第7話 学院入学。
念願かなって、王立学院に入学です!!
制服もチェックのスカートがかわいい!
ヒルデもついてきてくれて、控室で待っていてくれます。退屈じゃない?
「仕事なので。」
と、クールに答えました。さすがです。
ウィルマー様との約束で、お友達は作らない、事になっているので、ほとんどヒルデさんといます。お昼ご飯も控室。お昼休みは図書館。本がたくさん!!!嬉しいです。
この幸せも、ワルス伯爵家の皆様のおかげです!!!
もちろん、家に帰ってからは、お父様の事務所に詰めて帳簿の検算をしたり、文書の作成のお手伝いをしたり、お手紙の仕分けをしたりしております。
学院は成績順にクラスわけなので、子爵家の私もあまり目立ちません。
まあ、、、いろいろ言ってくる子はいますけど。
それに、、日々を送っている間に、知り合いは出来ますよね?
「あなた、、、ゲルト子爵家って、どこにあるのよ?」
「南東部の片田舎ですね。なんにもない田舎です。」
「で、しょうね、、、それで、ワルス伯爵家のウィルマー様の婚約者ですって?」
・・・・・御存じなんですね?
「あの、、、豚みたいな人でしょ?婚約者が決まらなかったから、白羽の矢が立った、のね?」
「そうなんです!子豚ちゃんみたいでかわいいですよね?イルデ様も、あの方の可愛らしさにお気づきでしたか?うふふっ、、」
「・・・・・」
「ほっぺぷくぷくで、おててむちむちで、お腹ポッコリで、、、かわいいですよね?」
「・・・・・」
「お優しい方なんですよ?何をやっても良いとおっしゃってくださって。学院に入る前は、お父様とお母様と領に行ってくつろいでまいりましたの。」
「・・・・・」
「使用人の皆様もみなお優しくて、、、伯爵家の家風、というか、人柄がいいのがにじみ出ておりますよね?私、学院にも通わせて頂いて、、、幸せです!!」
ここまで言うと、控えていたヒルデさんが吹いた。なぜ?
イルデ様は、、狐っぽい。銀ぎつね?気高さが。見たことないけど。この方は、公爵家のお嬢さまらしい。ヒルデさんに聞いた。
私と同じAクラス。同級生ですね。そんなことでもないと、こんなふうに親しく公爵ご令嬢にお声掛けしていただける機会はなさそうですよね。
「あ、、、、あ、そうなのね、、、」
「はい!」
「ま、、まあ、、、お幸せそうで何よりですわ。」
「はい!」
イルデ様は銀色の縦ロールの髪を揺らして、去っていきました。これも、、、社交の一環なのでしょうか?
イルデ様は何かと私に気を使って下さり、宿題を一緒にやったり、放課後に流行のカフェにも誘って下さいました。お茶会にもお声がけくださいましたが、まだ子爵家の肩書の私には敷居が高すぎるので、ご遠慮しました。
「まあ、じゃあ、伯爵家の奥様になったら、また誘うわね。」
日頃の感謝を込めて、銀ぎつねの刺繡をしたハンカチを贈りましたら、喜んでくださいました。こちらこそ、、、ありがとうございます。
ヒルデさんに聞いたら、学院には公然と家門カーストというものがあるらしく、、、高位貴族の方にいじめを受けたりするそうです。なにせ、田舎の子爵位ですから。私がのんびりと学院生活を送れているのは、どうも、イルデ様の力だったみたいですね、、、、
*****
夏休みはお父様とお母様と、領地に出掛けておりました。
初夏前の、羊の毛刈りを見て見たかったのですが、学院が始まったので間に合いませんでした。残念です。
「まあ、来年も再来年もずっとあるさ。」
しょげている私に、師匠がそう言って慰めてくださいました。
来年は見たいですね。専用の大きなはさみで、ジャガイモの皮をむくように刈り込んでいくらしいです。見たいですよね?見たくなりますよね??
