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学園対抗戦開幕

 ついに、学園対抗戦の日がやってきた。

 

 王都の中央闘技場は、各地から集まった観客で埋め尽くされていた。


「すごい人だね……」


 エミリアが緊張した面持ちで呟く。


「大丈夫。練習通りにやれば問題ない」


 俺は仲間たちを励ました。

 

 とはいえ、内心では俺も少し緊張していた。これだけの大舞台は、前世でも経験がない。


「見ろよ、あれ」


 カイルが指差した先には、豪華な装飾が施された特別観覧席があった。


「王族の方々も観戦されるのか……」


 リナが息を呑む。

 

 確かに、玉座には国王陛下が座っており、その隣には王妃と王子、王女たちの姿も見える。


「第一王子と第三王子もいるな」


 ノアが観察眼鋭く言った。

 

 アレクサンダーは第二王子。つまり、王位継承権を持つ3人の王子が全員揃っているということだ。


「参加校の入場です!」


 司会の声が響き渡る。

 

 次々と各校のチームが入場していく。


「帝都魔法学園! 前回大会優勝の最強チーム!」


 歓声が上がる中、白銀の制服に身を包んだ5人が颯爽と歩いてくる。

 

 全員から溢れる魔力は、確かに圧倒的だった。


「北方騎士学園! 肉弾戦のスペシャリスト集団!」


 筋骨隆々とした巨漢たちが、重厚な足取りで進む。


「東方術式学園! 古代魔法の継承者たち!」


 神秘的な雰囲気を纏った一団が、静かに入場する。


 そして……


「王立魔法学園、Sクラスチーム!」


 ひときわ大きな歓声が上がった。

 

 アレクサンダーを先頭に、ソフィアを含む5人が入場する。彼らの堂々とした態度は、まさにエリートそのものだった。


「最後に……王立魔法学園、Fクラスチーム」


 司会の声が、明らかにトーンダウンした。

 

 観客席からは失笑とざわめきが聞こえてくる。


「Fクラス? 落ちこぼれが出るのか?」

「恥さらしもいいところだな」

「すぐに負けるだろう」


 心ない言葉が飛び交う中、俺たちは胸を張って入場した。


「気にするな。結果で黙らせればいい」


 俺の言葉に、仲間たちが頷く。


   ◆


 開会式が終わり、トーナメントの組み合わせが発表された。


「俺たちの初戦の相手は……西方商業学園か」


 リナが対戦表を確認する。


「商業学園? 戦闘は得意じゃなさそうだけど」


 エミリアが首を傾げる。


「油断は禁物だ。どんな相手でも全力で戦う」


 俺は気を引き締めた。

 

 実際、『解析』で対戦相手を観察すると、意外な実力を秘めていることが分かった。


「第一試合、王立魔法学園Fクラス対西方商業学園!」


 ついに俺たちの番が来た。

 

 闘技場の中央に設けられた戦闘フィールドに上がると、改めてその広さに圧倒される。


「ルールを説明します」


 審判が前に出た。


「5対5のチーム戦。相手チームを全員戦闘不能にするか、降参させれば勝利。殺傷は禁止。制限時間は30分」


 シンプルなルールだ。


「それでは、両チーム、戦闘開始位置へ」


 俺たちは所定の位置につく。

 

 向かい側には、商人風の服装をした5人が並んでいた。


「まさかFクラスと当たるとはな」


 相手チームのリーダーらしき青年が、にやりと笑った。


「楽勝だと思ったが……君たち、少し違うようだね」


「何?」


「商人の勘さ。君たちからは、隠された何かを感じる」


 なかなか鋭い。

 

 さすが商業学園、観察眼は確かなようだ。


「でも、勝つのは俺たちだ」


 青年が指を鳴らすと、彼のチームメイトたちが素早く陣形を組んだ。


「戦闘、開始!」


 審判の合図と同時に、相手チームが動いた。


「『幻惑の霧』!」


 相手の一人が杖を振ると、濃い霧が戦闘フィールドを覆い始めた。


「視界が……!」


 エミリアが慌てる。


「落ち着いて。リナ、敵の配置は?」


「最後に見た位置なら覚えてるわ。でも、動かれたら……」


「任せて」


 俺は『解析』を発動し、霧の中でも敵の位置を正確に把握した。


「カイル、2時の方向に一人。ノア、君の左側に二人」


「了解!」


 俺の指示で、仲間たちが的確に動く。


「『身体強化』!」


 カイルが霧を突き破って敵に肉薄した。


「なっ!? なぜ位置が!?」


 驚く敵を、カイルの拳が捉える。

 

 一撃で相手を戦闘不能に追い込んだ。


「『幻影』!」


 ノアが分身を作り、敵を撹乱する。


「くそっ! どれが本物だ!」


 混乱する敵に、エミリアが追撃を加える。


「『火球』!」


 正確な一撃が、もう一人の敵を倒した。


「まさか……Fクラスがこんなに強いなんて」


 相手リーダーが驚愕の表情を浮かべる。


「俺たちを甘く見たのが間違いだったな」


 俺は冷静に告げた。


「リナ、『幻惑の檻』の準備を」


「分かったわ!」


 リナが敵の動きを予測し、ノアと連携して敵を誘導する。

 

