのに一番大事な部分を忘れていた。
俺は自ら、面倒な事を進んでするような奴ではない。
小学校の時も「誰か手伝ってくれ。」と言われても、名指しで指名されない限りはあまり手伝わないだろう。
だが自分は、『楽をしたいキリギリス』ではない。『効率の良い方法で働くアリ』なのだ。
別に、小学校の時からそのへんで悪戯を働くような悪ガキではなく、
普通にそのへんにいる少年だった。
でも、普通の少年とは多少ずれていたかもしれない。
小学校の中学年くらいからだろうか、あまり外で頻繁に遊ぶことは少なくなり教室で休み時間をぼんやり過ごしていた。
誘われれば遊ぶが、自ら遊びに行ったりすることは少なくなった。
家に帰れば、ぼんやりと部屋で宿題をこなしては、不思議で普通の子供とはこれまた大きく違った姉の遊びに駆り出され(かりだされ)、
一日が終わる。そんな、普通の少年とは多少ずれていた小学校生活だった。
だが、そんな姉も今は花の女子高生だ。自分が女子高生であり、弟も中学生だと言うことからなのか、
最近は変な遊びはしなくなった。そのおかげで、今は平凡な生活を送ることができている。
だが、その生活がまたも危ぶまれている。今度は、学校という理にかなったもので。
「そういえば、この学校にはどんな部があるんだ?」
そうだ、もしかすると帰宅部的なものもあるかもしれない。
そう思い、淡い希望を抱きつつ聞いてみた。
「そうだね・・・えーっと・・・」
宗平はぱらぱらとページをめくった。
「ほら、あったよ。」
そう言うと宗平は『部活一覧』のページを見せてきた。
「サッカー、テニス、剣道、バスケ、野球・・・どれも無難だね。」
「ああ、文化部もどうせ定番のやつばっかだろ。」
俺は運動部の一覧を見た時点で、そのページに目を向けるのをやめた。
「いや、案外そうでもないみたいだよ?コータ。」
「どういう事だ?」
「これだよ。これ。」
宗平の指差す所には、『哲学部』と書いてあった。
「なんだその得体の知れない部は?」
「さぁ?とにかく行ってみるしかないんじゃない?その哲学部ってやつに。」
こうして俺たちは通常登校日の明日、その謎の部活を見学することにした。
まだ、今日は入学式だ。それに、今日行っても人はいないだろうし。_____________
今日は朝から日差しが暖かい。いやぁ、こんな日に呑気に学校に行っているとなんだか今日が勿体無いような気がする。
こんなに天気がいいのに、一日中室内とは。
それでも、別に構わないが。
俺は少し余裕を持って、家を出た。
俺の家は学校からかなり近い。だが、学校は丘|(というより山)|の上にあるため、そこでかなりの時間を使うのだ。
余裕を持っても、着くのは八時くらいだろう。
「やぁ。コータ」
商店街を歩いていると後ろから声がした。
俺をこう呼ぶのは、間違いなく宗平だ。
「よう。おはよう宗平。」
「おはよう。今日は早いね、何かあるのかい?」
宗平の家は、俺の家からそう遠くない。歩いて五分程度だ。
当然、俺が早く出たことくらい分かる。
「あるわけないだろ。入学早々、そんなことするのは学級委員くらいだろう。」
「そうだね、コータは面倒事にはあまり首を突っ込まないからね。」
今日も、そんな他愛ない会話をしつつ学校前の坂の下までついた。
「おお!すごいね、ここの桜は。さすが学校名に桜が入るだけのことはある。」
周りはたくさんの桜が咲いていて、花吹雪も舞っている。確かにすごい。
「むしろ、これが学校名の由来なんじゃないのか?」
「お、意外と鋭いねコータ。その通りだよ」
全く鋭くない。普通にわかると思うが?
「ここの学校はかなり古くて、歴史的にも結構有名なんだ。でも、年々生徒数は減る一方でね。」
何故お前がそんないらん知識を持っているんだ。
「言い忘れてたけど、ここは開校当時から桜があったらしいよ。今も御神木として校舎裏にあるらしいから、見に行ってみるといいよ。」
「お前はここの新入生だろう?何故そんなことを知っているんだ?」
「僕、実は結構凝り性というか、物好きでね。ここにも有名なものがないか色々と調べていたんだ。」
あぁ、そうだったな。こいつは小学校の時から調べるのが好きだった。
文学系とかではない。単純に調べるのが好きだったが、勉強に関しては調べようとはしなかった。
本人によると、「勉強のことは頭を使うから」だそうだ。
そもそも調べること自体、頭を使うと思うのだが?
