表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/24

第6話 ハンカチ。

領地を一週間かけて見て回った。


羊がたくさんいる牧場。

作業所。

羊毛加工所。

そして、製糸場。

それから、織物工場。

最後に縫製工場。


生産から加工、商品化、販売ルートまで、、、師匠は何一つ隠さず見せてくれた。


「あ、、あの、、こんなに何もかも見せて頂いて、、、、よろしいので?」

「え?何が?お前なら、うちの帳簿を見て、もう見当が付いていただろう。」

「まあ、そうですが。まあ、、、真似しようにも、真似のしようがありませんが。」

「あはは。お前は正直だな。」


よくまあ、30年間でここまで整備したなあ、、、と、改めて感心する。

羊関係は公社方式で、領民を雇用する形。

もちろん、個人的に羊を飼っている領民からは、羊毛を買い上げしている。


領民はここで働いたり、自分の耕作地で作物を作ったり、個人経営の店があったり、、、


教会への寄付金が多かったのも腑に落ちた。


教会付属の学校は整備されており、孤児院や独居老人用や母子家庭用の長屋もある。まだ働けるお年寄りや母子家庭のお母さんは、教会で仕事をあっせんしてくれる仕組み。

縫製工場から、ボタン付けの内職とかがあるようだ。


ただ、寄付して食べさせるだけじゃない。ちゃんと仕事させる。厳しいようだが、個人の尊厳は守られるような気がするなあ、、、、


「この制度は、妻が考えてくれたんだ。」

「・・・・・」


ちょっと意外。


「食べさせていただく、とか、生かさせていただく、とか、卑屈にならないような制度にしなくちゃだめだと言われてな、、、、」

「・・・・・」


惚れるわ、、、、お母様、、、、




:::::


寝る前に読んでいた学院の教科書を読みつくしてしまった。


領のお屋敷の書庫にある本にも手を出す。


師匠が、、、、この事業に大金を突っ込む前の試行錯誤が見て取れる。

ありとあらゆる事業の勉強をして、、、羊に絞ったんだなあ、、、どんな葛藤があっただろう、、、


いやあ、、、私の父も何も手を打たなかったわけではないけど、、、耕作地は限られ、、、例えばよ?あの規模で牛や羊を飼おうとしたら、小麦を作る耕地がない。危険だ。

じゃあ、小規模にしたら?商業ベースに乗らないなあ、、、


特産物?鉱物?、、、、

ああ、やっぱり、師匠に教えてもらったアカデミアの産業開発講座に行ってみよう、、、と、心に誓う。


羊の追い込みの手伝いをしたり、牧羊犬の手入れをしたり、一緒に遊んだり、お父様とお母様とハイキングに行ったり、、、楽しく過ごした。


なんと!3週間も滞在した。学院が始まらなかったら、そのまま居続けたかも!!



お世話になった領地の屋敷の皆さんに、ハンカチに刺繍をしたものをお贈りした。

今までは木綿のハンカチに、木綿糸だったけど、ここにはそういったものはなく、絹のハンカチに、絹の刺繍糸、、、、光沢が違うわね!慣れるまでは緊張した。


牧場管理のビートさんにはボーダーコリー。

侍女頭のダナさんにはスピッツ。

領のお屋敷の執事のアントンさんはダックス。

獣医のフランクさんはテリア。

・・・・・・


・・・・本当に、犬系の人が多いなあ、、、



「クリスティーナ様は、、、まめでございますねえ、、、」


いつも一緒にいてくれるヒルデさんに呆れられる。


「あら、ヒルデさんの分もあるのよ?いつもありがとう。」


ヒルデさんは黒猫。眼は綺麗なグリーン。我ながら良く出来た。


「・・・あ、、、ありがとうございます、、、」




帰りの馬車の中で、皆様のお話を聞いたらしいお母様が、そわそわしている。


「あら、、お母様の分ももちろんございますよ。」


お母様は金髪のユニコーン。金色の角には蔓バラが巻き付いて、綺麗な赤いバラを咲かせている。渾身の作!!


「あらあ!!!嬉しい!!」


喜んでいただいて、幸いです。


「お父様には、こちらです。」


流石に、、、伯爵様に子豚ちゃんというわけにもいかず、、、ゴールデンレトリバー。首に巻いたリボンはお母様とお揃いの赤。


いい具合に似ています。


「ああ、ありがとう。」


ほっこり、ですねえ、、、、



*****


今日は、とある伯爵家の嫡男の代わりに、少し風変わりな舞踏会に出る。

招待状は本物。髪色は、その息子に合わせて銀髪。仮面付きなので、何をしてもかまわないらしい、、、、どんなんだ?


隅っこでちびちびカクテルを飲んでいると、桃色の髪の女の子に声を掛けられる。わかりやすい髪色だね?バレバレじゃない??

「私と一曲踊っていただけません?」

何でもありなあ、、、まあ、いいか、、、手を取って、腰を引き寄せ、ホールに出る。

一曲踊って、、、バルコニーに誘われる。


「私、、、婚約したんですけど、、、その、、婚約者が私を放りっぱなしなんですの。

外に女の人がいるみたいで、、、、なので私も、、あの、、、良いかなあ、って、、、」

「・・・・・」


何が?ですか?などと、野暮なことは聞かない。軽く指先に口づける。


「じゃあ、私たちも、、行きましょうか?」







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