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異世界に行きたい男の苦悩②  作者: シラ猫


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異世界に行きたい男②

なんか好評だったので、続きを書いてみました。


☆追記

短編にしたかったのに、連載になってしまった。

投稿したら修正出来ないんですね。

 前回色々試したが、異世界に行けなかった。


 しかし、

 俺の異世界に行きたい欲は衰えていない。

 むしろ溢れている。


 今回は更に本気だ。


 仕事を辞めた。

 学生時代に勉強頑張ってたから、それなりの大きい会社に入れたが、アッサリ辞めた。

 未練はない。


 上司に「異世界に行きたいので仕事辞めます」って言ったら、いつもガミガミと口うるさい男が、ぎょっとした表情で十秒くらい口を開けて黙ってたのがオモロかった。記念に写真撮りたい。


 現代社会に未練を残さないように、両親に挨拶した。


 母は泣いてた。

 悲しみの涙に見えなかったけど。

 解せぬ。


 父は玄関を出る時に「頑張れよ」と言ってくれた。

 5、6歳くらい老けたように見えたが気のせいだろう。


 久しぶりに実家に帰省した妹には「縁を切るからね」と暴言を吐かれた。

 幼い頃はお兄ちゃんっ子だったのに……。

 異世界転移狙いで、学校に忍び込んで捕まった時に引き取りの保護者として呼んだのを恨んでいるのかも。警察から注意受けてたもんな。


 スッキリしない別れだったが、挨拶は済ませた。


 後は異世界に行くだけ。


 一緒に行くはずだったラノベ好きの友人から断りの連絡がきた。

 理由は知らんが、その程度の思いで異世界に行けるもんか。

 半端もんは不要だ。


 俺が異世界に行けたら、震えるほど泣いて悔しがるがいいさ。


 今回の挑戦は『きさらぎ駅』を目指す。


 例によって正解が分からないから色々と試して行くしかない。


 取り敢えず、東京区内を周回する在来線に乗ってみた。山手線と呼ばれるやつ。

 駄目だった。


 朝から晩まで乗って三日目に気付いた。

 異世界に行けるのは俺とは限らない。

 都内はライバル多くね?


 良く見たら異世界に行きたそうな(ツラ)したら奴がちらほらいるな。絶対にあっちも俺の事を意識してるわ。知らんけど。


 油断してた。

 ライバルが少ない車両に移動しないと。


 都内は駄目だ、人が多すぎる。


 都内は諦めて、東北の宮城県くらいを目的として新幹線に乗り込んだ。


 良く考えたらトンネル抜けたら異世界の可能性もある。

 テンションが上がるぜ。


 また油断した。

 駅弁が旨すぎる。

 これでは集中出来ない。

 奮発して高いの買ったのは失敗だったか。


 急いで駅弁食べて異世界行きを願ったが駄目だった。


 新幹線が停車駅で止まった時に気合いを入れ直す。


 新たな試練がきた。

 めっちゃ美人が隣に座った。


 普段は100%の確率でおっさんなのに、こんな時に限って美人とは神の采配なのか?


 もうじきトンネルに入るから集中せなあかんのに、集中しきれない。


 理由はわかる隣の美人。

 時々めっちゃ良い匂いが漂ってくる。

 今は異性を意識したくないのに。


 なんやねん。邪魔するなよ。

 言えんけど。


 トンネル出た瞬間、失敗を悟った。


 集中が影響するか知らないが、万全ではなかった。


 隣の美人は悪くない。

 それは間違いない。


 けど、

 誰かと代わってくれないかな。


 おっさんでええねん、おっさんで!

 おばさんでもええけど。

 小さい子供は勘弁やけどな。


 二回目のトンネルトライも失敗に終わり、次の停車駅で降り、近くのホテルに泊まってふて寝した。


 いっぱい寝たからか、頭が冴える。

 なんか行ける気がする。


 のどかな雰囲気が俺を穏やかにさせる。

 電車が1時間に1本とか関係ない。

 今の俺は余裕で待てる。


 駅には俺ともう一人。

 二両編成の列車がまたいい味だしてる。

 地方ローカルの電車なんて、こんなもんかと思うかもしれんが、異世界に行きたい欲で溢れてる俺には丁度いい。むしろこれが良い。


 ライバルが入った車両の隣に入る。

 入れ替わるように電車を降りたお婆ちゃんの穏やかな顔を見たら、今回は行ける気がした。


 車内は俺を含めて三人。

 イケル!

 今回はマジでチャンスだ。


 背負ってたリュックを膝の上に置いて座る。


 中にはペットボトルの水2本、カップ麺2個、袋に一杯入った割り箸、着替え2日分、雨カッパを1つ、手鏡を二つ、後は小さい鍋とサバイバル本と棒状の火打ち石だ。


 これだけあれば異世界の街じゃなくて森に転移しても直ぐに困らないだろう。正直に告白すると、あれこれ考えて用意する時がめっちゃ楽しかった。時間が溶けるのが早いもんな。


 手鏡は換金用。あちらの金が無いからな。

 現代の手鏡の完成度を見て、異世界人が驚く顔を想像するとにやけてしまう。


 本来ならサバイバルナイフを持って行きたいが、向こうに行く前に職務質問されたら困る。銃刀法違反になる訳にはいかん。


 世界の仕組みが俺の異世界行きを邪魔してるように思える。


 もしかして政府が意図的にやってるのか?

 気軽に異世界行けるようになったら人口減で税収減るもんな。


 電車がゆっくり動き出す。

 いい、めっちゃええ。

 このまま異世界に行きそうな感じする。


 電車が停車駅に止まった時に違和感がした。

 ドア開かないんですけど?


 良く見たら開閉用のボタンがある。

 なにこれ?

 めっちゃ押したいんですけど。


 降りるつもりは更々無いがボタンは押したい。


 くっ――、集中出来ない。

 電車に乗って異世界転移めっちゃムズい。

 みんなどうやってんの?


 アカン、俺にはこの方法と相性が悪すぎる。

 様々なトラップで集中が削られる。


 寝て起きたら異世界にいる方法もあるらしいが、興奮するから寝るなんか無理や。


 ホテルに戻って、瞑想して考えた。


 思い付いた。

 寝台列車があるやん。

 個室はベッドもあるしいける。


 後は寝る手段。

 お酒の力を借りる事も出来るが万が一に寝れない場合もあるかもしれない。


 仕方ない、睡眠薬を使うか。

 医師に正直に話したら処方してもらえないので、不眠症と偽って薬をゲットした。


 準備は万全。

 次で決める!


 切符を買って、意気揚々と電車に乗り込んだ。


 軽く飯を食べ、睡眠薬を飲む。

 ベッドに横になってたら、いつの間にか寝ていた。


 東京駅に着くアナウンスで起きた。

 やはり異世界に行けなかった。

 うん、予想はしてたけどね。


 人生って、悪い方の予感が的中する事が多いよね?

 天国行く為に苦行させたいのかな?


 俺は天国よりも異世界に行きたいんだ。

 なぜ神は理解してくれんのだ。


 仕方ないから実家に戻る。

 両親と何ともいえない気まずい再会をしたが、まあそれはいい。両親も無事を喜んでくれたしな。


 ラノベ好きの友人に帰宅メールしたら、笑とだけ書かれたの1文字の返信がきた。

 酷くないか?


 アイツはいつか懲らしめてやる。


 俺は本棚に収納してるラノベを一通り読み返す事にした。千冊くらいあるけど頑張る。


 もしかして見落としてる事があるかもしれないからな。


 今回は駄目だったが、諦めん。

 いつか異世界に行ってやるからな。


(完)


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