まぁ、そんな調べ好きが知っていてもおかしくはないはずだ。
調べ好きより、知識人の方が合っているかもしれん。
「しかし、この坂・・・結構きついな。」
坂というより山の斜面に近い急な坂の上に学校を作るのもどうかと思うが。
「僕はそれほどきつくもないかな。僕、普段から歩くからね。」
「そうか。お前好きだったな歩くの。」
こいつ、実は家族と一緒によくハイキングや登山に行っいて、脚力はある方らしい。
「いやぁ、どんな部なんだろうね、哲学部。」
「ほんとにな。どんな得体の知れない部活なのやら。」
時間は過ぎて、現在帰りのホームルーム中。
今日は学校の説明等がほとんどで、授業らしい授業はなかった。
担任教師である佐藤が教壇の上で、部活見学について説明しているところだ。
宗平は熱心に話を聞いている。どうやら、部活見学を相当楽しみにしていたようで
足を揺らしながら、今すぐにでも教室を飛び出して行きそうな様子だ。
一方、俺はなんとなく外を眺めながら話を聞いていた。
俺自身はそんなに部活見学を楽しみにはしていなかった。
そんな感じでぼんやりしていたら、ホームルームの終わりを告げるチャイムが鳴った。
学級委員が挨拶をして、ホームルームが終わった。
たくさんの生徒がぞろぞろと出入り口へ向かってく中、
俺は宗平と少し教室に残り、話をしていた。
「で、コータ。やっぱり行くのかい?哲学部。」
「当然だろう。というか、お前も行くんじゃないのか?」
「そりゃ行くよ。でも、コータなら他の部に行くかもしれないと思ってね。」
「そんな、行くあてもないしな。」
「じゃ、行こうよ。その謎の部活、哲学部にさ。」
かくして、俺たちは哲学部に行くことになったのだが・・・。
「いやぁ、まさか哲学部が廃部寸前の形骸化した部活だったとはね。これじゃ、見学もなにもあったもんじゃない。」
哲学部は去年の卒業生しか部員がおらず、今は部員0の部活となっているらしい。
「どうする?宗平。帰るか?」
「うん、でも少し考えてみたんだ。」
「なにを?」
「哲学部は廃部寸前で部長も部員もいない。つまりだよ、僕らが入れば部長は僕らになり、部室は僕らのプライベートスペースに
なるってわけさ!」
なるほど。なかなかいい案を出してきた。だが、
「それは、無理じゃないか?」
「やっぱり、まずいかな・・・。」
「あぁ、そもそも何らかの活動をするために部室があるのであって、私物化は無理だろう。顧問もいるしな。」
「そうだよねぇ・・・。」
唸り声を上げながら宗平は考えている。
初めから無理だと思って言っていたのだから冗談で言ったつもりなんだろう。
「じゃあ、部室だけでも確認していこうよ!もしかしたら、僕らと同じような人がいるかもしれないし。」
俺は少し考えたあと、すぐに答えた。
「それもそうだな。」
「だったら、早めに行かないと。下校時刻までそんなに時間もないしね。」
そんなわけで、俺たちは顧問から部室の場所を聞き、急ぎ足で部室である三階の天文学講義室へ向かった。
宗平によると、昔はかなりの生徒がいてその時に天文学講義室と天文学準備室ができたらしいが、今となっては
単なる空き教室のような存在となっている。
「でも、まだ部室があるってことは部活としては存在してるみたいだね。」
「今年部員が入らないと廃部らしいからな。」
会話をしつつ、部室に到着した。
俺が鍵を開け、教室へ入った。
すると、逆光でまだ顔は見えないが、窓際に人がいた。
制服からして女子生徒のようだ。
肩まで伸び、少し内巻きになった茶髪。
程よく焼けた肌で、明るそうな雰囲気の女子生徒だった。
窓からどこかを見つめている。
そして、その女子生徒は俺たちが入ってきたことに気づいたようで、ゆっくり俺たちの方に振り返った。
しばしの静寂がすぎ、女子生徒が話しかけてきた。
「あの・・・・何か?」
女子生徒は少し遠慮がちに訪ねてきた。
「あぁ、僕たちは哲学部の部室の確認に来ただけで、別にこれといった用はないよ。」
宗平は少し動揺していたようだったが、それを隠すように女子生徒の質問に答えた。
「え?今、なんと?」
「だから、僕たちは哲学部の部室の確認に来たんだよ。」
すると、その言葉を聞いた女子生徒は喜んでいた。すごく。
女子生徒はそれを抑えきれていないようだが、こう言った。
「じゃあ、あなたたちは哲学部の入部希望なんですか?」
俺は少し返事に悩んだが、こう答えた。