 そして、追い込まれた敵に、カイルとエミリアが同時攻撃を仕掛ける。


「『爆炎波』!」


 俺たちが開発した連携技が炸裂し、残る敵を一掃した。


「勝負あり! 勝者、王立魔法学園Fクラス!」


 審判の宣言に、会場が静まり返った。

 

 まさかFクラスが勝つとは、誰も予想していなかったのだろう。


「やった! 勝った!」


 エミリアが飛び跳ねて喜ぶ。


「まだ一回戦だ。気を抜くな」


 俺は冷静を装ったが、内心では安堵していた。

 

 最初の一歩を、無事に踏み出せた。


   ◆


 控え室に戻ると、他の参加者たちの視線が変わっていた。

 

 馬鹿にしたような目ではなく、警戒の色が混じっている。


「見たか、俺たちの実力を!」


 カイルが興奮気味に言う。


「でも、相手も油断してたからね」


 ノアが冷静に分析する。


「次からは本気で来るはず」


「その通り。だから、俺たちも更に工夫が必要だ」


 俺は仲間たちを見回した。


「次の相手は……南方魔導学園か」


 リナが対戦表を確認する。


「魔法特化の学校ね。火力では向こうが上かも」


 確かに、純粋な魔法の威力では劣るだろう。

 

 だが、俺たちには連携という武器がある。


「作戦を練ろう。次も必ず勝つ」


 その時、控え室のドアが開いた。


「失礼します」


 入ってきたのは、意外な人物だった。

 

 第一王子、エドワード殿下。アレクサンダーの兄だ。


「殿下!?」


 俺たちは慌てて膝をつく。


「堅苦しいのは無しだ。立ってくれ」


 エドワード殿下は、柔和な笑みを浮かべた。


「君たちの戦いぶり、見事だった」


「あ、ありがとうございます」


「特に、レイン・エヴァンス」


 殿下が俺を見つめる。


「君の的確な指示と、仲間を信じる姿勢。素晴らしかった」


「恐れ入ります」


「Fクラスだからと侮る者が多いが、真の強さは肩書きではないことを、君たちが証明してくれた」


 エドワード殿下の言葉に、仲間たちの顔が輝く。


「期待している。最後まで、君たちらしく戦ってくれ」


 そう言い残して、殿下は去っていった。


「すげえ……第一王子に褒められた」


 カイルが呆然と呟く。


「これで俺たち、もう落ちこぼれじゃない」


 エミリアが嬉しそうに言った。


「いや、まだだ」


 俺は首を振った。


「本当の評価は、全てが終わってから。今は次の試合に集中しよう」


「そうだな!」


 皆が気合を入れ直す。


   ◆


 二回戦。南方魔導学園との戦い。


「さすがに強いな」


 俺は相手の魔法攻撃を避けながら呟いた。

 

 火球、氷槍、雷撃……様々な属性魔法が雨のように降り注ぐ。


「こっちも負けてられない!」


 エミリアが応戦するが、相手の火力に押され気味だ。


「レイン、どうする!?」


 カイルが叫ぶ。

 

 このままでは、魔法の撃ち合いで消耗してしまう。


(仕方ない、少し本気を出すか)


 俺は『解析』の力を更に解放した。


「皆、俺の指示通りに動いて!」


 相手の魔法の軌道、詠唱のタイミング、魔力の流れ……全てを瞬時に解析する。


「カイル、3秒後に左へ跳べ! エミリア、今の相手の詠唱は偽物だ、右を警戒して!」


 俺の予測は全て的中し、相手の攻撃を完璧に回避していく。


「なぜだ!? なぜ全て避けられる!?」


 相手チームが動揺し始める。


「今だ! 『幻炎舞』!」


 ノアとエミリアの連携技が発動し、炎を纏った分身が敵陣に突っ込む。


「うわあ!」


 混乱した敵に、カイルが突撃する。


「もらった!」


 一人、また一人と敵を倒していく。

 

 そして……


「勝負あり! 勝者、王立魔法学園Fクラス!」


 二回戦も、俺たちの勝利だった。


「信じられない……Fクラスが二回戦を突破するなんて」


 観客席がざわめく。

 

 もはや、誰も俺たちを落ちこぼれとは呼ばなかった。


「やった! 準々決勝進出だ!」


 エミリアが喜びを爆発させる。


「レイン、お前の指示、神がかってたぞ!」


 カイルも興奮している。


「みんなが俺を信じて動いてくれたからだ」


 俺は謙遜したが、内心では手応えを感じていた。

 

 『解析』の力を使えば、もっと上も狙える。


「次の相手は……」


 リナが対戦表を見て、顔を曇らせた。


「どうした?」


「北方騎士学園。優勝候補の一角よ」


 確かに、強敵だ。

 

 魔法ではなく肉弾戦を得意とする彼らは、カイルと同じタイプ。しかも、向こうの方が経験も実力も上だろう。


「でも、やるしかない」


 ノアが決意を込めて言った。


「ここまで来たんだ。最後まで戦い抜こう」


「その通りだ」


 俺は仲間たちを見回した。


「俺たちは、もうあの日の落ちこぼれじゃない。Fクラスの誇りを持って、最後まで戦おう」


「おお!」


 皆の士気は最高潮に達していた。

 

 学園対抗戦は、まだ始まったばかり。

 

 俺たちの挑戦は、続く。

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