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07.始動

『おぉ…我が親友(とも)よ。』


 ここ数日は、親友になった覚えもない官僚からのこんな言葉ばかりが耳に入る。

 その理由は明白。


「やあ、同志。今日はどうされたかな?」

『またまた…、噂になってますぞ。』

「……」


 プーティーンが秘密警察司令部に、

 軍部縮小の叛意あり、と報告したことで、

 その噂は広まり、金を目当てにこうして人が集まり始めていた。


 彼が報告した内容は具体的な年収増やポストの確約、

 粛清されるには相応しい内容だった一方で、

 軍部や秘密警察、それに政治家や学者。


 国家上層部に居ながらも、昇進できずに歯噛みしていた連中は、

 漏れ聞いたこの話を好機と捉え、食らいつく算段を見せている。


「では君も、ご賛同頂けるという理解でよろしいのかな?」

『はい、もちろんです。ですから何卒…!!』

「分かった分かった、では…わかるな?」

『はい、叛意は何もなかった。』

「あぁ、そうだ。君はそう報告するだけで良い。」


 きっと彼は無事に、『叛意は無く、そのような交渉は無かった』と報告するだろう。

 彼は彼自身の意思で、私の改革を推進した以上、

 それを裏切れば、未来はない。


「汚い社会だなぁ、プーティーン君。」

『閣下がそれを仰るのは…。』

「むぅ…。」


 叛意ありの情報を得た上層部は、粛清すべきかの内偵を部下に命じ、

 金に惑わされ、首輪を付けられた部下が報告するのは、およそ真実とは遠い内容。


 喜ぶと良いぞ、軍や秘密警察の上層部。その部下たちは忠犬だ。

 ただし彼らが尻尾を振る先は、私なのだがな。


「さっ、プーティーン君。次のステップに進むとしよう。」

『はっ。』


 十や二十では足りぬ程、沢山できた親友とやらに愛想を振りまきつつ、

 私は次の目標に向け、準備を進めるのだった。


……



―1985年11月20日 S国・ジュネーベ

 ゴール・B・プラン決議まで、あと3か月


『ゴール・B・チョーフ書記長。

 エドワルナゼ殿に打診頂いた内容は本気で?』

「あぁ、ローガン大統領。それも限りなく速やかに。」

『……』

君たち(西側諸国)にとってはとても魅力的な提案だろう?

 軍縮も行う。何をそんなに躊躇するのかね?」


 ジュネーベ会談。

 私の知る史実では、この会談は方向性が定まらず、

 互いの認識を確認するに留まった、あまり意味の無い会談だった。


 だがゴール・B・プランを掲げた今、冷戦の早期終結は必須で、

 軍縮に国際金融市場への参入。


 冷戦の終結に不可欠な内容を提示したにも関わらず、

 A国首脳のローガン大統領は、懐疑的な姿勢を示した。


「君たちにとっても、冷戦の継続は良くないものだ。」

『……』


 この当時、マスコミの印象操作を続けているものの、

 30年余りになる冷戦の負担は我が国ソジェートだけではなく、

 A国にも同じレベルの打撃を与えていた。


 つまり、A国も冷戦を終わらせたい。

 一方で、その契機となるきっかけが訪れぬまま、ズルズルとこの冷戦を続けていた。


 だがこの不毛な戦争を終わらせる一手を提示したにも関わらず、

 ローガン大統領は慎重な様子。


 理解は出来る。

 ソジェートのような社会主義国家は、資本主義国家、A国の敵。

 そう散々喧伝したなかで、ソジェートの言い分を真向から信じるだけの、信用が無いのだろう。


「ローガン大統領。これは貴国にとっても、とても有意義な提案なのだ。」

『具体的には…?』

「つまり、社会主義国家が国際経済に参入するということは…。」


 会談予定時間の何倍も過ぎ、具体的な策を彼に提示していく。


『…なるほど、それは確かに我が国(A国)にとっても非常に有益だ。』

「あぁ、だがその実効性は難しい。」

『…良いだろう、ではそのプランとやらを…見せてみろ。』

「任せたまえ。そしてその暁には…。」

『あぁ、冷戦の終結は互いにとって、メリットしか無い。』


 ゴール・B・プランが掲げる経済モデルには、

 A国にとって重要、そして不可欠なメリットが存在する。


 その点を丁寧に説明した結果、

 その如何によっては、冷戦を早期終結させる用意をする。


『では、内々ではあるが…我が神に誓って、約束を。』

「あぁ、今日は実にいい日だ。」


 ゴール・B・プランによって起こる、一時的な軍縮による軍事的均衡の崩れ。

 本来この均衡は、A国が攻め入るチャンスではあるが…、

 ローガン大統領と結んだ密約は、それを見逃すことを約束する文章。


 会談も終わり、残った私は独り言を呟く。

 だが、この場に居るのは私と、かつての私(プーティーン)で。


「さぁ、ゴール・B・プランを…成すぞ、プーティーン君。」

『はっ。』

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