第21話 あと4か月。
「旦那様、お話がございます。」
いつになく緊張した顔でクリスティーナが切り出したから、、、少し、引く。
何を言いだすつもりなのか、、、、冷めかかった紅茶を飲んで落ち着こうと努める。
「わ、、、私とすぐにでも、、、離婚してくださいませ!」
なぜそうなる?
「・・・・なぜだ?」
「だ、、、旦那様以外の殿方と、、、その、、、不貞行為をいたしました。」
飲みかけた紅茶を思わず吹き出す、、、、ナニ言ってんのこの子??
眼鏡がずれ落ちそうになる。
珍しく本宅で一緒にお茶をしていた僕の両親も固まってしまっている。
「お酒を飲んでいたとはいえ、、、、あの、、、他の殿方と、、、」
何があったの?昨日?え?いつ?
「・・・君が、そう言うなら、そうなんだろう、、、、そいつとここを出ていくのか?」
「・・・・はい。西部に行かないかと、、、一緒に、、、」
「・・・・・」
「・・・・・」
「ま、、、クリスティー?何があったの?怒らないから言ってごらんなさい?」
「お、、、お母様、、、、すみません、、、私その方と、旦那様ともしていないことを、、、あの、、、、。」
「え?」
な、、、なにが??なにがあったわけ??そんな、、、
「き、、、、キスをしてしまいました。もう、、、ここにはいられません。すみません、、、その方と西部に行くつもりです。」
・・・・ああ、、、、、え?ファーストキスだったの???そうかあ、、、、
思わず顔を両手で覆う、、、、そうかあ、、、、はあーーーっ
「私たちはお前の親同然だ。そいつを連れてきなさい。今すぐだ!」
父上、、、、、
「はい。」
そう言って、クリスティーナがあわてて出ていく。どこに?
急いで後に続く。
*****
「ウィリーさん!いらっしゃいますか!!」
ドアを叩く音。クリス?
ぼろ長屋の部屋は、西部に行く前にと、大方片づけた。
時々、息抜きに使っていた。いよいよ出発が近いから、壁に飾っておいたカエルの王子様の枕カバーを取りに来た。
「クリス?来てくれたの?」
ドアを開けると、息の上がったクリスが、真面目な顔で俺を見上げる。
頬が赤みがかって、、、、かわいい、、
「婚家のお父様が、、、、ウィリーさんを連れてくるようにと、、、、」
「ん。それは、君の心がはっきり決まった、と思っていいのかな?」
「・・・・はい。ウィリーさんと、知らない土地で、、、、、一から始めたいです。」
「クリスティー、、、」
思わず抱きしめて、昨日の続きのキスをする。
やっと、、、、、手に入れた、、、、
カエルの王子様の枕カバーをもって、クリスと乗合馬車に乗り込む。
「君的には、、、旦那さんは、、もういいんだ?」
「・・・・もっと、違う出会い方だったら、また違ったかもしれませんね。旦那様は別に、、、何も悪くはないんです。本当にいい方です。タイミング、ですかね?」
「・・・・・」
乗合馬車に揺られながら、クリスの手を握る。
今度こそ、離さなくても済むように。
「で、、、、でも、、、私の不貞行為による離婚だと、、、伯爵家に慰謝料の支払いが、、、」
「大丈夫だよ。そうなったら二人で払って行こう。何年かかっても。ね?」
「ウィリーさん、、、はい。」
*****
帰ってきたクリスティーが連れてきた男を見て、驚く。
どう反応したらいいんだろう?思わず、妻の顔を見る。
妻は、、、、、、あんぐりと口を開けて驚いている。だよな?
「んんん、、、、紹介してくれないか?クリスティー。」
「はい。お父様。この方が、わ、、、私と次の人生を共にしてくださる、ウィリーさんです。あ、あの、今は給仕の仕事とかしていますが、、西部では真面目に働くと約束してくださいました。」
「ウィリーと申します。この度は、こちらのお嬢さんと、その、、ようやく恋仲になることが出来まして、、、」
「・・・・・」
「あの、、、旦那様は?」
「ああ、、、、お前を追って行ったようだがな、、、、入違ってしまったかな?」
「まあ、、、、そうでしたか、、、、」
妻をちらりと見たら、私をまじまじと見ていた。そうだな、、、そうだよな、、、
「君は、、、うちのクリスティーのどこに惚れたんだね?」
「はい。、、真っすぐで、、、、、素直で、真面目で、何に対しても一生懸命なところです。」
「んんんん、、、、クリスティーは?」
「ウィリーさんは、約束してくださったんです。一緒にご飯を食べて、お茶をして、時々、月を眺めたりしようって、、、、一から、、、愛もお金もないところから始めようって。私、、、この人についていきたいんです。」
「・・・・・」
「本当に申し訳ございません。不貞行為での離婚など誇れるものではありませんが、、、、この選択には、迷いはございません。」
「・・・・そうかあ、、、、いいんだね?」
「はい。」
「だってよ、お前はどう思う?」
「不貞行為による離婚なら、うちに対して慰謝料が発生しますわね?」
「・・・ああ、、、まあ、たとえ、白い結婚だったとしてもな、、、」
「その辺は?どうお考えなのかしら?」
「はい。何年かかっても、、二人で払いますから。」
「そうか、そこまで覚悟があるんだね?」
「んんん、、、、お前、、、いつ出かけるんだ西部?結構ひどい状態なんだろう?《《あの》》デル伯爵領だろう?押し付けられたな、、、、やってくれるなあ、エリック殿下、、、」
「そうですね、来月には。向こうでの視察は終わっておりますので。家の手入れも頼んであります。僕は王城での仕事もまだありますから、、、早くても来月末かと。まさか、、、クリスティーが付いてきてくれるとは思っていなくて、、、心強いし、本当に嬉しい。」
「ああ、向いてるかもなあ、、、」
「あら、そう。じゃあ、パーティーを開く時間ぐらいはあるわね?盛大にやりましょう!クリスティーにあのドレスも着せることが出来て嬉しいわ!!」
「こっちの領は、まだまだ私が現役で頑張れるが、じゃ、子供は最低でも二人はいることになるな?うん、うん。」
「そうですね、、、もうしばらく頑張ってください。じき、ですよ。孫を見せに来ますから。」
「ああ。」
「?????え?ウィリーさん?お父様?何のお話をされているの?」
「君との子供なら、かわいいだろうなあ、って話だよ?クリスティー。」
「?????」
「まあ、そうと決まったら、今日の夕食は本宅でみんなで取りましょう。忙しくなるわねえ!」
「??????」
*****
「あれは、、、まさか、気が付いていないわけじゃないよな?ふり?」
「いえ、大旦那様、、、、、天然です。」
戻って来て、お茶を入れなおしてくれていたヒルデが、私の独り言に返事をしてくれた。
「ええ、、、間違いなく、、、天然ものですね、、、」
ベルノまで、、、
「いや、、、、しかし、、、、わかるだろう????利発な子なんだが、、、、」
「「どうでしょうか?自分のことに関すると、かなり疎いかと。」」
「で?あいつらは?」
一瞬固まったヒルデが、あきれたように言う。
「若奥様のお部屋で、不貞行為の続きをするらしいですよ?、、、、、はあ、、、、、」