もちろん、遊んでいるばかりではなく、仕事もしました。
師匠の仕事の補佐はもちろんですが、、、、
教会の作業所で、皆様とボタン付けをしたり、子供たちとクッキーを焼いたり。これは、お母様と。
お母様はもともと公爵家の御令嬢だったそうですが、白いエプロンを付けて、ボタン付けも、クッキーを焼くのも、楽しそうにされております。尊敬します。
「結婚式はしないって、ウィルが言ってるんだけど、、、クリスティーはそれで納得しているって、、、本当なの?いいの?」
領地から帰る前日の夕食で、お母様が言いにくそうに切り出した。
今日のメインはラムのステーキ。とても柔らかい!、、、羊、食べるんですね、、、
10月には私の誕生日ですもんね、、、
「はい。伺っております。私の実家から家族が王都まで来ることを考えますと、、、無駄じゃないかと。旅費が。ウィルマー様はいろいろ私のことを気遣って、、、そうおっしゃって下さったのかと。優しい方ですよね?」
「・・・・・」
「あ、あら、、、旅費ぐらい、ねえ、あなた?」
「・・・まあ、二人で決めたことならいいんじゃないか?クリスティーもまだ学生だし。あいつに爵位を譲るときにでも、盛大に披露宴をすればよかろう?」
「あら、まあ!!それは素敵ね!!実はね、私が結婚式の時に着たドレスを着てほしいの。娘が出来たら着てもらおうと思って、大事に取ってあったの。おさがりみたいで、嫌かしら?」
「いえ、、、、とても嬉しいです。」
実家でも大事に育てられてきたと思う。母の教育は厳しかったが。
貧乏でも、勉強や教養は持てる財産だから、と。
ここに来て、、、お義父様とお義母様と、、こんなに大事にしてもらえて、、、本当にありがたいです。
*****
10月にクリスティーナの誕生日が来るので、早々に父が婚姻の申請書を出していたらしく、書類が届いた。あとは二人分の署名をすると、この婚姻は成立する。
夕食後に、応接間にクリスティーナを呼んで、書類にサインさせる。
久々に見た彼女は、やや日に焼けて、健康的になったように見える。
来たばかりのころは、12.3歳位に見えた。がりがりだったから。
来た早々から、父上や母上にべったりで、、、、媚を売っているんだろうか?
まあ、、、、どうでもいいか、、、、あと、三年だ。
クリスティーナのサインを確認して、自分も書き込むと、、、、はあああ、、、既婚者か、、、何かと便利なこともある、と、殿下に励まされたが、、、
指輪ぐらいは渡したほうが良いと言われていたので、準備した。出入りの商人に言ったら、サイズも聞かれなかったから、、、買い放題買っているのか?こちらの出費にはなっていないようだから、ツケで父上のほうに請求が上がっているのか?
・・・・結婚したら、、、ちゃんとしないとな。そこんとこ。
「これで、婚姻、成立です。これを、、結婚指輪だ。今日から、ワルス家の一員になるから、、、僕は社交にはほとんど出ないから、君が出たいなら好きにすればいい。前にも言ったが、特定の人物と親しくならないように。後々、面倒だからな。質問は?」
箱に入った指輪を箱ごと渡す。
「結婚した、ということは、、、お部屋は?どうしますか?」
「は?」
「え、、、と、、、夫婦の部屋とかに?」
「は?ああ、、、、、、、、、変わらず、今の部屋を使ってくれ。それから、これから買い物は、僕の名前でツケにしてくれ。毎月現金で渡している分では足りないか?」
「いえ。充分です。ありがとうございます。」
話すこともなくなったから、退室するよう言うと、お辞儀して下がって行った。
「ベルノ、この書類を明日にでも王城に届けておいて。」
「若、、、本当によろしかったので?式もなさらず、、、クリスティーナ様のお立場を考えますと、、、、、」
「ああ、構わない。どうせこれは、白い結婚だ。」
「・・・・・」