「本決まりじゃないが、そんな感じだ。」
「本当にっ?!」
その女子生徒はいきなり俺たちに詰め寄って来た。
「まだ、確実に入部する訳では・・・」
「それでもいいんだよ!いやぁ~良かった。」
「で、君はなんて言う名前なんだい?まだ聞いてなかったけど・・・」
いい感じで宗平が話題を持ってきた。
すると、女子生徒は少し後ろに下がって申し訳なさそうにお辞儀をした。
いきなり詰め寄ってしまったことに対してあやまっているのだろう。
「さっきはごめんね。いきなり近寄って・・で、自己紹介が遅れたね。あたしは北橋礼夏。お礼のれいと夏って書いて『あやか』って
読むんだよ。」
変わった名前の書き方だ。と思っていると、宗平がそれを感じ取ったのかわからないが続けて言った。
「へぇ、随分と珍しい書き方だね。」
「でしょ~、よく言われるよ。変わってるって。で、君たちの名前は?」
「僕は沢口宗平。で、そっちにいるのが安城虹太さ。よろしく、礼夏さん。」
「よっろしく~。」
淡々と会話が進んでいく中、ある疑問が出てきた。
「ところで、お前・・じゃなくて、礼夏さんは何故ここにいるんだ?」
「あぁ、あたしここの部員だからだよ。哲学部の。」
しばしの沈黙・・・・の後に口を開いたのは宗平だった。
「待って、確か哲学部は部員0なんじゃなかったっけ?」
「でも、ちゃんと入部届けも出したよ。」
「それに、俺たちがここへ来た時には鍵もかかっていたぞ。何故、鍵を持ってこなかったんだ?」
礼夏はいきなりこちらを向き、目を光らせて近づいてきた。
「君たちが来た時には鍵が閉まっていたの?」
「あ・・・あぁ。・・・・」
「つまり、さっきまであたしは密室にいたって事になるよね?」
「あぁ・・、まあそうなるな・・・」
近い・・・というか、威圧感とでも言うべきか・・・
「へぇ、学校で密室か・・・面白いじゃないか。」
宗平が話題をさらに立てて来た。何をしてくれる宗平・・。
「だよねっ!ねぇ、この謎、解けるなら解いてみて!是非!」
何故こうなる・・・本来なら部室だけ確認して帰るつもりだったのに・・・。
まぁ、そう簡単には断れなさそうだし、もう、乗るしか方法はない。
「少し考えてみるか・・。」
「本当に?!ありがとう!できることがあれば言ってね!」
まあ、なんて嬉しそうな顔。だが、おそらく俺の顔はそんな顔している訳もないだろう。
「じゃ、早速。何か変わったこととかはなかったか?ここを空けたとか。」
「う~ん・・あ、最初にあたしが来た時は開いてたよ。で、開けてた時に鍵を忘れたことに気づいたんだ。
それで、鍵を取りに行ったら鍵がなかったんだよ。あと、ここにいた時、なんか音がしたよ。カタカタって感じの。」
「それ以外にはなかった?」
「特にはないかな。ずっと外眺めてたから、気づかなかったってのもあるかも。」
何とかならなくもないが、決定的に足りないものがある。
「それと、誰かがここを通らなかったか?」
「ああ、検査か何かのおじさんが来たよ。その時に席を外したんだ。」
やはりか。これで、すべては揃った。
「分かったぞ。」
「本当に!?もう分かったの?すごい!」
「で、どんな謎だったのかな?教えてよコータ。」
「あぁ、これは簡単な謎。というよりかは、礼夏さんが気をつけていれば簡単に気づくことだったんだ。」
そう、これは礼夏さんが外を見ていて気づかなかったから、こんな回りくどいことをすることになった。
普通にここにいれば、気がつくことだったんだ。
俺は扉の前に行き、二人の方を向いた。
「まず、この鍵だ。宗平は知っていると思うが、この学校の鍵はこのように、内側からも外側からも、鍵を使わないとロックはかけら
れない。」
「あぁ、そうだよ。」
「そうだったんだ。知らなかった・・・・」
「だが、礼夏さんは鍵を持っていなかった。つまり、うっかり自分で鍵をかける。なんて失敗はないということになる。」
「そうだけど、他にはどんな方法があるの?この部屋の鍵は、なかったのに?」
「多分、礼夏さんが鍵を取りに行ったのは、俺たちが取りに行った後。この部屋の鍵がないのは当然だ。」
礼夏さんは首をかしげているようだが、宗平はどうやら分かってきたらしい。
俺は教室を出ようとした。
「どこに行くんだい?コータ。」
「二人とも、ついてきてくれ。行きたい場所がある。」
そうして、二人を連れて廊下を歩き、三階まで着いた。
三階の教室を回り、ある教室の前で足を止める。
「ここがどうかしたの?」
「あれを見ろ。」
そう言って、礼夏さんが教室の中をこっそり覗いた。そこには、脚立に乗り、天井の何かを調べているおじさんがいた。
「礼夏さんが鍵を取りに行った時、部室の鍵はなく、俺たちが持っていた。だが、開けられるのはおそらく、俺たちの持っている
鍵の他にもう一つ、マスターキーがある。おそらく、あの人が報知機の点検か何かで鍵を開ける。マスターキーでな。」
「なるほど!あたしはそこに偶然入った訳か。」
「そして、点検が終われば、鍵を閉める。効率を良くするために、一度に何室かの鍵を開け、同じように閉める。普通、鍵をかける音が
するが、礼夏さんはそれに気づかなかった。」
礼夏さんは納得した顔で、手を叩いた。
あぁ、やっと帰れる。そう思っていたのだが・・
「ありがとう!で、入部する?」
「礼夏さん、それはいきなり過ぎないかい?」
確かに、宗平の言うとおりだ。確実に入部するわけではないと先に言ったというのに。
「ごめんね。じゃあ・・・・そうだ!体験入部ってのはどう?」
「体験入部か・・・・いいんじゃない?ダメだったら別なところに行けば良いし。」
そんなのがあったのか。だが、やらん。俺はやらんぞ。
そう思っていたのに・・・
「僕、ここでやってみようかな。体験入部。」
「ホント!じゃ、体験入部の届け出してよ。」
「はい。」
何故か宗平の手の中には紙が二枚・・・まさかと思うが・・・
「待て、宗平。何故届けが二枚あるんだ?」
「僕とコータの届けだよ。」
こいつ、いつの間に俺のを・・・・止めようと思った頃にはもう遅かった。
既に、礼夏さんの手に渡っていた。
あぁ、さらば・・・俺の日常生活・・・・
「じゃ、確かに受け取りました~。明日からよろしくね!」
「こちらこそよろしく。礼夏さん。」
俺は明らかに乗り気ではなかった。
おそらく、顔からしてわかるぐらいに。そのあと、俺たちは教室を出た。
今日は、いろいろあって疲れきってしまったため、そのあとは二人でさっさと家へ帰った。
帰り道ではこんな会話をしていた。
「全く、何故俺の届けまで出したんだ。」
「だって、あんなにコータが真剣に考えるのって僕とあってから何回あったか。あんなコータを引き出せる礼夏さんはすごいと思うよ。
あんな人と学校生活ができるなんて、僕の誇りだよ。それに、あの人なら今のコータを変えられるんじゃないかと思ったんだ。」
宗平がいうのも分からなくはない。俺自身でもあんなに真剣に考えたことは少なかったと思う。
「まぁ、出してしまった以上もう取り消せないしな・・・仕方ない。」
そして、俺の家の近くである商店街で宗平と別れた。
そのあと、無事に帰宅すると姉が帰ってきていた。
「ただいま。」
「お帰り、虹太。どうだった?学校は。」
「初日から散々だった。哲学部とかいうのにいきなり体験入部させられるし、そこの部員に密室を解いてくれとか言われるし。」
「へぇ~まだあったんだ。哲学部って。あたしらの代でなくなったと思ってたのに。」
「あたしらの代?どういう事だ。」
「あれ?言ってなかったっけ?あたし、哲学部にいたの。」
何故姉が哲学部に?そして、一体何があったんだ?姉の代で何をしたんだ?
たくさんの疑問が生じる。そして、姉が哲学部にいた事に対して驚きを隠せなかった。
「なあ、一体哲学部とは何なんだ?そして、何故哲学部に入ったんだ?」
「何故って聞かれるとなぁ・・・なんとなくかな?哲学部は楽しかったよ。」
入部理由が『なんとなく』とは・・・姉らしい。
「そうそう、あんたに言っておくけど」
「なんだ?」
「哲学部にミステリーは付き物だからね。そこんとこわきまえとかないと、大変だよ。」
「ミステリーが付き物とはどういう事だ?」
「そこは、自分で考えなさい。じゃ。」
そう言い残し、姉はリビングを出て行った。
ミステリーが付き物とは?
それを知っていないと、何故大変なのか?
『また、面倒なことになったなぁ。』そう思いながら、読みかけの本を手に取った。
後書き
初めまして。奏音優多です。
米澤穂信さんの古典部シリーズ読んで、何故か小説を書きたくなり、
この作品を書きました。
なので、多少似ている部分もあると思いますが、ご了承願います。
初投稿なので、下手だと思いますが、何卒よろしくお願いします。
今回は手短ですがこの辺で失礼します。